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ソウル・リファイン  作者: 弥生丸
第二部
89/96

特性

特性


武装マネキンを倒して戦利品を得た千尋たちは、マップや影たちの探索で近場に敵影がない事を確認した後、見晴らしの良いホール内で短い休憩時間を取ることにした。


適当な椅子に座り、ペットボトルのお茶を取り出して喉を潤している。


「あの時はどう説明しようかと思ったけど、みんなアニメとか見ててくれたお陰で助かったなー。

普通核とか言われてもよく分かんないもんね」


千尋は黄泉醜女たちを相手に七年以上前、初めて異界化を経験した時の話をしていた。


「戦闘物のゲームやアニメだと良くあるパターンらしくて、二人共私よりしーちゃんの助言を理解してたっぽいし」


そう、あの時二人は核を壊すと聞いていくつかの作品を思い出したらしく、当時アニメなどを見なかった千尋は逆に説明を受けたくらいだった。


特殊なアイテムの入手や中ボスを倒す、特別性の何かを壊す、時には制限時間があったり、特殊な条件が必要になる場合もあるなど、異界化した裏門付近で熱く語られたのだが、今思うと緊張と疲れで貴彦たちはおかしくなっていたのかも知れない。


「あの時はまだ私達も憑いたばかりでしたし、千尋の格や力も低かったのでうまく意思の疎通も出来ませんでしたわね」


黄泉醜女も当時の事を思い出しているようだ。

どうやらあの時は千尋と守護者たちのレベルや霊格の差があり過ぎた上に憑いたばかりで調整不足だったらしい。


当時の千尋という器の大きさに対して、彼らは大きすぎたのだ。


「こっちもアニメとかで良くある話だよねー。

力に慣れる特別な訓練とか、パワーアップする為の修行とか。

まぁだからこそ手っ取り早くレベルアップする為にあちこち行った訳だしねー」


中二病を引きずった極普通の高校生たちがそう何度も異界化を体験したり、異世界に行くなんてことはそうそう起こるはずもない。

怪談などの噂話も大半は噂か、尾ひれがついて話が大きくなっただけでしかないのだから。


短期間でそれを経験すると言う事は、何かしらの理由や原因がある。


つまりそういう事だ。


「さてとっ、休憩はお終い!

依頼主も早めに済ませて欲しいみたいだし、そろそろ先に行こっか」


千尋は椅子から立ち上がり、空になったペットボトルを収納するとマップをチラリと確認し、「多分こっち」と守護者たちへ適当な指示を出して歩き始めた。


広場を抜けると本来よりはやや広めの通路になっていた。

一階同様すべてのシャッターは上がっており、あちこちから様々な音楽やざわめきが聞こえてくる。


ただ一階と違い通路が延々と続いている様子はなく、人間の様に着飾ったマネキンの数もまばらだ。


武装したマネキンは見当たらず、マップを確認しても物として表示されていて、特に動く様子はなかった。


しばらく進むと種類こそ増えたが一階同様、ゴブリンを始めオーガ、コボルト、オーク、ダークエルフにエルフ、ドワーフ、羽付き小妖精など人型の魔物たちが小さな群れとなって襲って来たが、さして手間取る事もなく倒しては魔石とドロップ品に変えてゆく。 


「ねぇ、2階に来て気付いたんだけど、ここに出てくるドワーフやエルフ種、小妖精も全部オスだけだったよね?

もしやとは思ってたけど、マネキン以外ゴブリンやコボルトなんかも全部オスだったんじゃないかなー?」


「確かにそうですわね。この異界化の特性がそういう物なのかもしれませんわ。

人型、それとオス。この2つがそうなのかも知れませんわね」


千尋の問に黄泉醜女は真剣な表情で答えた。

異界化には何らかの特性、傾向がある場合が多い。

例えば墓地などなら死霊や動く屍などが多い、森ならば獣や昆虫、そして植物系が多いなどだ。


異界化した元が影響している場合や、異界化の核となった存在が影響していると考えられている。

造り手の意図的な物である可能性可能性もあるが。


「とか言ってる間に、着いちゃったね」


千尋が通路の最奥、壁の前に立ち止まると彼女を守るように囲いつつ鬼武者や黄泉醜女も立ち止まる。


千尋が一歩足を踏み出すと、眼の前に蔦が這う木製の大きな扉が現れた。


「次の階層かボス部屋かって感じだね。行こうか」


鬼武者の一体が扉に手を掛けると、鍵は掛かっていなかったのか木が軋む音を響かせながら簡単に開いて行く。


開いた扉の向こう側から、そよ風が通路へと流れのみ、土の香りと錆やわずかな腐敗臭を運んで来たのだった。

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