7話 おっきな蛇はお好きですか?
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『対象の魔力反応消滅を確認……お疲れ様です。私たちの勝ちですよマスター』
「……うん、お疲れ様ぁ……」
魔物が消滅していきボクの体も落下を始めるが、オーラを足場にして落下のスピードを抑えながら地上に戻っていく。
地に足がついたところで完全に魔物の姿は消滅していた。
「スライムちゃんもお疲れ様……」
「……(さすがにふらふらね。慣れない力を使ったのだからしょうがないけれど)」
「確かに今すぐにでも寝ちゃいたい気分だよ」
「……(それならちょっと休憩がてら寝ていきなさい。見張りは私たちがやっておくから少し休みなさい)」
『体への疲労の蓄積ももちろんでですが、精神的な疲労もかなり溜まっているようですね。スライムちゃんの言う通り休んでください』
「……うん、それじゃあちょっと休もうかな……」
地面に横になると、普段はこんな固いところでは眠れないはずなのにすぐに眠気が襲ってくる。
それだけ疲れていたってことなんだろうか……
「……(……龍希は眠ったかしら?)」
『……睡眠状態のようです』
「……(さて、次でいよいよ最終階層なわけだけど……あれ、今回は使わないの?)」
『……この先はさらに難易度も上がりますし、使うことを視野に入れていないわけではないんですが、まだ調整が済んでいないんです。もともとかなり特殊なものだったようで、私とのリンクを作るのにもかなり手間がかかってしまうんですよ』
「……(なるほどね。でもここまではオーラで誤魔化してはいたけど、何の装備もないわけだからせめて防具だけでも欲しいんだけど?体が保護できればそれでいいから)」
『もうちょっと……もうちょっとで魔かいぞ……調整が終わるんです』
「……(……まあ龍希もオーラの扱いには慣れてきてるみたいだし、そうそう傷を負うことなんてないとは思うけれど、いざとなったらつべこべ言わずに出すのよ?)」
『もちろんですっ!マスターも睡眠しているので、処理能力の大半をそちらに割くことができますので色々と妥協していた部分も完全に仕上げてしまいましょう!』
「……(いろいろとほどほどにしときなさいよ……?)
〇――――――――――――――――――――〇
「うぅん……」
ふいと意識が戻ってくる。
確かボスモンスターと戦った後、疲れて眠ってしまったんだっけ。
体を起こそうと思って気づいた。地面に寝ていたはずなのに背中に柔らかい感触を感じる。まるでベットに寝ているような感じだ。
まだ寝ていたいと思うぐらいには心地いい寝心地だ。
「……(あら、起きたのね龍希)」
「あれ、スライムちゃん……?ボクどれぐらい寝てた?」
『おおよそ2時間ほどです、マスター』
「眼鏡ちゃんもおはよう、になるのかな?2時間ぐらいか……うん、結構すっきりした。そういえば、このベッドみたいなのってどうしたの?」
ボクの下に敷いてあったのはすっごいフワフワ、というかポヨンポヨンしてるベッドみたいなものだった。
「……(地面で寝てても疲れも取れないでしょう?私の魔法でウォーターベッドを作ってみたのよ。無いよりはましだったでしょう?)」
「うん、すっごく寝心地よかったよ!おかげで疲れも取れたし。それでなんで眼鏡ちゃんはスライムちゃんの頭の上にいるの?」
『マスターがそろそろ起きそうだったのでボスもスターのドロップアイテムを回収していたんですよ。遠距離で回収するにはまだ制限があるのでスライムちゃんに手伝ってもらっていました』
「なるほどね……!」
立ち上がってググっと背伸びをする。
普段はしないような動きとかもいっぱいしたし、攻撃を喰らったりもしたからちょっとは痛むかと思ったんだけどそんなことはない。
ビックリするぐらい体の疲れが取れている。
「うん。調子もいい感じ!」
『寝ている間にマスターの体を分析して疲労している箇所に回復魔法をかけておきましたので、体に関しては大丈夫だとまだ違和感のある所はありますか?』
「ああ、それでこんなに調子がいいんだね!問題ないよ。回復魔法はスライムちゃんがしてくれたの?」
「……(そうよ、私も回復魔法のいい訓練になったわ)」
「ありがとう……そういえばさ、スライムちゃんて水魔法しか使えないんじゃなかったっけ?前にも回復魔法使ってたけど、どうして使えるの?」
前に眼鏡ちゃんが説明してくれたスライムちゃんの種族、フェアリースライムは一種類の魔法適正しか持ってなかったって言ってた気がするんだけど?
