ある日洞窟でスライム(仮)と出会った
見えるのは石の天井と壁だけ。窓とか、外に繋がるような場所は見えない。唯一の道はと言えば正面に見える先の見えない通路だけ。突き当りは見えず、障害物らしきものも見えない。
明かりは無いのに、視界ははっきりしている。壁が光を発しているとかでもなく、普通に見ることが出来ている。
何ともまあ不思議なことだ。
「ふむ」
動かずに救助を待つのがいいか、それとも自力で出口を探してみるか。
あまり動かない方がいいのかもしれないけど、正直じっとしているのは落ち着かない。というか普通に怖い。起きたらいきなりこんな場所で、ろくに状況も把握できていない。
「……取り合えず、行こうかな」
歩きながら記憶を辿ってみる。学校帰りに少し寄り道をして、軽い地震があったところまでは覚えている。でも、それっきり記憶がはっきりしない。ふわっとした感覚の後、気が付いたらここにいたのだ。何でか気を失っていたみたいだけど、本当に何があったのか。
それに洞窟とは言ったけど、明らかに自然にできたじゃない。通路は綺麗に切り取られており、壁を触ると、さらさらという感触が返ってくる。ドッキリか何かのセットと言われると納得できるが、いきなり気絶させたり、一般人の女子高生にはしないだろう。
考えても結局よく分からないので、脚を進める。何の変化もないなく、続いている通路をひたすらますぐに進んでいく。
通路の先のほうにナニカがいた。
ちょっとずつ近づいてみると形がはっきりとする。
最近アニメ化した転生系の主人公と似た形。有名なゲームに出てくるのとはちょっと違う形の……そう、スライムであった。
うん、スライム。青い見た目、水まんじゅうのような体の中には黒い石が入っている。それが『ぷるぷる』と震えながら通路の中央に佇んでいた。
さて、どう考えても意思疎通が出来るとは思えないけど……もしもの可能性もある。話せなくても言葉は通じるかもしれない。そうすれば出口までの道を教えてもらえる、なんてこともある……かもしれない。
試すだけ、試してみようかな。
とりあえず注意しながら近寄ってみる。悪いスライムだったら、襲い掛かってくるかもしれないから警戒は大切だ。手が届くぐらいの距離まで来たのに、特に反応を見せない。もしかして、気づいていないんだろうか?疑問に思いながらも、声を掛けてみる。
「こんにちは、初めまして」
「……(びく)!?」
おお、跳ねた跳ねた。やっぱり気づいていなかったみたいだ。こんな近くまで来てるのに気が付かないなんてことあるのだろうか。このスライムがよっぽど鈍いのか、僕のスニーキングスキルが滅茶苦茶高いかのどっちかだよね。
……まあ後者は無いと思うけど。
目があるのか無いのかも分からないので、多分こっちを向いているだろうと思って話を続ける。それにしても、実際に見てみると、何というか感慨深いものがある。ゲームや漫画でしか見たことのなかった存在がこうして目の前にいるのだ。後で触らせてくれたりしないだろうか。
「えっと、僕は龍希っていいます。実は出口を探しているのですが、ご存じありませんか?」
「……(ぷるん)?」
「えっと、僕の言っていること分かりますか?」
「……(ぷるん)!」
反応からして言葉は通じているらしい。身体を上下に揺らしているから、頷いてるってことなんだよね。それに自分でも不思議なのだが、何となく言っていることが分かるような気がするのだ。はっきりとではないけど、「はい」か「いいえ」ぐらいは分かる。この勘が間違っている可能性も無くはないけど、ここは言葉が通じている前提で話を進めていこう。
「あの、スライムさん。さっきも言ったんですけど僕出口を探しているんです。どんな情報でもいいので、それっぽいものとか知りませんか?」
「……(ぷる)」
多分、悩んでいる、というか考えている感じかな。
考えるのに時間が掛かっているみたいなので、僕もスライムの前に座りこんで結論が出るのを待つことにする。そういえば喉が渇いたと思い、鞄の中を漁る。これは記憶が途切れる前から持っていたもので、目が覚めた時には傍に落ちていた。中身もざっと見た感じだけど、特に変わった様子はない。
そして、目当てのペットボトルがあるにはあったのだが、ほんのちょっぴり底に溜まっている程度しかなかった。それでも飲まないよりはましと思ったが、やっぱり足りない。それどころかむしろもっと喉が渇いた気さえしてくる。
「……はぁ」
「……(ぷるん)」
空のペットボトルを前に項垂れていると、スライムが体から触手を伸ばしてペットボトルの上にかざす。するとその先端から、水が出てきてペットボトルに溜まっていくのだ。そして、中身が一杯になると触手からの水も止まり、するすると体に戻って行く。
「これって……?」
「……(ぷるん)」
「飲め、ってこと、かな?」
「……(ぷるん)」
「え、えぇ……で、でもこれって――」
君の体液じゃないの、と続けようとしたところで、凄い速さで伸びてきた触手で頭を叩かれた。どうやらちゃんとした水だと言いたいらしい。色んな角度から見てみるけど、確かに普通の水にしか見えない。それに僕が飲むのを目の前のスライムが見ている気がする。
「えっと、じゃあ頂くね?」
「……(ぷるん)」
女は度胸だっ!と思い切って飲んでみる。
ごく……ごく……ごくごくごくごく!!
「っ!?」
美味しい!?
何これ、想像の百倍ぐらい美味しいんだけど。家で飲む水道水とか、お店で売っているような『~の天然水』みたいな水よりも遥かに美味しい。気が付いたらあっという間に飲み干してしまっていた。
「……(ぷるん)」
「あ、ありがとう。とても美味しかったです」
「……(ぷるん)」
僕が全部飲み干したのを見届けて、空になったボトルにさっきと同じ方法で水を注いでくれる。もう少し待って欲しいって感じのニュアンスを受け取ったので、今度は飲み切ってしまわない様に少しづつ飲む。それと、鞄の中身を確認しておく。
学校帰りだったから正直大したものは入っていない。教科書、ノート類が数冊ずつとシャーペンなどの文房具各種。いざという時に武器になりそうなものは、ハサミぐらい。しかも筆箱に入るコンパクトなサイズのやつ。ついでに教科書をお腹側と背中側に入れておく。よく漫画とかで、これで助かったみたいな話はよく聞くからね。
スライムなんていうファンタジーな生き物がいる以上、他のファンタジー生物も出てくるかもしれない。いや、もういる前提で動いた方がいいだろう。ハサミもポケットの中に忍ばせる。
目の前のスライムは、何かと良くしてくれているから敵じゃない、と思いたい。敵意みたいなものは感じないから多分大丈夫だと思う。
そうこうしている内に、スライムの方も考えがまとまったみたいだ。どうやら出口っぽい場所を知っているらしい。ぽいというのは、そこが出口かどうか確信が無いからみたい。
「そこまで案内して貰うことってできますか?」
「……(ぷるん)」
「ありがとうございます!」
スライムに案内して貰いながら洞窟の中を進み始めた。
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