10話 声と力
お待たせいたしまた!
更新します!
もしかしてなんだけど……これってボクとアルラウネさんが戦う流れになってない?
「せっかくですから付き合ってあげますよ~。場所を用意するのでちょっと待ってくだささいね~」
そういって立ち上がったアルラウネさんは右手を体の前でひらひらさせ始める。
すると、周囲に生えてい木々が蠢いたき少しづつ移動を始めたのだ。、まるで地面を泳いでかのようにスーッと移動していく。
『マスター、相手はこれまでの相手の中でもっとも強いと思われます。それにあの態度から見ると辛勝ではこちらの話に納得しないでしょう……ですので、私たちに求められるのは勝利、それも完勝です』
「う~ん、確かにそんな感じがするけど具体的にあの人の強さってどうなの?ボクの超直感で感じる限りだと結構強そうっていうのは分かるんだけど」
『確かに純粋な力ではフォレストスネークの方が強いのですが、アルラウネの強さはその能力です。フォレストスネークとの戦いでお分かりかとは思いますが、周囲の環境を使ってくる魔物は強敵です』
フォレストスネークは周り生えていた樹々を使って、葉っぱを飛ばしたり、枝を鞭のように振るってきたり、根っこで足元を崩してきたりした。
これまでの戦いの中でも相当面倒な相手だった。
『アルラウネの場合は環境を使うのではなく、環境を作ることで自分の戦いやすい領域を作る魔物なんです。ほら、今も樹々を操作しているでしょう?あれに加えて自分の好きなように植物を生み出すことで、さらに厄介な魔物として恐れられています』
「……つまり、どれだけ木を倒してもおかわりがいっぱいってこと?」
『その通りです』
「……」
正直、植物を操ってくるぐらいならどうにかできるかなとは思っていた。でも、次から次へと補充が来るってことになるとどれぐらい生み出せるのかは分からないけどこっちのスタミナ切れのほうが早い気がする。
一応カロリー的にはまだ大丈夫なんだけど、この人相手だから最低でも10%は出力を出して戦わないと瞬殺されると思う。
『そこでマスターに朗報です。マスターの力をより効率的に引き出すための装備の準備が整いましたので、今回の戦いでそれのお披露目をしたいと思います』
「装備?ボクそんなの持ってたっけ?」
『お忘れですか?緑光ダンジョンで手に入れて、今もマスターの首に下がっている物を』
……首に下がっているといったら変身のペンダントぐらいで……装備ってもしかしてっ!?
「まさか、あのフリフリ衣装じゃないよね!?」
『分かっているのではないですか。その通りです。<姫の鎧>を使います』
覚えている、覚えているとも……みんなの前で恥をかいたあの魔法少女風の妙ちくりんな衣装。別にボクが好き好んで買ったんじゃなくて何故か最初からペンダントに入っていた衣装。
「こちら準備はできましたよ~。そろそろ始めましょうか~」
アルラウネさんは部屋の中央に円形の広場を作っていたようだ。結構大きめの広場になっていてそれなりに動けそう。
って、そんなことじゃなくて!?
「えちょっと待ってーー」
『問題ありません。少々お待ちください』
まだ衣装のことで納得していなかったのだが、眼鏡ちゃんが勝手にOKしてしまう。
「ちょっと眼鏡ちゃん!?」
『四の五の言っている場合ではないですよ。さあ、気合いを入れて着替えちゃいましょう!』
「ボクの話聞く気ないよね!?」
うぅ~……眼鏡ちゃんが理由もなくあれを着せるとも思えないし、着た方がいいんだよね?
……大丈夫、ここにはボク達とアルラウネさんしかいないから。身内に見られるよりは多分まし、だと思う……
「……『変身』」
体を光が覆うと次の瞬間いボクが着ていたのはもう見ることはないだろうと思っていたあの衣装だった。
「あら素敵な装備ですね~」
今のボクには喧嘩を売っているようにしか聞こえないけど、多分あれ本心で言ってる。確かに見る分には可愛いと思うよ?でも着てる方からするとね?
