9話 部屋の中で待っていたものとは……?
皆さん、本日も更新いたします!
よろしくお願いします!
「……(……大分ましになったわね。その感覚を忘れないようにしなさい)」
「うん、自分でもさっきまでと違うのが分かるよ。ありがとうスライムちゃん!」
主にボクの補給のための休憩をしながら、スライムちゃんによる魔力の扱いについてのお話を受けていた。
フォレストスネークと戦っているときよりも動きがよりスムーズになったし、拳だけじゃなくて足とかにも動かせるようになった。
「……(しかしこれでやっと龍希も魔力が扱えるようになったわね。私としてはまだちょっと早いと思ったんだけど)」
『そこは私達で最大限のフォローをすれば問題ないでしょう。それに、そろそろあれも完成しそうなので魔力の扱いに慣れておいてもらわなければいけなかったんです』
「……(……ああ、あれね。そういうことならしょうがないわね)」
「あの……また2人で分かった感じになっているんですけど、あれって何?」
『そのうち分かりますよ。そんなことよりもそろそろ出発しましょう。すでに私たちがダンジョンに入ってから24時間経過していますからそろそろ帰らないと、いよいよ救助部隊とかが編成されてしまいますよ?』
「え!?もうそんなに経ってたのっ!?救助部隊とか大事になっちゃうよ……あれ、でもその割には全然眠くないし頭もすっきりしてるよ?」
『それは途中で食べたヘルスプラントの影響ですね。あれの回復効果で徹夜程度の疲れならすぐに吹き飛びますからね。と言っても完全に回復するほどの効果はないので、効力が終わったらしっかり休んでいただく必要がありますが』
ヘルスプラント凄いんだね~
あれだね、栄養ドリンクというか漫画家の机の上に並んでるような飲料みたいな効果があるんだね。それだったらお父さんとお母さんに持って帰ってあげたかったんだけど。
『それに関しては問題ありません。すでに回収済みですのでちょうどいいお土産になりますよ』
「ナチュラルに心読んでくるよね……まあいいや、ありがとう」
周囲の様子に超直感を働かせる。感じられるのは一気に開けてしまったこの場所を遠巻きに窺っている気配のみ。気配を消している魔物たちもこちらに近寄ってこようとはしていない。
何となく樹海全体が息を潜めているようなかんじ。
『ちょうどいいですね。今のうちに一気に森を抜けてしまいましょうか。ついでに魔力を足に込めて動く練習もしてみましょう』
「うぅ、まだ苦手なんだけどなぁ……分かった、やってみるね」
魔力を扱う時のイメージは腹の下あたりから魔力を引っ張り出してくるようにして、集めたい場所に持ってくる感じだ。存在が分かってしまえば引き出すところまでは割りとすんなりいくのだが、そこから魔力を持っていくのが大変なのだ。
水を出すんだったら蛇口を捻ればいいけど、そこから水を運んでいくのが大変というか、何というか。うん、自分でもよくわかんない。ようは大変なのだ。
少しづつ足に魔力を流していくと、さっきと同じよう足が赤い輝きを帯び始める。
「……(いい感じよ。今の状態を維持しながら歩いてみなさい)」
「う、うん――」
2歩3歩とゆっくり歩いてみるけど、特に変化はない。魔力もしっかり送れている。
「……(……いけそうかしらね。それじゃあ出発しましょう!走るわよ!)」
スライムちゃんに促されて走り出す。すると自分でも思った以上の力が出てしまう踏み込んだ地面が割れ1歩がとんでもなく大きくなってしまう。
危うく正面の木にぶつかりそうになり回避したが、バランスを崩してそのまま地面に激突してしまう。それと同時に脚に纏っていた魔力が霧散する。
「……(龍希っ!やっぱりまだ早かったわね……もうちょっと慣らしてから行きましょう)」
「いや、ちょっと今の力を把握しきれてなくてちょっと驚いただけだよ。次は大丈夫」
『無理せずともまずはゆっくり慣らしていけばいいんですよ?私達も最初から自由に動けるとは思っていませんから――』
「ううん、もっと早く外に戻る機会はあったのにそれをしなかったのはボクだもん。そのせいでたくさん心配させちゃってるだろうし、もっと早くなれる手段があるならちょっと無理をしてでもやるべきだよ」
再び魔力を足に纏わせる。
今度はさっきみたいにならない様にスピードをイメージする。実際に体感したスピードとこれまでの体の感覚をすり合わせていく。
走る。
視界が流れていくのが早いが、まだ対応できる範囲。
必要なのは集中力。もちろん周囲への気配を探ることも忘れない。
『まさかこれほど早く魔力を用いた機動になれるとは思いませんでした……』
「……(確かにこれはいい意味で裏切ってくれたわね。このダンジョンの攻略で精々魔力を使った攻撃ができるようになればいいと思っていたんだけど)」
