3話 チョコと野菜は合わないと思う……
連続投稿だぁぁぁ!!!
千夏の家でお昼ご飯をご馳走になったあと、ボクは緑光ダンジョンの方に向かっていた。目的はダンジョンの近くに併設されている研究所に用があるからだ。
まえに<食の加護>のスキルを披露したり、他のアイテムについての鑑定などをした場所である。
出現した緑光ダンジョンは千夏の家からそう遠くない場所、だいたい2㎞ぐらかな?歩いて行っても30分もかからないぐらいの距離だ。
午後も一緒に練習をしないかと誘われたのだけど、こっちの用事があったので断ってきた。千夏は残念そうにしていたけど、明日も来るといったら現金なほど喜んでたけど。
というわけで千夏の家を後にして歩いて研究所の方に向かう。
この辺りは多くの家が立ち並ぶ住宅地でお店というお店はほとんどない。あってもコンビニぐらいで学校寄りになってくると商店街とかスーパーとかがあるのでほとんどのが学生はそこで買い食いなりをしているおなじみの商店街だ。
まあ今日はそっちの方まで行く用事はない。
なぜ唐突にこんな話をし始めたのかと言うと、なんと今日は新作のお菓子が出る日なのだ。
その名も何と『ゼンマイの山郷』。
かの有名なキノ〇の山、タ〇ノコの里の2大派閥による戦争を終わらせるために生まれた第3勢力の登場!というのがコンセプトで発売されるらしい。
ちなみに読み方は山郷と書いて『やまさと』である。その繋がりなのかCMをやっていたのは日本で一番有名な山里さんだった。
正直なんでゼンマイなんていうマイナーな山菜にしたのか、争いを終わらせるどころかさらに激化させそうな第3勢力なんてものを打ち出してきたのかはまったくもって謎である。
まあでも新作のお菓子ときいては黙っていられないのがボクである。
この日のために貯めたお小遣いをもってこうしてコンビニに寄っているわけだ。
この間のダンジョン探索でもらったお金である500万円は親に預けて貯金してもらった。将来的に使うかもしれないし、今は使う用事もないのでとりあえず貯金にしたが、必要なものがあったらその都度使うつもりだ。
まああんな大金持っていても怖いだけでお菓子ぐらいだったらお小遣いで十分。それにこうやって頑張って貯めたお小遣いでたくさんあるお菓子の中から範囲内で収まるように買うのも醍醐味だと思う。
「いらっしゃーせー」
入店するといつもいつも聞くあの音楽と店員の声が聞こえる。
聞きなれている曲なはずなのに、いざこの曲って何ですかって言われると全然出てこないのが不思議でしょうがない……
いつぞやのクイズ番組でイントロクイズをやっていたのだが、某スーパーで流れてくる入店曲が分からなかったのには愕然とした。
ささっとお菓子コーナーに向かい目的のお菓子を手に取り、レジに向かって会計を済ませる。
「ありあとあっしたー」
店員のあんちゃんの気合の入っていない声を聞きながら退店する。
研究所に着くまで我慢できず、店を出てすぐに箱と袋を開ける。中に入っていたのは見た目はゼンマイをデフォルメしたような感じでぐるぐると渦を巻いている。
サイズは他2種類よりも少し大きめでその分入っている数は少ない気がする。
全体的にチョコレートでコーティングされていて中身はどうなっているのか分からないので、とりあえず1つ食べてみる。
中身はウエハースになっているけど、これは……なんか野菜っぽい味がする。
山菜のゼンマイは食べたことあるけれど、それに近い味がする。よく見ればチョコレートのこげ茶色に混じってほんのりと緑色がある。
……何故にものホンに近づけようとしちゃったんだろう。
タケノ〇もキ〇コも別にそのものの味を再現しようとしていなかったでしょう!?
でも不味いわけではなくこれはこれで美味しいと思う。
うん。当たりか外れかで言われれば……当たり、かな?
