後に残るのはアル中だけだ
「なんでだ?」
「上原さんみたいにマンガも小説も書けたらいいんでしょうけど俺らはマンガしか描けないし、なんか居づらいんです。」
「それはさっきの話を気にしてるのか?」
「そういうわけじゃないですけど。」
別にこっちも尋問してるわけじゃないんだからそんなにビビんなくてもいいんだけど、最初に口を開いたやつは両側から小突かれて全部喋らされて気まずそうだった。しかしこいつらにとって友情とは、まあいいや。
「しかしちょっと待ってくれ。1年で入ってきていきなりこんな状況なのは悪いと思うけど、メインライターのお前らにいま抜けられると……」
「でも、もうよその部に行くことが決まってるんです。」
「ええ!? どこ?」
「漫画研究会です。」
「しかしありゃあお前、正式の部じゃなくて同好会だぞ。学校から予算もぜんぜん出ないし。」
「でも向こうにはプロになった人がいるんです。」
「そうか、お前らもプロになりたいとか思ってたのか。いや悪い、全然思わなかったわけじゃないけど、そりゃそうだよなあ。」
「最初は文芸部の方が伝統もあるし正式の部だから、それにマンガも自由に描けるって聞いたから。」
「誰がそんなこと言った?」
「吾妻さんです。」
「そうか、俺たちの代から路線変更したからなあ。けど自由に描けるって雰囲気じゃなかった?」
「ええ。」
「じゃあ、もう決心は決まってるのか?」
「ええ。」
「じゃあしょうがないな。ただ今度の学祭が終わるまでは手伝ってくんねぇか。」
「それはいやだなあ」というような顔をしてるがこれは引けない。
「悪いな、頼むよ。」
「ええ、じゃあいいですよ。」
しかしこれを知られたら1年が浮き足立つのは避けらんないだろう。まして学祭中にバラされたら学祭自体がヤバくなる。幸いまだ他の1年には話してないようなので厳重に口止めしといた。しかしこれを機に1年がごっそり辞める可能性もある。どっちにしても連中が担ってた創作オリジナルのマンガ部門が消えてなくなることは間違いない。2年のネーチャンたちが中心のアニパロは、2年と1年の男合同で少数派のエロとは水と油だ。なにもかもが違う。アニパロは絵はウマいがオリジナリティはない。パロディなんだから当たり前だが、本人たちもそういう問題意識はないらしい。エロの方は絵はハッキリ言ってヘタだ。まあこう言っちゃなんだが、内容がハードならヘタでも話がなくてもOKって世界だからしかたない。それでもウチは内容のある方だろう。エロ系のサークルでウチみたいにネーム(絵コンテ、映画の脚本みたいなもの)のチェックをやってるとこは少ない。いままでジャンル的にその間を取り持ってたのが創作オリジナルのメンバーだ。それが抜けるとなると確実に分裂するし、しかも本来アニパロもエロも独立採算可能なんだから、連中が文芸部から独立しようとするのも時間の問題だろう。どっちか片一方だけが独立するならともかく、最悪の場合マンガ屋全員が辞めることもありうる。そうなると後に残るのはアル中だけだ。それも今年来年にはいなくなる。もし単位が取れなくても在学年限の7年が終わってしまうからだ。
なんでぇ、この部って結構余命わずかじゃん。もうどうでもよくなってきちゃったな。それにしても1年は疲れて帰したのはいいとして、明日の集合時間は朝の9時だけど50パーセントも集まればいいほうだろうな。