「……(ああ、そんなこと。回復魔法って言うのは基本的に2種類あるのよ。私使う属性魔法に含まれる回復魔法と、適正がないと使えない回復魔法。龍希が考えてるのは後者で、私が使ったのは前者よ)」
「へえぇ……じゃあ水魔法以外の属性の魔法にも回復魔法があるの?」
「……(私も水以外の魔法に詳しい訳じゃないけど、あるはずよ)」
『補足しますと、属性魔法でも水、風、火、土の四属性のみが回復魔法が存在する属性ですね』
「ボクもそれのどれかの適正があれば回復魔法が使えたんだけどね」
『前にも言いましたが、マスターのは魔法の適正がありませんよ』
「分かってるよ。適正が得られるアイテムでも手に入れるまで我慢する。よしっ!休憩もこれぐらいにして次の階層に行こうか!」
眼鏡ちゃんをボクに掛けなおして準備完了!
ウォーターベッドはスライムちゃんが処理してくれた。
「次で最後の階層だもんね。頑張ろうっ!」
『これまでの傾向から恐らく森林のようなステージ、自然の多い階層になるかと思います。超直感は常に意識していてください。死角が多くなるでしょうから』
「了解っ」
綿毛羊を倒した時と同じように、奥の小部屋には二つの魔法陣があった。
その一方、黄色い魔法陣に入る。
もう慣れた感覚が襲ってくると視界が切り替わる。
次の瞬間に視界に入ってきたのは一面の緑だった。
『解析開始……』
眼鏡ちゃんの声を聞きつつ、ボクも超直感を全力で張り巡らせる。
この階層はどうやらさっきよりももっと深い森のようだ。もはや森というよりも樹海って感じがするぐらい凄い鬱蒼としているけど。
写真とか映像とかでしか見たことないけど、富士の樹海みたいなイメージかな?
……いるわいるわ。そこらじゅうから魔物の気配がする。でっかい反応から小さい反応までたくさんの気配がある。
『解析完了。階層自体の広さはこれまでの階層のおおよそ倍です。そこに隙間なく木々が生い茂っているため、視界がかなり制限されるうえに気配を消すことのできる魔物もいるようですね』
「気配を消せる魔物って、そんなのがいるの?」
『私の解析は生体情報の他にもこのダンジョンにアクセスして直接情報をもらっているので、完全に気配を断っている魔物も把握できます。マスターが今感じているであろう反応の3分の1ほどの数が追加でいますね』
「まじですか……」
ボクの気配探知は階層全体まではいかなくてもかなりの距離は見えていると思う。それでも両手の指でも足りない、その倍以上はいそうなんだけど。
「こっちも気配を消せれば戦闘も少なくてすむんだけどね」
「……(私1人ならともかく龍希はやったことすらないことだから無理でしょうね。ここは正攻法で最短ルートを進むしかないわね)」
『こちらでもなるべく戦闘が少なくなるようにルートは選択するつもりですが、極力エネルギーの消費は控えてください。非常食も決してたくさんあるわけではありませんからね』
「了解。なんとか頑張ってみるね」
少し進んでは戦闘。
ドロップアイテムを即座に回収して他の魔物が集まってくる前にその場を離れる。
さすがに最終階層なだけあってこれまでの魔物よりも格段に強い。最初のボスだった綿毛羊ほどではないけど、それに近しい力を持った魔物もいた。
その中でも特に厄介だったのが蛇の魔物だ。
『マスター。3時の方向の木の陰、気づいていますか?』
「……何かいるの?」
『気配を消すタイプです。気づいていないふりを続けてください。合図をしたらその方向を殴ってください』
「うん……」
ちらっと視線を向けてみたが、木が多くて気配どころか姿を把握することができない。だけど今もボクのことを狙っているのだろう。
見えない相手から狙われるなんて慣れない経験に背中を冷たいものが流れる。
『……今ですっ!』
「……ふっ!」
手ごたえあり!
