スライムに連れられて
以前に一話が長くて読みにくかったかもしれないので、複数に分割しています。内容は変わりませんが、加筆、添削しています。改めて是非、読んでみてください!
スライムに案内されてしばらく歩いたけれども、行けども行けども何もない。このスライムに出くわした以外に本当に何もない。そのスライムはと言うと後にいる僕を確認するように振り返りながら、先頭を進んでいた。
いつまで続くのかと思っていた矢先にそれは見えてきた。
まだ遠目にだが、突き当りに扉があるのが見える。恐らくあそこが案内されている場所なんだろうと思う。少し歩いて扉の前に到着する。近づいてみて分かったのは、突き当りが開けた空間になっていたことと、扉が思ったよりも大きかったことだ。扉は天井から床までの高さがあって、ちょっと威圧感を感じる。
「ええっと、ここが出口に通じているってことですか?」
「……(ぷるん)!」
「……なるほど」
扉の前で跳ねていたスライムから肯定の意志が感じ取れた。どうやらここがゴールで間違いないようだ。ここが本当に出口に通じているなら開けるんだけど……下手したら鬼やら蛇やらが出てくるかもしれない。今更スライムのことを信じない訳じゃないけど、万が一ということもある。
といっても開けないという選択肢は始めからない。
最初のスタート地点からここに来るまで、ずっと一本道だった。他に行けるような道も無ければ、ここ以外に扉も無かった。つまり、外に出るためにはこの先に進む必要があるわけだ。
まあ、開ける開けない以前に、この大きな扉を開ける事が出来るかが問題だけど。もし、隠し通路とかがあったらその限りじゃない。しかし、あったとしても探している時間も、見つける自信もない。
さっき鞄をひっくり返して分かったのだが、僕は食料を持っていない。何かのテレビ番組で見たことあるが、人が何も食べずに活動できるのは三日だそうだ。水ならスライムに頼めばどうにかなるかもしれない。しかし、食料が問題なのだ。こんな洞窟じゃ現地調達もできない。
それに気を失ってからどれほど経ったのか分からないけど、歩き回っては余計に体力を使う。だったら目の前の道を進む以外に選択肢はないのだ。
僕がそんなことを考えている一方で、スライムは扉の前で跳ねていたかと思うと、次の瞬間には壁に体当たりしていた。扉の横の壁に何度も体当たりを繰り返している。
「えっと、何してるんですか?」
「……(ぷるん)!」
ニュアンス的には『黙って見ていろ』って感じだろうか。
すると、すぐに変化が訪れた。壁が崩れたのだ。いや、崩れたというか割れたというか。体当たりをしていた箇所の表面がパリンッと割れると、その中から穴が現れた。屈めば人一人が通れそうなぐらいの、少し大きめの穴だ。
「……えっと、それ何ですか?」
「……(ぷる)?」
「もしかして……隠し通路なの?」
「……(ぷるん)!」
そういうことらしい。見つけられっこないと思っていた隠し通路を、あっさりと見つけてくれた。まさか本当にあるなんて思わなかった。隠し通路ってことは、ショートカットになるのだろうか。
「ねえ、そこの扉を開けていくんじゃだめなの?」
「……(ぷるん)、……(ぷるぷる)」
「つべこべ言わずとっとと入れ!?ちょ、だって君、これどこに続いているのさ!?」
「……(ぷるん)」
「本当に近道なんだろうね!?」
スライム曰く、こっちに行った方が近道になるらしい。確かに近道があるのなら、そっちの方がいいに決まってるけど……この穴、下に続いてる。おかしい、僕は外に出たいと言ったはずだ。だと言うのに、この穴は地下に向かっている。
「……(ぷるん)」
「……君を信じていない訳じゃないんだよ。水を分けてくれたし、ここまで連れてきてくれた」
「……(ぷるん)」
「……そうだね。だったら最後まで君のことを信じてみるよ」
スライムからの真剣な意志を感じて、隠し通路の方を行くことを決めた。出会ってからずっとこのスライムは、僕のことを気遣っているような様子があった。だからこそここまでついてきたのだから!