フォレストスネークとの戦闘場所から少し離れてくるとこちらに気づいて近寄ってくる魔物が現れ始める。
だけどそう簡単には追い付かせない。足に込める魔力を少し増やしてさらに加速する。あっいう間に魔物たちを引き離し先に進む。
『このペースですともう間もなく最後のボス部屋の前に到着します。ちなみにですがマスター、このスピードで走っていますが……止まれますか?』
「……無理かもしれない。早すぎて足が止まらないっ!?」
『はぁ……スライムちゃん、突き当りに近づいたら正面に壁に水でクッションでも作ってあげて下さい。壁にぶつかるよりはましなはずです』
「……(了解よ)」
……結局止まれずに水壁に激突しました。ふんわりしていて程よく冷たくて気持ちよかったです。むにんっむにんっでした。
「……止まれてよかったぁ」
『止まったというか強制停止でしたけどね』
「だってあんなスピードで走ったの初めてだったんだもん……」
『まあ今後のためのいい訓練になったでしょう。それよりもマスター、いよいよこのダンジョンも大詰めですよ』
「うん……この先にいるボスモンスターってこれまでの奴らよりも強いんだよね?」
『ええ、もちろん階層を下がってきたということもありますが、この先にいるのはボスモンスターでもありダンジョンの守護者でもありますからね。これまでのようにいくと思っていたら、危険ですよ?』
確かダンジョンの最下層のボスモンスターはダンジョンの守護者でもあるから普通のボスモンスターよりも強いんだっけ?
そういえばそんな話もあった気がする。
「……(と言っても結局は挑戦するしかないんだから早く行っちゃいましょう。今から急に力を手に入れる事なんて不可能なんだから、準備ができているなら、後は力をぶつけるだけよ)」
「……それもそうだね。うん、準備は大丈夫……よしっ!」
パンッ、と頬を叩いて気合いを入れ直す。
ここを攻略してしまえば外に戻れるんだから、もうひと頑張りしないとね!
目の前に鎮座する巨大な扉に手をかける。これまでの扉よりも少し豪華なデザインになっていて、大きさのちょっと大きい気がする。
それでも重さはこれまでと変わらず、軽い感触で押すことができる。
隙間から光が漏れてくる。
それに扉の隙間から何だかいい香りが漂ってくる。甘いにおいというか、なんだけどすっきりするようにな匂いというか。
紅茶みたい匂いっていいのかな?
……もしかして匂いで誘き寄せようとしてる?食虫植物みたいに。開けた隙間からのぞく植物たちを見てもその可能性が高そうかも……
あまりこの空気を吸わない様に袖を伸ばして口に当てる。
「……ナニコレ?」
扉を開け切った時、目に入ってきたのは植物で出来た椅子と植物で出来たテーブル、そしてそこまでの道を作るようにして生えてきている植物たちと、そして――
「あら~?お客様ですか~?どうぞこちらにいらしてください、歓迎しますよ~」
――一人の女性だった。
「……?」
「どうされたんですか~?ああ、大丈夫ですよ~。お茶請けはこちらで用意していますので~」
「ええっと……お邪魔します?」
ごめん、全然状況がつかめないんだけど……?
ボク達ダンジョンのボス部屋に入ってきたはずだよね?最後のボスモンスターだって意気込んできたんだよね?
「あの、眼鏡ちゃん。これどういうことか分かる?」
眼鏡ちゃんに小声で尋ねてみる。
『……すみません。私にもちょっと……ですが彼女――といって良いのか分かりませんが、この部屋にいる以上ボスモンスターであることは間違いないと思われます。油断しないでください。私は引き続き解析続けます』
頭の中に直接眼鏡ちゃんの声が聞こえてきた。そういえば念話が使えたんだよね、了解。
それでもやっぱり不安なのでスライムちゃんを抱えてから部屋の中に入る。
まるで庭園を歩いているみたいな感じで、上を見ると日差しのようなものが差し込んできている。
ああ、でもこれはこれまでの階層でも一緒だったかな。地下なのかどこにあるのか分からないけど空はなかったけど光を発している所はあったからね。
木々の隙間から差し込む光が心地いい。それなテーブルの上に置かれているカップの中から漂っている香りが警戒心を解いていく。
それに何故か超直感でも悪い感じはしないのだ。
「どうぞ、そちらに座って下さい~。いま貴女のお茶も用意しますね~」
言われた通りに彼女?の向かい側の椅子に座る。すると、切り株のような形状のテーブルの一部が変化してすでにあるものと同じカップが現れる。
さらに今度は中央付近から枝が伸びてきたかと思うと、勢いよく成長し葉が付き、平たい赤い実を実らせていた。
ポットからお茶が注がれていく。
……ああ、これなんだか覚えのある匂いだなと思ったらアップルティーに近いのかな?
