6話 錬金の道はまだまだ遠く
更新します!
ハンドクリームにダンジョン産のアイテムである体力草を合成してみたところ、思いのほか高性能なハンドクリームが出来上がってしまった。
傷が瞬時に治るとかの効果は間違いなく体力草の成分とかから来ているんじゃないかな?もともとハンドクリームにそんな効果はないからね。
「なるほど、かなり常識外れな性能になっていますが……これはやはりダンジョンのアイテムを使ったからなんでしょうか?」
「だと思いますけど。他の物も試してみましょうか?」
「お願いします」
今度はダンジョンのアイテムを使わずに普通のものを使って合成を試してみる。
やっぱり相性の問題もあって半分ぐらいは失敗してしまったけれど、なかなかの成果が得られたと思う。
レンズに表示されている合成したものの組み合わせと、その結果はこうなっている。
―――――――――――――――――――――
<水>+<水>=<栄養豊富な水>
<水>+<泥水>=<ちょっと汚い水>
<ボールペン>+<ボールペン>=<書きやすいボールペン>
<強力粉>+<薄力粉>=<全力粉(劣)>
<鉄>+<動物の骨>=<鉄の骨>
<おもちゃのスライム>+<果物>=<スライムっぽい触感ぶどう(食用可)>
……etc
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こんな感じで色々なものを合成してみた。
これらの結果から『合成』という技能に関して分かったことを坂井さんたちがまとめてみたところ、
・現状できるのは2種類の物質の合成まで。
・同じ物質を掛け合わせると、そのものの性能が上昇する。
・二つのもののどちらのどのような性質が受け継がれるかは、術者の意思による。
・有機物、無機物関係なく合成することが出来る。
これらのことが分かった。
まず水と水を掛け合せてできたのはもちろん水。ただ、アインの鑑定ではより栄養が豊富になっているという結果がでた。坂井さんたちも調べていたけれど、同じような結果が出てきた。飲んでみると、飲み口すっきりでとても美味しい。
次にまったく同じメーカーのボールペンを2つ合成したら、見た目には大きな変化がな
かったのだが、グリップのところのゴムだったり、ペン先のボールの品質、ボールペンそのものの品質がワンランク上がったいるようで確かに書きやすくなっていた。
これからの結果から同じものの合成では品質が上昇することが分かった。
さらにいくつかの合成を繰り返していたところ、ここで日高さんから疑問が上がった。
どちらのどのような性質をもったものが出来上がるのかはランダムなのか、と。
そこで実験。
鉄と何かの骨を合成した時、出来上がるのは鉄の性質をもった骨なのか、骨の性質をもった鉄なのかという実験が。
ちなみにこの骨は豚骨です。近所のラーメン屋からもらってきたそうです。
最初に出来上がったのは骨の形をそのまま残した鉄だった。
この場合、鉄の性質と骨の形が受け継がれる感じになった。調べてみても骨の成分とかはどこにも残っておらず完全に鉄になっていた。
次に骨の性質が残るように意識しながら合成を行ってみる。
すると出来上がったのは、鉄(形は板状)の形をした骨だった。こっちを調べてみるとさっきとは逆に鉄の要素どこにもなかったらしい。
……これを坂井さんたちが色々と説明してくれたけど、理屈の部分はさっぱりだった。とにかく合成は割と融通が利くということが分かった。
こんな感じで実験を消化していき、研究員さん達が用意してくれたもの全部を合成してしまったところですでに16時を回っていることに気が付いた。
「あっ、もうこんな時間だったんだ」
「おや、本当ですね。すみません、自分でも思った以上に興奮して時間の感覚を忘れていました。今日のところはこれで終わりにしましょうか。さあ、皆さん片付けますよ」
坂井さんの声かけで、一心不乱にメモを取ったり何かを打ち込んでいたりしていた人達がぞろぞろと機材を片付ける姿勢にはいった。
「あれ、でも今日は魔法についての検証もするんじゃ?」
「確かにそのつもりでしたが、こっちに時間が掛かりすぎました。今日のところはやめておきましょう。龍希さんもずっと作業していて疲れているでしょう?」
「そうですね。ちょっと疲れました」
「それに魔法についてはそこまで急ぎという訳ではないので無理に今日中に済ませる必要はありません」
「でもボクもうそろそろ学校が始まるのでこっちなかなか来れなくなると思いますけど……?」
「まあそれならそれで構いません。暇があるときに来てくださればいいですよ」
その後日高さんも交えてもう少し話をして、平日の放課後か休日の午後からであればいつでも来てもいいことになったので時間ができたら来ることにしよう。
といっても学校で部活をやっているわけではないので、作ろうと思えば時間は作れるのだけど。
ただ、学校が始まるまでは宿題とか準備とかが色々あってこっちに来れそうにない。
というか来週で夏休み終わってそのまま学校が始まるというのに、宿題がまだ残っているのだ。