『スライムちゃん。例のやつお願いします』
「……(了解よ……)」
眼鏡ちゃんの指示でスライムちゃんはボクの衣装、ちょうど胸の中央についている宝石に触手を伸ばしてくる。
そして触手が触れると宝石は青く輝いて、触手が離れるとその輝きも消える。
「……(ふぅ、これでいいかしら?)」
『はい。ありがとうございます』
「……(なら良かったわ。それじゃあタ龍希、頑張ってきなさい!)」
スライムちゃんと眼鏡ちゃんの謎のやり取りが終わり、広場の中央に歩いていく。
『それではマスターもう一つ準備をしましょう。その装備の全体にマスターの魔力を通してください。<姫の鎧>はまだマスターに適合していませんので、このままでは力を発揮できません』
「はいはい……あれ?そういえばさ、この衣装って前に何の効果もないって言ってなかったっけ?」
『あの時のマスターが来ても特に効果はありませんでしたが、魔力を扱えるようになった今ならちゃんと効果があります。先程も言いましたが、この衣装でマスターの力をより引き出すことができますので』
円広場の中央でアルラウネさんと向かい合う。
周りには木がたくさんあるから、ここは完全に彼女のフィールドだ。全力で集中しないと不意の攻撃に対応できないかもしれないから、広く浅く意識を広げていく。
『マスター、そのままの状態で聞いてください。<姫の鎧>はマスターの魔力にまだ適合していませんのでしばらくはただの布切れ同然です。ですのでそれまではひたすら攻撃をしのいでください。もし倒せるようなら倒してしまっても構いませんが、相手はしっかりと思考ができます。慎重に戦ってくださいね』
そういえば人と戦うのって前に自衛隊の人と戦って以来だ。あの時は力押しで勝てたけれど、今度の相手はそうもいかない。
「うん、気を付けるね」
「それで始めましょうか~。スライムさん、合図お願いしてもいいですか?」
「……(構わないわよ。それじゃあ……始め!)」
合図と同時にアルラウネさんの足元からたくさんの木の根っこが生えてくる。
でもそれだけじゃない。背後でも何かが動いている感じがする。前から何本もの根っこが迫ってくる。
出力は15%。根っこの動きが思っていた以上に速い。前から迫ってくる根っこ、この場で迎撃したら確実に背後からやられる。
横に大きく飛んで躱すが、それに合わせて前から迫っていた根っこがこちらに曲がってくる。避けられないものは叩き落としながら、様子を見る。
すると、避けたさ先でも後ろの森から何かが動くような気配がして次の瞬間には根っこが迫ってくる。
これってあれだよね、デスマッチとかいうの?周り電気柵で囲まれたリングの上で戦うやつなんだけど、ここもどこに逃げても植物が攻撃を加えてくる。
あっ、今度は葉っぱが飛んできた!?
「おや~逃げてばかりですか~?それじゃあ私に攻撃をすることもできませんね~?」
これじゃあ埒が明かない。
攻撃に使っていたエネルギーを魔力の補充にまわして、魔力による身体の強化に変更する。ただ、全身に纏おうとするとまだ安定しないから機動力確保に脚と、攻撃力確保に拳に纏わせるようにする。
「魔力による身体強化ですか~。でもまだまだ未熟みたいですね~」
前からも後ろからも迫る根っこや葉っぱをひたすらにさばき続ける。
それでも徐々に数が増えてきて目で追えなくなってきて、当然被弾する回数も増えていく。
「眼鏡ちゃん出力20っ!」
『諾です。
<食の加護>の出力を20%まで上昇させます……マスター、これ以上の出力は体が慣れていないため推奨しません。現状での限界がここだと思ってください』
「りょうっ…かいっ!」
出力を上げたことで身体能力と魔力に回すエネルギーが増えたのでさらにギアを上げる。
元を断とうと森に衝撃波を飛ばして樹々をなぎ倒してみるが、やはりすぐに次に木が生えてきてしまって効果がない。
ならばと、今度はアルラウネさんに攻撃を仕掛ける。
足元から生えている根っこの攻撃を潜りぬけて拳を振るう。しかし、間に行く本もの根っこが入って攻撃を完全に殺してしまう。
カウンターを避けるために急いで後ろに下がると、さっきまでボクがいた場所を地面から生えてきた先のとがった根っこが貫く。
「……これはちょっとまずいかも」
防ぐってことは攻撃じたいは通用するんだと思う。だけど、その攻撃が通らない。根っこの一本一本は大した強度じゃないけど何本もより合わさると罅は入るが砕けなくなる。
「これで終わりですか~?こっちはまだまだ余力がありますよ~?」
実際にその通りだと思う。こっちは現状で出せる力をフルに使っているし、なんならフォレストスネーク戦の時よりも膂力では上なはずだ。
それなのに相手を崩せないどころか余裕の表情。
力の差は歴然としていると思う。
でも負けられない。
アルラウネさんがボクが弱いと言ったとき、眼鏡ちゃんは怒っていた。何もいなかったけれどもスライムちゃんも起こっていたのが伝わってきた。
ボクも内心悔しかったけど、確かにスライムちゃんや眼鏡ちゃんに頼っていたことは事実なのだ。だからこそなお悔しかった。
だからボクのために怒ってくれた二人に見せてあげたい。
ここまでの戦いでボクはこんなに成長したんだと、こんなに強くなったんだと。
だから負けたくない!