「どうぞ、こっちの木の実もお好きに食べてください~。お茶もおかわり自由ですよ~?」
「あ、ありがとうございますっ」
「いえいえ~……ふぅ。ほら、美味しいですよ~?貴女も飲んでみてください~?」
ほんわか笑顔で言われると断る気も起きず、進められるがままにお茶に口をつける。
……美味しいぃ~
やっぱり味はアップルティーに近いんだけど、砂糖とかの甘みじゃなくて自然な甘みというか、さっぱりした甘みというか、気分が安らぐ感覚がある。
なんだか体の疲れも取れてくる気がするよ。
「お口にあったみたいでよかったです~」
「あ、その、美味しかったです!ありがとうございます!」
「ふふ、私の特製ブレンドなんですよ~?誰かに飲ませるのは初めででしたが、やっぱり私の感覚はたしかですね~」
「はぁ……?」
「ああっ!自己紹介がまだでしたね~。私は……あ、まだ名前はないんです~。えっと樹に宿る者、アルラウネをやっています~。えっと一応ここのフロアのボスモンスター兼ダンジョンの守護者をやっています~」
「……!?」
やっぱりこの人、ボスモンスターだったんだ。てことは魔物ってこと……?こんなに人間にしか見えないのに?
『マスター、彼女は自身のことをアルラウネと言いました。アルラウネとは樹に宿る一種の精霊のような種族ですが、魔物でもあります。やはりボスモンスターでしたか……』
「えっとボクは柊龍希といいます。よろしくお願いします?」
「はい、よろしくお願いします~。それでなのですが、貴女方はどのような理由でここに来たんですか~?ここに人が来るのは初めてですので」
ここで正直に言ってもいいのだろうか?
あなたを倒してこのダンジョンを攻略するために来ました、なんて言ったら確実に怒らせちゃうよね?
でもこの人を倒さないと攻略もできないってことだから、外にも出られないわけで……
でも、この人悪い感じがしないんだよね。
今までの魔物ってボク達に対して明らかな敵意を、殺意をもって襲ってきた。超直感のせいなのかそこにそれ以外の感情なんてものはなかったと思う。
でもこの人からは特にそれらしい気配を感じられない。それどころか見れば見るほど人間っぽく見えてくる。
……そういえばスライムちゃんと会った時もそうだったかもしれない。
何となく敵じゃないって分かったんだよね?
う~ん……
『ひとまずこちらの事情を説明してみましょう。恐らく悪いことにはならないはずです』
大丈夫かな?
『ええ、私を信じてください』
……分かったよ。
「実は――……」
とりあえず、なぜこの場所に来ることになったのかについて、それからここで何をしたかったのかについてを説明した。
「……――ということなんです」
「なるほど~、でもそれだと困りましたね~。私としてもはいそうですかと倒されてあげるわけにはいきませんし~……」
「ぼ、ボクもあなたと戦うのはちょっと……」
とりあえずここに来た理由については説明してみた。
アルラウネさんはボクの話を聞いても特に起こった様子はなくニコニコしているが、困ってしまったということは伝わってくる。
『隣から口をはさんで申し訳ありませんが、ちょっといいでしょうか?』
「あら~?どこから声が聞こえてくるんでしょうか~?」
「あ、これです。眼鏡ちゃんって言ってボクの友達なんです」
「あらあら、よろしくお願いします~」
『はい、こちらこそよろしくお願いします。それで、ちょっと聞いていただきたいことがあるんですが、いいでしょうか?』
「うん、ボクはいいよ」
「私の方も構いませんよ~」
『ではまず確認から。貴女、アルラウネさんはこの場所のことについてどの程度ご存知ですか?具体的にはこの場所がダンジョンであることなどです』
「んー……ここがダンジョンとだということは分かりますよ~。私はここで生まれたのですが、その時にこの場所のことと私のこの部屋での役割については知りました~」
『なるほど。では、ここがユニークダンジョンであるということはご存知ですか?』
「ゆにーく……ダンジョンですか~?」
どうやらアルラウネさんはダンジョンのことは知っていてもユニークダンジョンいついては知らないらしい。
そこで眼鏡ちゃんがユニークダンジョンについての説明をする。
アルラウネさんはその話をお茶を飲みながらずっと笑顔で聞いている。
あんまり表情が変わらない人だ。
「つまり、ここは街中にあるユニークダンジョンでいずれ確実に攻略されるうえに、攻略されると消えてしまうということでしょうか~?」
『その認識で間違いありません』
「う~ん、それだとなおのこと困ってしまね~。私としてはここが家みたいなものですしそれなりに気に入ってもいるんです~。ですので、このダンジョンが消滅してしまうことを許容はできません~」
