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小説っていいよねw

退部届



吾妻 城司  



アンタらさ、ずーと思ってたことなんだけど、文学とか小説とかのことで熱く語るじゃない? こないだなんか西川さんと水原さんがそのことで殴り合い一歩手前っていうか、あのときは胸ぐら掴んだだけで終わっちゃったけど、とにかくそれぐらいマジに語っちゃうじゃない?


 あれバカっぽいからやめろ。


 でも小説っていいよね(笑)。「なにヌケヌケと」って思ってるかもしんないけどね、なんか俺、現代の文学を批判してるとか思われてるみたいだからさ。


 現代の文学を批判してるんじゃなくて、俺が批判してるのはアンタらだよ。たぶん、こーいう文章書いてるからそう思うんだろうけどさ、だいたい「現在の文学」って一体なに?ってことだよな。実体の無いもん議論したってしょーがないでしょうが。俺さー、実は小説書きたくて文芸部に入ったわけじゃないんだよね。友達が入部したからツラれて入っただけでさ。でもソイツ、辞めちゃったじゃん? だから本来、俺がこの部にいる理由ないんだよね。それに俺、ちゃんと文章書く勉強とかもやったことないからさ、小学のときから作文とかも大っ嫌いだったしね。それを今みたいに部誌に載せるからってノルマとか決められてさ、書けもしないのにムリヤリ書いたら、こんなんなってもしょーがないだろーが!!


 俺もね、ナントカ賞とか獲った作品とか読んだら一応感動とかするんだよ。だから小説っていいよねっつったんだよ。けどさ、一方でそういう作品の文章には吐き気がするね。カマっぽいからな。


 それよりさ、そーゆうこと熱く語っちゃう前にアンタらするコトがあるんじゃないの? ハッキリ言ってさ、大学の授業ぐらいちゃんと出なさいよ。文学やってることなんか2年も3年も留年する言い訳にはならんでしょーが。あと昨日の酒が残って身体の調子が悪いとか、もう半年も教授の顔見てないとか言ってるけど、なんだよそれ? 自慢してるのかよ。要するに頭バカだから学校の授業についていけなくなって、逃げまわってるだけだろ? 小説なんかそのための言い訳じゃねえか。だっていっつも新しい小説のプロット考えてるとか言ってるけど、実際そんなもん見たことないぜ。


 ただね、俺も

「お前、やっぱりちゃんと文章の勉強した方がいいよ。」

って言われんのはしょーがないと思う。実際ヘタだから。でもそんなモンしないけどな。別に作家になるわけじゃなし(なれないけど)。いや、それはいいんだ。許せないのは、こないだ

「吾妻の小説って太宰っぽいよな。」

っつっただろ! フザケんな! 俺の小説のドコを読んだらダザイなんかのオカマヤローとおんなじになるってんだ。「太宰っぽいよな」なんてスカしやがって、俺はお前のそういう文学家気取った態度が一番大っ嫌いだ。お前が太宰好きなのはわかったよ。でもな、このハイテク時代に酒飲んで女とヤッて、それで一発結核とかやって人にさんざん迷惑掛けたあげく自殺したって、そんなもん文学でもなんでもあるか! そんなもんに憧れてるからダメなんだよ。だいいちそんなもん気取ったって、お前女いねぇじゃねえかよ。小説だって書けねぇじゃねえか。もし書けたとしてもだな、そもそも小説家が小説書けるってのは当り前なんだよ。でもお前の憧れてるとっくに腐った作家ってのは、それ以外はなんにもできなかったわけだろ? そんなもの偉くもなんともあるか! それは旋盤(せんばん)職工(しょっこう)のオヤジが旋盤できるってのとおんなじ事で、でもこいつらはそれ以外でも、いい父親とか借金はちゃんと返すとか妻子食わせたりとかしてるんだよ。まさか「文学は旋盤なんかとの仕事とは違う」なんて言うんじゃないだろうな。なんだ?旋盤バカにしてんのか。人類ノ文化ヘノ貢献なんてタワ言いうなよな。そんな腹の足しにもなんねえもん作ってるやつより、コツコツ歯車削ってるヤツの方がエラいよ、絶対。だいたい本当にデキるやつってのは小説()書けるってやつのことだし、いるよ実際そういうやつは。普段の日常生活もちゃんとできるってのは、頭のまともなやつなら当然のことだろうに。

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