いろんな意味で期待を裏切ってきて面白いし美味しくもあったけど、これじゃない感が凄いので微妙なラインだけど。
ゼンマイ味のチョコレートを摘まみながら研究所へ向かう。
『ところでなのですがマスター』
「ん?どうしたのアイン」
『気になるニュースがありまして。どうやら世界中でサブダンジョンが確認されているようですね。日本でも私たちが攻略したもの以外にも複数の存在が確認されていますし、海外でも同じようですね。ネットニュースでもかなり話題になっていますよ』
「もぐもぐ……それって大丈夫なの!?ボクみたいに巻き込まれた人っていなかったの?」
『今のところ確認されていないようですね。そもそもダンジョンの発生に人が巻き込まれるなんて事態はそうそうあることではありませんからね』
「えっ?でもボクここ最近で2回も巻き込まれたんだけど?」
『まあ何と言いますか……ダンジョンに好かれているとしか思えないほどの確率ではありますね。オブラートに包まずに言うと、めちゃくちゃ運が悪いですね』
「なんでオブラート取って言い直したの!?……まあそれならそれで他の人が巻き込まれてないみたいでよかったけどさ。納得はいかないけど」
これまでの人生で運が悪いなんて思ったことはなかったけど、もしかしてボクって本当は運悪いのかな?
『マスターの運については今はいいんです。それよりもこの記事なのですが……ほら、この近くにもサブダンジョンが出現しているんですよ』
レンズに一つの記事が映し出される。
それによると確かにこの近く、緑光ダンジョンからそう遠くなくちょっと学校よりの場所に光の渦が出現したとのこと。
写真もついていて確かにこれはサブダンジョンだと思う。
「ほんとだ……そういえばサブダンジョンからも魔物って出てくるの?」
『いえ。魔物の排出機能がついているのはオリジナルダンジョンだけなのでそれはありません』
「それならまだよかったかな」
ダンジョンが出現したのは住宅地のど真ん中にある公園。
どうやら夜中から明け方にかけて出現したようで、早朝ランニングをしていた人が発見したらしい。幸いなことに時間が時間だったため入ってしまった子どもはいなかったようでいまは完全に封鎖しているようだ。
「でも、これは危ないね」
『はい。外見だけではどの種類のサブダンジョンなのか分かりませんが、ユニークダンジョンのように強力な魔物が出現してしまうとかなり危険です』
「後で相談してみようかな。中の様子の確認ぐらいならできるし」
『今度は時間があるのですからちゃんとご両親と相談してくださいね。もし行くのであれば、ですけれど』
「ああは、うん。そうするよ」
その後もアインと雑談をしながら研究所の方に向かう。
はたから見れば完全に独り言をぶつぶつとつぶやいている危ない人なので、人通りが多い場所では念話に切り替えたけどね。
正門と言ったらいいのか、とにかく敷地内に入るための入り口に到着すると駐在の人に入場許可証を見せると少し驚いた顔をしつつも通してくれた。
一応ここは病院も併設しているので、そっちの患者ではなく研究所の方の許可証を高校生の女の子が出したからだと思う。
そのまま研究所の入り口を通り、すでに何回か使ったことのあるエレベーターに乗って下に降りていく。
目的の階に着き扉が開くと、目の前に広がるのは廊下とも言えないぐらい短い通路とその先にあるこれまた扉。扉の一部はすりガラスになっていてそこからは向う側の光が漏れてきており、中の人が動き回っている様子がぼんやりと分かる。
特に躊躇もなく進み、ドアノブに手をかけて扉を開ける。
通路が暗かったので向う側の光がすこし眩しくて目を細める。さっきまでは聞こえてこなかった話し声や何かを指示するような大声も聞こえてくるようになった。
そういえばここは完全防音だって言ってたっけ?