確かに何かを殴った感覚が手に残っている。それに、殴り飛ばされていった何かが木々をなぎ倒している。
土煙が収まると、そこにはどでかい蛇がいた。
「……あれなんてアナコンダ?」
『おや、マスターはあの映画をご存知ですか。確かに大きさ的にはアレに近いものがありますね。まあ、見た目も中身ももっと凶悪になっていますが』
大きさは人なんて丸のみに出来そうなほどに大きい、そこら辺い生えている木の幹よりも太い胴体にとぐろを巻く長い胴体。
さらに眉間なのかは分からないけど、頭からは木の枝のような角が2本生えている。木々で光が遮られたここにおいて、角が薄っすらと光を放っている。
『フォレストスネークという魔物ですね。植物を操って森に潜み、音もなく獲物を狩る。森の暗殺者とも呼ばれることもある厄介な魔物です』
「眼鏡ちゃんが位置を教えてくれなかったら危なかったよ、ありがとう。それにしても結構全力で殴ったんだけどまだ息があるよね?」
『いえ、致命傷は喰らっているのでもう間もなく死ぬでしょう。下手に近寄ると手痛い反撃を喰らいます。これも奴らの常とう手段です。油断して近寄って来た獲物を道ずれとばかりに絞め殺す、なかなかの頭脳プレイですよ』
「うわーボク一人だったら近寄ってたかもしれないな」
眼鏡ちゃんの言った通り様子を見ていると、こちらを睨みつけながら光となって消えていった。
その場にはフィレストスネークの角のようなドロップアイテムが残っていた。
『回収します。そろそろ騒ぎを聞きつけた周囲の魔物が寄ってくるので離脱しますよ』
「了解。スライムちゃんは?」
『戦闘中の周囲警戒を頼みました。向うにいるので早く合流しましょう。なるべく音を立てにない様にお願いしまえすね』
幾度かの戦闘を繰り返しつつ、確実に攻略を進めていく。蛇の魔物の他にも鳥型、フクロウのような魔物で全身が木でできていて発見するのに苦労した木目フクロウや、でかいワーム以来の地面から攻撃してくる魔物でなぜかつるはしを持ったモグラなんかもいた。
ちなみにモグラのつるはしはドロップアイテムとして回収済みだ。
使う機会が来るのかは謎だけど……
「眼鏡ちゃん、あとどれぐらいで到着する?」
『あと3分の1ほどですよ。しかし予想以上に戦闘が多いですね、どこかで補給をしないと手持ちが持たないかもしれません』
この階層に入ってから戦闘の回数がこれまでとは桁違いに増えている。散発的に魔物が出てくるのもあるが、それよりも一回の戦闘中に周囲の魔物が音に引き寄せられて結果複数の敵を相手にしなくちゃいけないことが問題だ。
このせいで眼鏡ちゃんの言う通り想定以上の戦闘が起きている。
今も非常食を食べながら歩いているのだが、正直<食の加護>の燃費が思っていたよりも悪い。
「補給ってい言ったって、ここじゃ魔物は食料にならないし、食べものってそこら辺に生えてる草しかないよ?」
『まあいざとなったらそれも食べていただくのですが、今はその必要はありません』
あ、食べる可能性は否定しないんだ……
『そうですね……スライムちゃん、向うにちょうどいいのがいるのでお願いしていいですか?』
「……(例の方法ね。私も絶対成功できるわけじゃないわよ)」
するとスライムちゃんはポヨンポヨンと跳ねてどこかに行ってしまう。すぐにその方向から魔物の叫び声、というか断末魔が聞こえてきたてスライムちゃんが帰ってくる。
その後ろに水で出来た縄で縛った魔物を連れて。
「ちょっとスライムちゃん!?なんで魔物連れてきてんの!?」
「……(大丈夫よ。ちゃんと息の根は止めてあるから)」
「そんなはず……」
だってダンジョンでは、魔物は死ぬとドロップアイテムを残して消えてしまうはずだ。
魔物の死体が残るはずがないのだが……スライムちゃんが連れている魔物からは生命の反応が感じられない。
「えぇ……?」
『どうやら上手くいったようですね』
「二人で分かってないで説明してよっ!」