『そうではないだろう?』
「……えっ?」
声が聞こえた。
スライムちゃんでもなければ、眼鏡ちゃんでもない。もちろんアルラウネさんの声でもない。聞いたことがない女の人の声だった。
『鎧の力を引き出すんだ。使い方は分かるだろう?』
頭の中にこの鎧の使い方が湧き上がってくる。知らないはずなのに、使ったこともないはずなのに、記憶の底から引き出されるように溢れてくる。
『お前の力はそんなものではないだろう。しっかりせんか』
それを最後に声は聞こえなくなった。
何だったんだろうか……?
いや、今はそれどころじゃないっ
『マスター、<姫の鎧>の適合が完了しました。今から使い方を説明しますからよくきいて――』
「大丈夫。分かってるから」
『マスター、何を!?』
「属性開放、水……」
胸元にある宝石を中心として、衣装全体に青い光が広がっていく。同時に魔力を身体強化ではなく右手に集まるように持ってくる。
すると巻き戻すように宝石に青い光が集中していき、すべての光が宝石の中に納まると、もともと透明なガラス玉のように何の色もなかった宝石が青い光をともすようになった。
「……絶氷」
右手に集まった魔力使って魔法を発動する。
イメージするのはすべてを凍てつかせる氷。生き物は決して生存することなんてできないぐらいの冷たさ、絶対零度。
そしてそれが発動する前のぎりぎりの状態で留める。
「ここからが本番だよ」
そしてボクは発動しないように待機させていた魔法を……食べた。
〇・・・・・・・・・・・・〇
アルラウネにとって目の前の存在は自分にとって敵ではなかったはずだった。最初に見たときも、ついさっきまでだって自分の脅威になりそうな感じはしなかった。
しかし、鎧が妙な青い光に包まれてた時から何か違和感があった。どこから来るのか分からない焦燥、何に対してなのか分からない恐れ。
それらが目の前の存在から感じられるのは、あり得るはずがない。
なぜなら自分よりも弱い存在なのだから。
しかし、その時はきてしまった。
右手に完成させた魔法を相手はあろうことか食べたのだ。
その瞬間だった。
ドクンッ
鼓動が聞こえた。
いや、もしかしたら胎動だったのかもしれない。
アルラウネの本能が、自分を構成している根源にあるものがアレの誕生を恐れていた。
生まれさせてはならない、あれをこの世に生み落としてはいけない。そんな感情がアルラウネの心を支配していた。
それをよそに相手の体はあっという間に氷によって包まれて、繭のような形になる。
アルラウネは必死に攻撃した。
なんとかあれを壊そうと。生まれる前に始末しようと。
しかし根っこを伸ばしても、葉を飛ばしても、枝で薙ぎ払おうと、その悉くが繭に触れる前の空間で凍り付いてしまった。
そして繭に罅が入る。
『絶望』
その単語がアルラウネを内を覆っていた。
足から力がぬけへたり込んでしまう。
「ああ……あぁ……」
声なんてでてこない。
ただアレの誕生を待つことしかできないのだ。
罅が全体に回り、そして氷の繭がはじけ飛ぶ。
『死神』
思わずそう表現してしまった。着ているものはピンクと白のかわいらしい色合いから、青と水色のドレスのようなものに変化してしまっている。
ゆっくりと目を開いていくと、黒かった瞳も青く変化していることが分かった。
普通に見れば可愛いと思えるのであろうが、アルラウネにとっては自分に死をもたらすものにしか思えなかった。
「凍れ」
ただその一言。
命令のようなその一言に従うように植物が、部屋が凍り付いた。植物を操作しようとするができない。完全に死んでしまっているのだ。新しい植物を生やそうとするが、自分の力が通っていかない。この空間の生命が自分たち以外死んでしまっているのだ。
アルラウネは植物を扱わせれば魔物の中でお上位に位置するが、その植物を抜けば目立った力はない。その力のほとんどが植物に依存しているからである。
一歩、一歩こちらに歩いてくる。
綿で首を絞められるように徐々に息ができなくなっていく。
苦しい、苦しいけど目を離すことができない、許されない。
「ま、負けです……わたし…の……負けです………お願い…ゆ……許して……」
もはやできたのは命乞いだけだった。
感情の読み取れない瞳を見ながら死にたくない、と訴える。
伸ばしてくる手が死神の鎌に見えた。
思わず目を瞑ってしまう、が一向になにもされない。
ゆっくりと目を開けると、目の前に手が差し出されていた。
「認めてくれますか?」
「……え?」
「ボクのこと、認めてくれますか?」
