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ソウル・リファイン  作者: 弥生丸
第二部
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うわ〜、悪趣味だわ

第二部スタートです!

うわ〜、悪趣味だわ



午後10時過ぎ、壁や床を這う多数の影と、ふわふわと浮くいくつかの青白い鬼火のようなモノを引き連れて、閉鎖されて2年の月日が経つとある大型ショッピングモールの一階フロアーを白鳥千尋は歩いていた。


店舗のシャターは全て下りており、照明も僅かな非常灯が灯っている程度でかなり薄暗い。


多数の店舗や大型量販店も複数入る大型施設として大々的にオープンしたのは5年前の事。

広大な土地が絡む為、地上げや道路など土地に絡む問題はいくつかあったがこれと言って大きな事故もなく完成した。


その見た目はまるで古代ギリシャの神殿か何かをモチーフにしたようで、通常のそれよりも豪華かつ荘厳な雰囲気を醸し出していた。


この地域には地元密着型のスーパーなどが多くこの手の複合型施設は未だなかった為、営業開始当初は多数の客で賑わっていた。


しかし徐々に客脚は遠のき、閑古鳥が鳴く日も増えて行った。

そんなある日、ネット上の大型掲示板を始めとするサイトで、いくつもの噂が流れ始めた。


誰も居ないトイレの個室から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

非常階段の暗がりから影が追いかけてきた。

と言った具体的なものから、

あそこ出るって有名らしいよ。

行くとなんだか体が重くなって気分が悪くなる。

時々変な臭いがするよね?

昔何かあった場所なんじゃないの?

かなり古い祠を何もしないで潰したって聞いたよ?

などあやふやなものまで含め、まとめサイトなども作られるようになった。


そんなネット上の噂と関係があるのかは不明だが、次々と店舗が撤退し、ついには閉鎖まで追い込まれたのが二年前の事。


「デザイン的にもここって異界化前からどっかのゲームのダンジョンみたいだよね。

案外デザイナーがゲーム好きでその辺意識したとかあったりしてね?

まー、家相とか風水とかそんなんでこんな事が起こるなんて普通は思いもしないだろーけど。

てか普通起きないよね?」


今にも何かが出そうな雰囲気の中、千尋が気楽そうに影達に尋ねるように語り掛ける。


「えぇ、そうですわね。

何かを模した程度で異界化が起こるなら、この世界が大変なことになってしまいますわ。

運不運や何かを呼び込む、防ぐ物は沢山ありますが、コレは違いますわね。

使うべき者が使ってこそ意味がある物や形も多いですもの」


千尋の周りにある影達は、濃いものから薄っすらとしたもの、人の形をした物や形容し難いものまで様々だった。

そんな影の中でも色濃く人型をしたものの一つから、ややしわがれた女性の声が返ってきた。


「だよね。

魔法陣とかネットや漫画なんかでもあちこち描かれてるし、色んなデザインのアクセなんかもあったりするし、そーそー何か起きるはずないよね!

しーちゃんが言うならそうなんだろーなー。

流石しーちゃんだよ!

教えてくれてありがとね!」


「いいえ、千尋のお役に立てて幸いですわ」


しーちゃんと呼ばれた人影は、表情こそ見えないものの何処か嬉しそうな声音で千尋にそう返し、うんうんと頷いた。


このショッピングモールは病院や学校、寺社や墓地、古戦場などの所謂曰く付きな場所に建てられた訳ではなく、業績の悪化したある工場の跡地だ。

勿論古い祠などなかったし、建築工事が始まる前には地鎮祭も行われている。


工場とは言え人がいる場所では事故や病気で人が亡くなる事もあるが、それを言い出したら切りがない。


「まぁこの先に何がいるのか分からないけど、うちらは稼ぎつつコツコツレベル上げしなきゃだしね?

こっちに変化はっと…」


影たちを相手に軽い口調で語りかけつつ、千尋は虚空を見つめて何かを確認した。


「あー、モヤモヤしたのが映ってるねー。

こりゃそろそろ来るね?

しーちゃん、準備よろしく!」


暗がりの中、影達に声を掛けつつ笑顔すら浮かべて千尋が一歩足を踏み出すと、しーちゃんが返事を返すより先に突然施設内すべての照明がパッと灯り、薄暗かった通路を照らし出した。


閉じられたはずの店舗はシャッターを上げ、色とりどりの照明が踊り、館内放送の音楽が奏でられ、無人であったはずの通路には多数の人影があり、其処此処からザワザワと喧騒が響く。


まるで開店当初の時間軸に迷い混んでしまった様に錯覚してしまいそうだったが、それは明らかに違っていた。

まるで開店当初のワンシーンを撮影したかの様にも見えるが、人影と思えたそれは大きさも服装も違う数百という数のマネキンだったからだ。


聞こえてくる喧騒も、まるで録音された会話や物音があちこちに設置された隠しスピーカーから流れているだけのようなものであり、逆に人間など存在していない事を意図的に強調されていると感じた。


「うわー、悪趣味だわ」

千尋はその光景に思わず呟き、視線をチラリと背後に向ける。


それまで彼女が歩いてきたはずの通路にも煌々と照明に照らされて多数のマネキンたちが延々と配置されていた。

明らかに歩いてきた通路より長く、それこそ先が見えないほどに長く遠く続いている。


そんな千尋の様子を意識しながらも、しーちゃんは与えられた任務を全うすべく嗄れつつも凛とした響きを乗せた声を上げた。


「一番から七番まで影守りの陣を!

その他の者は千尋の影内にて待機!」


しーちゃんが他の影たちに命じると、複数の影は千尋の影へと殺到し、あっという間にその身を潜めた。


残る一部の影達が移動もしくは分裂して、千尋の左側にはしーちゃんと呼ばれた影が、その他の影は残る7方向へと移動し主を囲む。


「よっし。

じゃ、レベルアップ頑張ろう!」


そんな行為を何度も繰り返して来たのだろう。

千尋は満足気に一瞬だけチラリとしーちゃんに視線を向けると小さく頷いた後、さして緊張する様子もなくスタスタと通路の先へとあるきはじめたのだった。


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