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ソウル・リファイン  作者: 弥生丸
チート炸裂編
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貴彦

貴彦



「それで固まった人達なんだけど、動ける様にする方法は2つあるわ。

一つはセラフィーナさんの両手を戻したのと同じ方法ね。

こちらから干渉する事で元の状態に戻す事は可能よ。

ただし対処療法だからまた何かあれば同じ状態になるでしょうけど」


十六那の表情からはあまりお勧めしないと言う雰囲気が駄々漏れだった。

結晶化が病気、アレルギーのようなものだとすれば、干渉は免疫機能の過剰反応等による症状は癒しても、原因となった体質そのものを完治させる訳ではないからだからだ。


「もう一つの方法とはどのようなものなのだろうか?」


セラフィーナが藁にも縋る思いで尋ねると、十六那は少し渋い表情になりつつ、


「根本的な欠陥の排除もしくは修正ね」   

と答えた。 

セラフィーナは今ひとつ意味が分からないのか困惑気な表情を浮かべている。


「それはどう違うのです?」


セラフィーナの様子を見て小春は十六那に問い、


「今回の結晶化以外にも何かしらの仕掛けがあっても不思議ではないわ。

だからそれらを調べて取り除く必要があるのだけれど、それそのものが生命活動や精神活動に必要なものだったとしたら取り除けない。

その場合は一部を作り直す必要があるって事。

まぁこれは結晶化していない私達にも言える事だけれど、何かしら手を打たないと不味いかも知れないわね。

転移者の体は八柱界のルールに従って再構成されているのだから、精神誘導なども込で何かしら仕込まれている可能性があるもの」


小春や貴彦、セラフィーナは先程の精神的な戦いを思い出し「あぁ、確かに」と納得した。


八柱界における禁忌や都合に合わさて先程の様な強い抵抗や結晶化などがいつ起こるかも分からない。

戦闘中にちょっとした事で動きが鈍っただけでも命を落とす世界において致命的な点となりかねない。


「それとね?

ぶっちゃけ企みは置いといても、魂やらの仕組みにある程度気付いた上に、それに対処したら神々サイドにバレるわよね?

最低限そこの三人が抵抗した事はバレていると見て良いし。

神々が一枚岩ではないとしても、ルールを破る人間に処罰をとか、下手すると排除を何て連中も出てくるでしょうね。

堪え性ないのもいるし」


十六那がちょっと話し忘れていた世間話でもするように、さらっととんでもない事を言い出した。


「え?」

「あちゃー、まさか?!」

「うわぁ、それって…」


小春、弘樹、貴彦がそれぞれ渋い顔をし、セラフィーナは今ひとつ付いて行けないのかキョトンとしていた。


「ちょっと考えれば分かるでしょ?

結晶化の解決や今回の精神誘導の拒否などは明らかに神々に対する反逆行為なのよ。

あちらがどんなに遊び感覚で手抜きをしてたり、ルールにグレーゾーンが多いにしてもそれは神々に対してのもの。

転移組3人と私は神席があるから多少は違うでしょうけど、人間やそれに近い者たちにどんな対応を取るのか、簡単にイメージ出来るでしょ?」

セラフィーナに理解できる様に十六那が説明する。


「そんなっ?!

余りにも理不尽ではないかっ?!神々とはそんなにも無慈悲なものなのかっ?!」

顔色を白黒させながらセラフィーナが叫び、「そんなもんよ?」と十六那がさらっと答えた。


「確かに十分に有り得ますね。

企みや遊びなどの各派閥はあるにしても、これまでの事を振り返れば神々は人々の営みを優しく見守る存在ではないと考えなくては駄目なのでしょうし。

町どころか一つの大陸位なら目的のために滅ぼす事もしそうですよね。

個々でお会いした方々は友好的でしたが、人だって個人と団体としては別の顔になるのが普通ですから…ってあぁっ?!

まずい、まずいですよっ?!

人間の感性からすると桔梗たちの行いは悪行ですが、神々からしたらシステムの根幹に関わる事の方が遥かに悪行となる可能性があります!

そうなると全ての祝福を奪われますから、亜空間収納が使えなくなりますよ!」


神々との接点が3人中もっとも少ない貴彦は冷静に意見を述べていたが、別の側面に気付いて慌ててステータスウィンドウを開いた。

現状はまだ使えるようだったが、いつ使えなくなるか分かったものでは無い。

貴彦にとっては大陸一つよりそちらの方が重要度が高いのだった。


貴彦は唐突に貴金属や宝石貴石など、いくつかのアイテム類を取り出して床に置くと、

「ふおおおっ!

唸れ!僕の錬成っ!」

と創造などの力も混ぜ合わせつつ5つの腕輪を作り上げた。


「おっしっ!!