まあ今年の夏は色々あって忙しかったせいでもあるんだけどね。
「これ、今日の検証の結果をまとめてありますのでお読みになってください。今日はありがとうございました。これお土産にどうぞ。ご家族と食べてください」
そういって坂井さんが渡してきたのは、袋いっぱいの果物と野菜とお肉(ちょっとお高めの奴)だった。
今日の実験で使い切ったものかと思っていたのだけれど、冷蔵庫の中にまだあったらしい。
ここの人はあってもあまり食べないそうなので、今日のお礼も含めて持って行ってくれとのことだったので、遠慮なく持っていく
「ありがとうございます!じゃあまた今度、落ち着いたら来ますね!」
「はい、その時はよろしくお願いします」
「またね龍希ちゃん。もしかしたら今度お家にお邪魔するこちになるかもしれないけど」
「ん?それってどうしてですか?」
「この前のダンジョンとか緑光ダンジョンを攻略したことについていろいろと話したいことがあってね。だからまたすぐに会うことになるかもしれないけど、よろしくね」
「はい!じゃあ待ってますね!」
挨拶も済ませて、研究所を後にする。
帰り道は荷物もあったため特に寄り道もせずに帰ってきた。
あとからアインの収納にいれれば楽だったのにと思ったけれど、その時は思いつかなかったのだ。
と言っても<食の加護>のおかげで力、筋力?が凄く上がっているので、家まではそこそこの距離があったのだけどそれほど苦ではなかった。
人通りも少なかったので、袋の一番上にのっていたリンゴを齧りながら歩く。
ちょっと前まで冷蔵庫で冷やしていたので、ひんやりとした冷たさが蒸し暑い中で心地よく感じる。
食べると、冷たい感覚が食道を通って胃に落ちていくのが分かるような感じだ。
家路を歩く中でふと思った。
「ねえアイン。ダンジョン結晶ってもう扱えるかな?」
ダンジョン結晶。ローズと出会ったサブダンジョンが結晶化したものであり、ローズとの約束を果たすために必要なもの。
しかし、ダンジョン結晶そのままでは扱えないらしく加工するのに必要なのが錬金術スキルだったのだ。
『いいえ、今の錬金術のスキルレベルでは扱いきれません。せめて10は必要ですね』
「ええと今が……あ、また上がってたんだ。Lv4になってる」
『かなりの量をこなしましたからね。作業の途中で錬金術が扱いやすくなった感覚とかありませんでしたか?』
「そういえばあったような、なかったような……?」
『まあとにかくあと6はレベルを上げなければ、ダンジョン結晶の加工はできません。必要な技能も技量も足りませんからね』
何となく違和感を覚えるような言い方だけどもしかして……?
「……錬金術についても結構知識あったりする?」
『もちろんです。錬金術で覚える技能から様々なアイテムを作るためのレシピも一通りは網羅しています。さすがに全てではありませんがね』
「そうだったの!?だったらさっきの実験の時も物どうしの相性とか、組み合わせの結果とかも教えてくれてもよかったのに~」
『それではマスターも技術も成長しないでしょう?自分で考えて失敗を繰り返しながら進めることで身に着くんです』
「それもそうだけどさぁ……」
『別に何もしないと言っている訳ではありません。どうしても行き詰ってしまってるときにはしっかりとヒントも出しますし、サポートもします。マスターにはしっかりと成長していただかないといけませんからね』
「うーん、分かった。自分で頑張ってみるよ」
『その意気です。当面は錬金術スキルのレベル上げに注視しましょうか。自宅でなら錬金術を使用することも許可をもらいましたし、ちょうどこの間の臨時収入もあったことですから色々と買い集めてレベルを上げながら錬金術の検証をしていきましょう』
「うん!早くレベルを上げてローズにも喜んでもらいたいしね!じゃあ、帰ったお母さんたちに相談して色々と買ってみようか」
アインと錬金術の素材としてどんなものがいいかとかを話しているうちに、いつの間にか家に到着していた。話しているうちに、とりあえず何を買うのかについての話はひとまずまとまったので、明日辺りにでもお母さんにいって買い物に車出してもらおう。
ホームセンターにしようか、それともショッピングモールの方が色々揃うかな、なんてことを考えながら玄関を開ける。
「ただいまー!」
「……おかえりー!龍希!帰ってきて早々で悪いんだけどちょっと手伝ってくれないー!」
ちょっと遅れて帰ってきたお母さんの声だけど、焦っている様子ではないけれどどうしたんだろう?
荷物をもってリビングの方に行くけれどお母さんの姿は見えない。
「お母さーん。どこー?」
「庭よー」
声のした方を見ると庭に続く窓が開いていて縁側には朝陽と水月の二人が座ってこっちに手を振っている。
「おかえりたつ姉!こっち来てみなよ!すごいぞ!」
朝陽が興奮した様子で両手をパタパタさせながら言っている。
キッチンにお土産の果物と野菜とお肉を冷蔵庫に仕舞っていく。特に野菜系が多かったので冷蔵庫の野菜室が圧迫されまくっているけれど、何とか押し込むことに成功する。妙にトマトが多かった気がするけどどうしてだろう?
