疫病神の噂
私立水明高校、市内じゃまぁそこそこ有名な進学校だ
俺はここの高校の2年生。ごく普通、という訳では無いがそれなりに平凡な高校生活を送っている。
「八坂~」
いや、見てくれはごく普通なのだが
「八坂ってば~」
身の上がそんじょそこらの男子高校生とは違う
「おい八坂!」
何を隠そう俺は
「てめぇの耳は飾りかあああああああああああああ!!!!!!」
瞬間、強烈な打撃が俺の頸椎を打ち砕いた
「せっかく俺が気持ちよくナレーションしてたのに何してくれてんのお前」
「八坂が僕を無視するのが悪い」
「お前、だからって不意打ちはないだろう不意打ちは」
「八坂が悪い」
「痛い、うるさい、しつこいの3拍子揃った厄介もんだなお前」
「ん?八坂くぅ~ん僕にそんな偉そうな口きいていいわけ?僕以外に友達いないくせに」
「くっ……黙れ」
この厄介もんは柊了。
俺の唯一の友達だ。
「で?俺になんか用あるんだろ?」
「あぁ!そうそう下らないケンカなんてしてる場合じゃないんだよ八坂!大変なんだよ!」
「俺のナレーションをドロップキックで静止させるほど大変なことってなんだよ」
「今年も僕らが同じクラスだってことさ!」
「そりゃあこれからの学校生活が大変そうだな」
「喜べよぉ~素直じゃないなぁ八坂君は」
「で?本題は?まさかそれだけじゃあるまいな」
「うん、それがさ・・・うちのクラス”疫病神”が一緒なんだ」
”疫病神”・・・そう呼ばれるのはうちの学校じゃただ一人だけ
三栖長閑彼女に関わった人間は大なり小なり何らかの被害を被る
物をなくす、恋愛がうまくいかなくなる、怪我をする、テストの点数が落ちる、その他多数
普段から噂に上がってるのはこの程度なのだが、死人が出たという話も聞いたことがある
あまたの人間に迷惑をかけ、迫害を受け、ありもしない噂話をでっち上げられた彼女の行きつく先は無論”孤立”だ。
こっちも関わりたくないし、向こうも迷惑をかけると分かっているからか積極的に関わろうとはしない。
それどころかこの現状に満足しているような気さえする。
「そりゃまた災難だな」
「他人事みたいに言いやがって。いくら八坂だってどうなるか分かったもんじゃないんだぞ?」
「そうは言ってもなあ、たかが噂だろ?」
「都市伝説の塊みたいなやつががよく言うよ」
「俺のは都市伝説じゃない。神のご加護と呼んでくれ」
「そんなことよりさ」
「そんなこととはなんだ。罰当たりな奴め」
「八坂さ、三栖さんのことタイプだって言ってたよな?」
「……あぁ、言ったな」
「お前なら仲良くなれるかもな。その、神のご加護とやらでさ」
「……そうなったらお前に迷惑だろうが。第一、タイプってのは見た目の話であって、別にどうこうなりたいとかじゃ」
キーンコーンカーンコーン
「「あ……」」
絶望を告げる鐘の声
初日から遅刻のバカ2人は仲良く廊下で立ってましたとさ。