『ちょっとした裏技ですよ。ダンジョンに出現する魔物は基本的にダンジョンに管理下にあり、その生から死までを管理されています。しかし、魔物が完全に死ぬ前にこちらの魔力を送り込んでこっちの管理下に入れてしまうこともできるんです』
「……なるほど?」
『難しいことはともかく、方法によっては魔物を丸ごと手に入れとこともできるんですよ』
「それって凄いんじゃない?だってドロップアイテム量が少ないし、こっちのほうが断然お得じゃん!」
『それがそう上手くもいきません。この方法はダンジョンでのルール違反すれすれな行為なんです。言ってしまえば本来はダンジョンに還元されるはずのものをかすめ取っているわけですからね。あまりやりすぎると防衛機能によって排除されます』
「えっと……排除って具体的には?」
『めちゃくちゃ強力なガーディアンが出てきて、ぐしゃっと』
「……うん。ドロップアイテムだけで十分だよ」
しかし丸ごと持ってこられても解体とかやったこともない。
どうしようかと思っていたら、眼鏡ちゃんが魔物を収納し出てきたときには綺麗に切り分けられたお肉になっていた。
……いつの間にこんな機能を身に着けていたのか。
「……(調味料とかあるかしら?火が使えないから蒸す方向で行こうと思うんだけ思うんだけど)」
『それでしたら収納に入っています。あまり必要だと思っていなかったので少量しかありませんが』
「……(ああ、これだけあれば十分よ。むしろよく持ってたわね、あまり期待してなかったんだけど)」
『それはもう万能眼鏡ですので』
はい、二人はそろってお肉の調理に入ってしまいました。
ボク?料理なんてできないし、お手伝いすらやったことありませんが?
ちなみにこのお肉はさっきのウッドボアとか言う魔物の物である。強さとかは実際に戦っていないから分からないけど。
『スライムちゃん、こちらにレシピなどいかがでしょう?エネルギーの吸収効率や疲労回復にもいいようですよ』
「……(いいわね。こっちのもよさそうだけど材料が全然足りないわね、そっちのレシピでいきましょう)」
二人がテンポよく進めていきあっという間に完成しました。
一口大よりもちょっと大きめに切られたお肉が葉っぱで巻かれている簡単な料理だ。
「この葉っぱは?」
「……(近くに生えていた体の回復力を高める効果のあるヘルスプラントの葉よ。さあっ、とっとと食べちゃいなさい)」
「うん!いただきます!」
肉と葉っぱが一緒に食べられるように齧ってみる。
「うまあぁ!!」
お肉はすっごい霜降りな感じがしたんだけど、その油が全然しつこくない。それに柔らかいし、牡丹肉?っていって良いのか分からないけど臭みもなくて食べやすい。
まかれている葉っぱも少し苦いというよりも少し甘みを感じるぐらいで美味しい!
「お代わり!」
「……(はいはい……本当に一頭分ぐらい食べ切っちゃいそうね)」
『さすがに上限はありますがエネルギーとして蓄える分食べる量は凄まじいですよ。あれ一頭分ぐらいのカロリーがあれば今後の攻略もエネルギー切れの心配はなさそうですね』
「……(そうね。ああ、あのヘルスプラントの葉、気に入ったみたいだから少し持って帰りましょうか。攻略したら消滅しちゃうから次に手に入るのはいつになるか分からないものね)」
『であれば木ごと収納していきましょう。ヘルスプラントの生育に必要な環境データは分かっているので地上でも生育は可能です』
「……(……さっきダンジョンから物を持ち出すのはまずいって言ってなかった?)」
『ふふ、星の意思が出張ってくるならともかく管理者程度に口は出させませんよ。まあ、星の意思が出てきたとしても……』
「……(あんたも大概よね。なんでこの星はあんたみたいなやばいやつを宝箱に入れちゃったのかしら)」
お肉うまあぁ~
いかがでしたでしょうか?
やはりお肉はいいですね~作者も焼き肉に行きたくなりました!あ、しゃぶしゃぶでもいいですね~
眼鏡ちゃんもちょっと裏の顔?が垣間見えましたね。さて一体何者なのか……
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