「たつ姉―!」
「今行くよー!」
お土産の整理も済み、そのまま窓際に向かう、朝陽と水月に隙間からちらっと見えるけど、庭の方にはお母さんと他にもローズがいるみたいだ。
それとルビーは水月に膝の上に乗っかっていた。今日は千夏の家によってから研究所の方に行くことになったので、二人にはお留守番を頼んでいたのだ。ちょうど朝陽も水月も登校日ではなかったので二人にも仲良くしてくれるように言っておいたけど大丈夫だったみたいだね。
二人の上から庭を覗き込むようにしてみてみると、庭の一角を囲むようにして立っているお母さんとローズの姿があった。
あの場所って確か家庭菜園があったはずの場所だったと思うけれど……?
「……(おかえりなさい龍希)」
「ただいまルビー。それにしてもこれって一体どういう状況なの?」
「……(……まあ実際に見てもらった方が早いわ)」
「あっ!来たのね龍希!ちょっとこれ見て!」
「おかえりなさいませ~龍希さん~。どうですかこれ~。ちょっと張り切ってしまいました~」
「うん、ただいま」
お母さんとローズが体を横にずらして、ここからでも家庭菜園の場所が見えるようにしてくれる。お母さんはどこか嬉しそうというか楽しそうだし、ローズはなんか誇らしそうにしている。
本当にどうしたんだろう?と思いながら視線をその先に向ける。
「……えぇ~。いや、本当に何があったらこうなったの!?」
家庭菜園あった場所にはトマトがあった。それは別段不思議なことでもない。もともとその場所にはトマトを植えてあったし実るのは当然だ。
ただ、今朝見たときは赤どころか青い実すらなかったということと、菜園全体を埋め尽くすほどの量のトマトが実っていることを除けば、だけど。
「……(ローズがここの野菜に栄養が足りないって言いだしてね。自分なら改善できるって言いだしたから任せてみたらこうなったのよ)」
「おおぅ……でもこれ明らかにおかしくない?一晩どころか数時間しかたってないのに山の様に実ってるんだけど?」
「これでもさっきまで私達で食べて減らしたんだけどねぇ。いつまでもこのままにしてダメにしちゃってももったいないでしょう?だけど、さすがに限界がきて……うっぷ……残りを龍希に食べてもらおうと思って」
「……手伝ってってそういうこと。というか減ったうえでこれって言うのが信じられないんだけどね。もともとどれぐらいあったんだか」
そう言うと足をツンツンとされ、そっちに見ると水月がスマホの画面をこちらに向けながらこっちを見ていた。
画面に映っていたのは下の土が見えなくなる真っ赤に染まった家庭菜園だった場所が移っていた。
……3分の1ぐらいは減ってるのかな?
「しばらくは、トマト、見たくないかも」
「水月も食べたの?トマト苦手だったよね?」
「ん。あのトマト、美味しかった!」
水月にしては珍しくテンションが高い。いつもならトマトなんて絶対に食べないと言い張っている水月が美味しいっていうなんてとちょっと驚いていると、お母さんが一つもぎ取って持ってきてくれる。
「ほら。龍希も食べてみなさい」
「うん、それじゃあ――」
……あ、ほんとに美味しい。新鮮さもそうなんだけど、甘みもあるし瑞々しくて食べやすい。
去年育てたトマトはこんなに美味しくなかったけど、やっぱりローズが何かしたのが影響してるのかな?
「美味しい!」
「でしょ?もう家のぶんは確保して冷蔵庫に入れてあるから、ここにあるの食べちゃって」
「明日中ぐらいは食べごろで一番おいしいので~できればそれまでに食べで欲しいです~」
「任せて!こんなに美味しなら今日中にでも食べ終わっちゃうから!あ、あと研究所で貰って来たお土産が冷蔵庫に入れてあるからね」
「あら、そうなの?実験のお手伝いに行ったのに何を貰ってきたの?」
「ええと、お野菜とかフルーツとかお肉とかの実験で使わなかったあまりだよ?」
「……いったい何の実験をしに行ったらそのラインナップになるのやら。あとで聞かせてね」
「うん!」
お母さんが冷蔵庫に詰め込まれたお土産の量に驚いたりしてたけど、その分夕ご飯が豪華になったから嬉しかった。
夕飯も食べ終え、寝る準備を整え布団に入ってから近所の公園に出来たダンジョンいついて日高さんたちに聞こうと思っていたことを思い出した。
夜遅くに連絡を取るのも悪いし、そこまで急いでいるわけではなかったので今度聞くことにしようと思いながら眠りについた。
いかがでしたでしょうか?
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