見上げたその顔には笑顔が浮かんでいた。心なしか周囲の温度も上がっている気がする。当初の目的は確かに自分に力を認めさせることだった。
しかし、あれだけの力があればこんな面倒なことをしなくても自分のことを倒してしまった方がはるかに楽だろう。それに説明によれば、このユニークダンジョンは素材として使った方が有用だろう。
にも拘わらず、あくまでに自分に力を示して認めさせようとした。
「……はい。貴女は十分に力を示しました。私のすべてをあなたに捧げましょう」
その言葉を聞き遂げると、ふらっと傾き倒れてしまう。
それをとっさに受け止めると、どうやら気を失っているようだった。そして空気に溶けていくかのように氷は消えていき、衣装のデザインも元のフリフリなものに戻っていく。
『気力を使い果たしたみたいですね。初めての運用であんなものを発動するなんて無茶をなさるから……』
「……(眼鏡ちゃん、これはいったい何?聞いていた話を大分違うんだけど?龍希は大丈夫なの?)」
『心配ありません。あの力の制御にはとんでもないぐらいの体力が要求されますから疲れ果てたのでしょう。休んでいれば目を覚ましますが、少々時間が掛かりそうですね。スライムちゃんは回復魔法をお願いします。水属性の回復魔法は疲労回復効果もありますからね。私たちは疲労に聞きそうなものを作るので』
「……(……分かったわ。あとでしっかり説明してよね?)」
『もちろんです。ただ、私の方でも分かっていないことが多いのでもう少し考えてから説明します』
「……(お願いね)」
そう言うとスライムは少女の元にいってその傍で回復魔法を掛け始める。
『さあ、私達も早速始めますよ』
「……私もですか?」
『当然です。あなたとの戦いが原因なんですからしっかり責任を取ってください。それにマスターのために何かするのは嫌ではないでしょう?』
「……はい~。私は彼女のことを自分を預けてもいい相手だと認めました~。ですから彼女のためとあれば喜んで力になりましょう~」
『それは重畳です。では疲労回復にいい水晶リンゴをすり下ろしてこのヘルスプランとを混ぜてください。目を覚ましたら飲んでいただきますので』
「しかし先程の氷で完全に植物が育たない環境になっているんですが~」
『氷は消えていますし、土も植物も一時的に仮死状態になっていただけです。もう大丈夫なはずですよ』
「……本当ですね~力がちゃんと伝わります~。では水晶リンゴを作ってしまいますね~」
アルラウネもスライムも自分のできることを始める中、万能眼鏡は一人考えていた。
『(なぜマスターは<姫の鎧>の使い方を知っていたのか……私はもちろんスライムちゃんも話していないはずなのに)』
そもそも<姫の鎧>は魔法を属性の適正関係なく使えるようにするための装備だった。胸元の宝石に各属性の魔力を流すことで使うことのできる属性が解放されていくシステムだ。
今回はスライムに魔力を流してもらったことで水属性の魔法を解放していた。そして龍希の<食の加護>から供給される膨大な魔力によって一帯を完全に凍り付かせる、これが今回の作戦だった。
しかし、龍希はあろうことか魔法を食べて、その力を身に纏って見せた。<食の加護>のレベルアップによってついさっき解放された魔法を食べることでその魔法を身に纏い、一体となる技。
しかしこのことは龍希には言っていなかったし、もちろんしばらくは言うつもりもなかった。ろくに鍛えてもいない状態で使おうとすれば今回のようになることが分かっていたからだ。
スライム、万能眼鏡は龍希を鍛えるために訓練は課すが根っこの部分では甘い。龍希が倒れるようなことは極力したくないし、体に負担のかかることなんて持っての他だ。
ゆえにあの使い方はもっと後にするつもりだった。
『(超直感、にしてははっきりと分かりすぎている。なら、誰かが教えた?……いや、そんなの誰が……調べる必要がありそうですね)』
結局結論は出なかったが、姫の鎧が適合する前、龍希が妙な行動を見せていた。不意の何かに反応したかのような、あの時はそこまで気にしなかったがよく考えればおかしな行動だった。
何かが龍希に干渉していたのかもしれない。
それについて調べるために自身の龍希が起きるまで、自身の演算領域をその事象を調べることに向けたのだった。
いかがでしたでしょうか?
ちょっとシリアスな感じになったんでしょうかね?この場面はもっとかっこよく書きたかったんですが、自分の未熟さを痛感する罅でございます。 もっと臨場感あふれるような文字が書けるように精進いたしますので、応援してください!
という訳で、面白いと思ってくださったらブックマーク登録お願いします!




