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ソウル・リファイン  作者: 弥生丸
チート炸裂編
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蠢く影

蠢く影


「申し訳ない!大変遅くなってしまいましたがまだ間に合いますか?」


真摯な瞳で見つめてくる美少女に神格は無意味なのか胸のときめきを覚えながら、弘樹は「えぇ、来てくれてありがとう」とどうにか答える事が出来た。


翼持つ蛇竜に関しては何となく、本当にこんな感じ程度に事情を感知する事が出来たので余計な詮索はやめておき、早速作業…儀式を執り行う事になった。


四柱は手を離しセラフィーナと蛇竜を囲むようにして円を作り出す。

魔法陣の基本中の基本の一つこそが円である。


「では、始めましょう?」

四柱の中でもっとも神としての経験がある十六那が儀式の主となり、弘樹、貴彦、小春はそのサポートを行いつつバッテリー係にもなる事になっていた。


「聖典完全開放!

我が神眼に映るはただ一つのもう一つの現実。

試行せよ!

我らが求める神威をここに!」



その姿と声を、この世界を支配していた神々は見上げていた。

抗う気などすでに失せており、ただ事の成り行きを見守っていた。


元々は眷属たちの急速に変異した有り様を戻す事であったが、転移者の変化もまた彼等の興味、余興としての対象であった。


貴彦や小春が巻き込まれた一件やセラフィーナのように、様々なケースを実験し、時にはルール違反ギリギリな事をする者とていた。


しかし、今彼らが見上げている者たちは、多少幾柱かの神々の助力があったものの予想の遥か上を行く存在へと成長してしまっていた。


皆それぞれの思いも胸に見守っていると、彼らの知る神性ヘカテから生まれ変わった存在、望月十六那が魔導書の形をした名もなき神器を呼び出し、莫大な力を込めた言霊を放った。


それは神器を変異させ、強烈な光へと変化すると神々の化身や魔物、そして現地の人間たちやその他の生あるものたちへ等しく降り注いだ。


その光は変化をもたらすモノだった。

あるべき形がある者は僅かに、ある者はまるで別の何かに変わってしまう、そんな光だった。


神々の化身すらも抗うことは出来ず飲み込まれ、その意識は薄れてその姿すらをも消してゆく。


結晶化した人々も同様に、結晶化を解かれつつ光に飲み込まれて消えて行った。


はりぼてながらも生命に満ち溢れていた八柱界には魔物の姿はおろか、虫も植物も消え去り、波や風の音すら存在しない静寂と、何もない土塊がポツンと残るだけだった。


一つの世界が終わりを迎えたのを四柱とセラフィーナ、そして何故か光に巻き込まれることなく未だ存在しているホヤウカムイが見下ろし、それぞれが疲弊しつつも納得した顔で頷くと、彼等もまた土塊だけの世界から姿を消し去った。


星もなく光もなく、それでいて闇もなく。

ただ最初の一塊がある、そんな世界は音もなく静かに崩れてゆき、八柱界があった痕跡すら何処にも残りはしなかった。



なりたての創造主たちが作った新世界に全ては導かれて組み込まれ、元々歪であった生命に満ち溢れた。


それは一つの世界が滅び、四柱の破壊神が誕生した瞬間でもあった。



※ ※ ※


「何それ、下らない。

隕石が落ちてきてみんな死にましたみたいな展開じゃん?

やっぱり帰ってきて正解だったわ」


都内某所、豪奢な作りのホテルの一室で、ソファにゆったりと腰掛けミネラルウォーターのペットボトルを片手に虚空を見つめていた少女は、そう呟くとちらっと壁へ視線を向けた。

見ているものがいれば、ペットボトルにはラベルの代わりにいくつかの記号か模様のような物が描かれた紙が貼られている事に気付くだろう。

 

「あっちにはやっくんも居ないしね。

ねぇ、あなた達もそう思うでしょ?

聡、誠治、マリ?」


室内の壁には照明の位置を考えると不自然な影がいくつもあり、そのうちの3つが少女、白鳥千尋の声に反応してモゾモゾと蠢いた。


千尋は見下す様な目で影たちを見つめ肯定する姿を確認すると、興味を失ったのか再び虚空へと目を向ける。


失踪事件で唯一の帰還者である千尋の姿はあの時のまま、いや、確実に美しさは増していたがどう見ても10代半ばの少女にしか見えなかった。


「〈新世界〉ねー。

ん〜、〈繋がり〉はいくつかあるし、ちょっと弄れば覗き込めるかな?

こんな感じかな〜?

あ、ヤバ。目が合ったし」


千尋は空から視線を反らし、悪戯が見つかってしまった子供のようにペロッと舌を出して肩をすくめた。


ペットボトルを口に当てミネラルウォーターを一口飲んでテーブルに置くと、その横にあったスマホがガタガタと振動音を響かせた。


白鳥八尋、双子の兄の名を確認した千尋は、嬉しげにスマホへと手を伸ばした。


「はーい!やっくん!どうしたの?

え?そっかー」


いくつもの影が蠢く部屋の中、少女に見える女性の楽しげな声がしばらくの間響くのだった。


第一部 完


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