『それはそうでしょう。そこでなのですが、私から提案があるのですが……このダンジョンをマスターに任せてみる気はありませんか?』
「……それはどういうことでしょうか~?」
『言葉通りの意味です。といってもまだ分からないでしょうから順を追って説明しますと、まずマスターにはダンジョンを攻略していただきます』
「ちょ、それだとなんの解決にもなってないよ!?」
『落ち着いて聞いてください、まだ説明している途中ですから。攻略すると言ってもアルラウネさんを倒すわけではありません。マスターの持つ<友誼>のスキルを使いアルラウネさんと友誼を結んで頂きます。これによってアルラウネさんはダンジョンの管理下からはずれマスターの管理下に入ることになるので、ダンジョン的には倒されたという判定になります。これを利用してこのダンジョンを攻略します』
「……なるほど~……確かにそれだと安全にあなた達の目的が達成できるのでしょうが、結局このダンジョンが消滅してしまうという問題を解決できていませんよ~?」
『もちろんそれについてもこれから説明していきます。ユニークダンジョンと言うものは攻略してしまえば結晶化してしまい、用途と言えば道具として加工するかスキルを得る事のです。しかし、消滅したダンジョンのエネルギーは結晶の中に溜め込まれ、それは攻略した者の管理下にあるのです。そしてそれを使えば結晶を使って別の場所にダンジョンを再び展開することも可能なのです』
……また難しい話になってきたけど要するにこのダンジョンは一度は消えるけどまた作れることかな?
『その認識で合ってますよ。どうでしょうアルラウネさん、結果的にはダンジョン場所を移すだけなのであなたの不都合なようにはならないと思うのですが?』
「……そうですね~……まあ確かに場所が移ればダンジョンへの侵入者もいなくなるでしょうし、都合もいいのでしょうが……――問題はそれを信じる要素が足りないということでしょうか」
空気が変わった。
殺気とか空気とかそんなこと感じたこともなかったけど、今のははっきり分かった。表情はさっきまでの笑顔と変わっていないけど、明らかに何かが違うのだ。
それも重苦しい感じがする悪い方に変化した。
「それにダンジョンのシステムが認めるということは、貴女に屈する、配下に下るということですよね?残念ながら私は貴女に下るほど貴女のことを知らないし、信用してもいません。それに、一時的とはいてこのダンジョンを預けるということは貴女にすべてを預けることと同義、自分を預けるのに自分よりも弱い人を選ぶなんてことありえません」
『……信用については仕方がないでしょうが、あなたマスターが自分よりも弱いと言いましたか?』
「その通りですよ?よくもまあそれだけの力でここまでたどり着いたものですよ。そちらのスライムはなかなかの力を持っているようですから、大方その力に頼ったのでしょうがね……まあ、という訳でこの話はお受けいたしません~。私の気が変わらないうちに帰った方がいいですよ~?お茶楽しかったですよ~」
おおう、なんか完全に拒絶されてるんだけど……
なんか威圧感みたいなのも出てるし、あのビックスライムと初めて会ったときに近いものを感じる。
このダンジョンで出会ったどの魔物よりも大きなものを感じる。背筋を冷たい風が吹いたのように寒くなる。
『ダンジョンの魔物、それもボスモンスタークラスのものが相手の力量を正しく測れないなんて笑い話にもいなりませんね』
「正しく測れているから忠告したんですよ~?本来なら貴女たちを殺してしまえばこの話はここで終わりなんですよ~。でも、他に侵入者が増えられてもいやなので外にいる人達にここには来ない様に言ってもらわないといけかないですからね~」
『……ほうほう、つまり私達なんて軽く屠れる、目障りだから消えろ、ということですか』
「さっきからそう言ってますよ~」
『……そうですか、ではマスターが貴女など足元にも及ばないような力を示せば先程の話を受けていただけるんですね?』
「できもしないことを言うものじゃありませんよ~?でも、そうです~。もしできたのなら喜んでこの身をあなた方に預け協力することを誓いますよ~」
なんだろう、話がどんどん不安な方向に行っている気がするんだけど気のせいだろうか?
いかがでしたでしょうか?
アルラウネってなんとなくお姉さんのようなイメージがあるのは作者だけでしょうか?今回のキャラは自分のイメージそのままに作ってみました!怒ると怖そうなところも含めて……
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