「――おや、龍希さんではないですか。ようこそいらっしゃいました」
「こんにちは坂井さん。ちょっと寄り道しちゃって遅くなっちゃいました」
「いえいえ、むしろ早いぐらいですよ。こちらもまだ準備が終わっていないのであちらで少し待って居てください」
坂井さんに促された先にはこじんまりとした休憩スペースののような空間があった。ガラス張りの個室みたいになっていて置かれているのは丸テーブルと椅子が3脚、それからコーヒーとかが出てくる自販機もある。
中にはすでに先客がいるようだ。
「こんにちは日高さん。日高さんもここに何か用があったんですか?」
「こんにちは龍希ちゃん。私はここに、というよりはここに来る龍希ちゃんに、かな?」
「ボクですか?」
「そう。龍希ちゃんは今やダンジョン関連については超重要人物だもの。その行動や結果もちゃんと見ておかないとってことで、一番交流のあった私が担当することになったの。嫌なら断ってくれてもいいけれど、どうかしら?」
「それってボクの監視ってことですか?」
「そうね、その認識で間違ってないわよ。でも日常生活をずっと監視するとかそこまで大げさなものじゃないから安心してね。ただ何かダンジョン関連での行動にのみ監視が付くと考えてくれればいいわ」
「それぐらいならいいですよ。ボクも周りに大人が何かあった時に周りに大人がいたほうが安心ですし」
「ありがとう。それじゃあ早速なんだけど今日は何をする予定なのかしら?坂井からは準備が忙しいから龍希ちゃんに聞いてくれって言われたんだけど」
今日ここに来た目的は主に二つ。
まずは錬金術のスキルの取得とその検証。ダンジョン探索は進んでいるが日本ではスキルを後天的にアイテムから取得できたような例は存在しない。
ダンジョンに潜っている自衛隊の人の中には新しいスキルを取得したと坂井さんが言っていたが、そういったアイテムは発見されていないのだそうな。
さらに錬金術と言うスキルも未発見なためそれの検証もしたいということ。
2つ目に魔法の検証。
ある日スキルという力を得てしまったボク達だが、その中には魔法と呼ばれるスキルを取得した人もいた。ここの研究所でもそんな人たちを集めて実際に使ってもらってサンプルを集めていたそうなので、その一環でボクにも魔法を使ってほしいらしい。
と言ってもボク自身には魔法の適正はなく、あの衣装を着なくてはいけない上に消耗が激しいので遠慮したかったのだがアインが『魔法は積極的に使っていかないと制御できるようにならない』と言っていたので、渋々だけど了承した感じだ。
その代わりと言っては何だけど、消費した分のカロリーを補うための食料は用意してもらっている。
「こんな感じです」
といった旨を日高さんに説明する。
一方で日高さんは、それを聞きながらタブレットにメモを取っている。
「ふむふむ……なるほどね。了解したわ……それにしてもこの実験のためにしては用意する機材が大げさすぎるというか、すこし多すぎないかしら?」
ガラスの向こう側ではここの研究員さんたちが動き回っており、何だかよく分からない機材のセッティングをしている。
日高さんがここに来たのが30分ぐらい前らしいが、その前から準備していたようだ。
「そうでもないですよ。これも必要なことです」
確かに大げさだなと思っていると、ドアが開いて坂井さんが中に入ってくる。
「こんな魔法のデータを取るだけでもいろいろな角度からの情報がいるです。それに加えて完全未知な錬金術のスキルときたものですから、できることはやっておきませんとね」
「それでこんな感じになってるのね。それで準備は終わったの?」
「ええ、もう終わりますよ。龍希さんの方は大丈夫ですか?体調が悪いなどの異常があったらすぐに言ってくださいね。龍希さんにはいろいろと苦労を掛けてしまっていますから」
「午前中に少し運動をしてきたので少し疲れてますけど、全然問題ないです。それにこの検証はボクのためにもなりますから全然大丈夫ですよ。むしろいろいろ分かって有難いぐらいです」
アイテムにしろスキルにしろボク達だけだとどうしても詰まってしまう場面があったと思う。例えアインや、ルビー、ローズがいたとしても。
だから坂井さんたちのような協力者がいてくれるのはとても嬉しいことだ。
「そう言ってもらえると嬉しいです。とわ言ってもこちらで分かることよりもアインさんが知っていることのほうが多いでしょうが」
『そうでもありませんよ。確かに私の持つデータは膨大ですが、すべてが正しいわけではありません。環境や様々な要因で性質なんてものは簡単に変わってしまいますからね。多角的な情報はこちらとしてもありがたいです。情法提供ありがとうございます』
「いえいえ。こちらも色々と情報を貰っているので。ウィンウィンということで。ではそろそろ移動しましょうか。まずは錬金術関連の検証から始めるのでついてきてください」
錬金術という言葉だけでもワクワクするようなものをボクが使うと考えるだけで楽しみになってくる。
どんなスキルなんだろう?
いかがでしたでしょうか?
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