……ものは試しと、着ていた制服のボタンをちぎって放り込んでみる。
しばらく待ってみても、下に届いたような音はしない。もしかしたら軽すぎて音が聞こえなかったのかもしれないと思い、今度は金属製の定規を落としてみる。
しばらく待っても、音は聞こえなかった。
「やっぱり、こっちの扉の方から行かないかな~なんて?」
「……(ぷる)」
「ちょっ、なんで押した!?まってまって、これ思ったよりも急でちょっと無理かもぉぉぉぉぉぉーーーーー」
しびれを切らしたスライムによって穴に放り込まれました。思ったよりも力持ちだったのね。
落下すること暫し、ようやく下に辿りついた。
幸いなことに、垂直ではなく超急なスライダーの様になっていたので怪我は無い。ただ、あまりにも長いものだからお尻が燃えるかと思った。
それと同時に面白かったと思う自分がいるのも認めがたい事実だった。
「それにしても、扉を無視して滑り台した結果、目の前にあるのがまた扉とはどういうことだい?」
「……(ぷるん)」
「あ、こっちが出口に一番近い扉なのね。それにしても隠し通路の先のことなんてよく知っているね。前にも来たことがあるの?」
「……(ぷるん)」
「来たことは無いけど、そういうものだから?……よく分からないけど、なるほど。それで、こっちの扉は開けていいんだよね?」
「……(ぷるん)!」
ここには扉の他にも、その反対側に通路が存在している。スライムは通路の方ではなく、扉を開けろと言っている。通路も扉もさっきの場所とほとんど違いが分からないので、一瞬スライダーを滑ってまた戻って来たんじゃないかと疑ってしまったぐらいだ。
だとすると、通路の方もさっきの所と同じような構造かもしれない。だったら確かに扉の先に行くべきだろう。
スライムからのOKも出ていることだし、早速扉を開けてみよう!
身長の倍以上はありそうな巨大な扉に手を掛ける。開くかどうか分からないけど、とにかく頑張ってみようと思い扉を押してみた。しかし返ってきたのは、拍子抜けの手応えだった。触った感じは金属のようだったのに、いざ開けてみると発泡スチロールでも押しているかのような重さだった。
「あれ、思ったよりも軽いな。なんだろ、張りぼて?」
もしかして、本当に発泡スチロールで出来てるんだろうか?
だとしたら、やはりドッキリということになるのだろうか?
そもそもとして疑問が尽きない出来事だらけだ。
そもそもこの洞窟は何なのだろうか。ふと、隣にいるスライムに視線を向けてみる。便宜上スライムと呼んでいるが、本当のところは正体不明だ。それにこんな遺跡みたいな洞窟があるなんて、聞いたこともない。最近作られたにしては、扉や通路の所々に年代を感じさせる風化したような箇所があった。
……いや、いま優先するべきなのは地上への帰還だ。外に出ればここのことも少しは分かると思う。今は、脱出に全力を向けるべきだ。
空いた扉の隙間から中を覗いてみる。
中の広さは、学校の教室よりも一回り大きいぐらい。そこまで広くはない。薄暗い部屋の、ちょうど真ん中の辺りに何かの影が見える。それを見た瞬間、全身に鳥肌が立った。自分でも分からないけど、あれには近づいちゃいけないような気がしてくる。
でも、入るしかない。
スライムと一緒に部屋の中に入ってみる。すると、部屋全体が突然明るくなり、その全容を見る事が出来るようになる。それと同時に背後では扉が閉まる音がする。
振り向くと、やはり扉が閉まっていた。
開けてみようとするが、今度は金属塊になったかのようにびくともしない。
「退路……断たれた?」
「……(ぷる)」
「おうふ」
そして明るさを増したことによって部屋の中央にいた存在がはっきりと見えるようになる。
「あれ、君の親戚か何か?」
「……(ぷる、ぷる)」
「そっか違うんだ」
部屋の中央にいたのはおっきな、おっきなスライムであった。具体的には僕の身長と同じぐらいのビックなスライム。隣のスライムとは10倍以上の差がありそう。便宜上ビックスライムと呼ぶことにしよう。
そしてあのビックスライムは敵だ。姿をはっきりと認識できた瞬間から、その確信があった。
いかがでしたでしょうか?
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