時間経過の存在しない、収納サイズも第一大陸なら3つは収納可能なアイテムボックスを作りました。

万が一を考えて材料は全て〈新世界〉の物を使っています。

現在亜空間収納に入れている品々はこちらに移した方が安心です。

なお楽々移動システムや検索システムも搭載しましたし、当然ながら本人認証システムも積んでいます。

後々改良も必要かもしれませんが、とりあえず今はこれを使って下さい」

と一人で熱く語りつつメンバー達に配るのだった。


初めて見る貴彦の行動にセラフィーナは呆然としつつも腕輪を受け取り、他の面々は通常運転で良かった、急にまともな事を言い出すから誰かに操られているのかと思った等と胸のうちで考えつつ、それぞれ受け取り楽々移動システムであっという間に亜空間収納からアイテムボックスへと移動を終えたのだった。



貴彦は趣味の人だ。

元々はもう少しもっと違う人格を有していた様な気もするが、ある意味弘樹以上に短期間で変わってしまったのが貴彦である。


元々は正義感もそれなりにあったが、今の貴彦は物作りの方が優先事項となっており、弘樹や小春ほどこちらの人間へ好意を抱いている訳でもないし、逆に杉本や桔梗たちのように利用したり虐げようとも思ってはいない。


町の錬金術師や薬師たちとは良く話すし、鍛冶屋や武器防具屋などへ出向きもする。

それぞれのギルドへ顔を出すこともあるし、何なら薬草摘みの子供に魔物避けのお守りをプレゼントした事もある。


時に素材のやり取りや意見交換、お互いの情報のやり取りなど、依頼などの合間合間ではあるものの八柱界の一般市民と交流がパーティ中最も多いのが貴彦だった。


そんな貴彦はラキ村やハクヨの町の事件解決後、彼なりの視点で調べたことがあった。


答えは簡単で亜空間収納が使えなくなった、祝福関係の魔法が使えなくなった等杉本が話していた情報が、自分の物作りにどれだけ影響を与えるのか?何をしたらそうなるのか?を知るためであった。


桔梗たちが神々の意向に逆らった際は全ての祝福を奪われ、神殿や冒険者ギルドからも追放されており、身分証明書の類いすらないので、まともな検問のない小さな村程度にしか出入り出来なくなっていた。


魔法も神々由来のものは使用出来なくなり、亜空間収納が使えないので溜め込んだ金銭や食料、武器なども手持ちの分しかなく、強奪行為を含めた自給自足をするしかなかったらしい。


普通に考えれば確かに祝福を奪う事は意味があったかも知れないが、彼等は元々八柱界の人間を、自分たちと同じ人間としては見ていなかった。


二人は加害者として見られがちだが、本人たちからすれば召喚の際に好き放題出来ると騙されて連れてこられた被害者意識が強かったように思う。


八柱界の人間である時点で、神々の側と認識していたのだろうとも思えた。


つまりは村人も町人も冒険者も神官も、自分たちを騙し拉致した側の存在なのだ。


そんな彼等の事だ。


無ければ奪えばいい。


短絡的な発想だが、その程度の流れへと行き着く事は十分に考えられたはずだと貴彦は思う。


自分ですら気付くのだから、神々とて気付かなかった訳ではないだろう。


しかし神々は最低限のことだけ行い、後は放置したのだ。

そして悪魔までもが関与し、村が一つ滅び、町も一時的に占拠され多数の被害者が生まれた。


やはりと貴彦は納得したものだ。


十六那たちに神々の派閥などと言われる以前から、彼はそれらをずっと見て感じ考えていたのだから。


市民との会話から人々が神々を無条件で敬っている異様さを感じる事があったからだ。


日本人が海外ドラマや洋画を見ていて今ひとつピンとこない部分、生活様式や文化の違いといえばそれまでだが、例えば宗教的、人種的な背景などが挙げられる。


貴彦はふと疑問に思いネットで調べてみたが、例えば米国でのアンケートでは、55%の人が天使に守られていると信じていると答え、デンマークでも4割以上の人が天使の存在を信じていると回答があったと言う情報を見たことがある。


多くの日本人は寺で葬式をあげ、初詣に神社へ行き、教会で結婚式をあげてもあまり気にもしない程に寛容ともいい加減とも言える人々が多い訳だが、海外においては真剣に一つの宗教を信じ信仰している人達が多い。


それは生活の中にも現れており、米国の大統領選挙が火曜日に行われるのもキリスト教が背景にあったり、地動説など科学がキリスト教の教えに反するとして学校へは通わずホームスクーリングにしている人達も多いと言われている。


またそこまで大きな話ではなくとも、国によりハイは頷きイイエは首を横に振るのが当たり前な国と、ハイが首を横にイイエが頷きとなる国すらあったり、褒め言葉が侮辱になる、ちょっとした仕草が禁忌となる、日本の某大人気アニメ映画の入浴シーンやテレビ番組の企画が児童虐待として批難される事もある。


アメリカである日本人の母親が、子供がぐっすり眠っているので短時間だけ家に置いて買い物へ出掛けたところ通報されて裁判所へと言う実例もある。


同じ事柄でも文化や環境、法律により人は全く違う言動、反応をするのだと貴彦は認識していた。


実際薬師関係で大怪我や重い病を患った人々すらも、滅多な事では神への恨み言一つ言わないのだ。


不幸にも子を奪われた両親が神を恨むなど洋画では有りがちだと思うのだが、嘆き悲しみはしても神託など明らかに実在をアピールしまくっている神々への文句を一つも言わない。


いくら文化が、そして世界が違うとは言え不自然だと思った。


まるでその昔に見た映画かアニメのような、そんな印象を強く持ったのはいつからか。


それらの作品は人に擬態して生きる人形だったり、別の生き物に乗っ取られた人間だったり、人の残滓であったり、アンドロイドだったり、亡者であったり。


作品によってその在り方は異なるが、一つ共通しているのは上位存在もしくはそれに扱いが近い何か別種に支配されており、彼等はそれに気付かない、否気付けないようにさらていると言う事だった。


だからこそ貴彦は適度な距離感を保ちつつ、必要以上に親しくなろうとはしなかった。


弟子であるシンシアはある意味特別枠だが、それとて弘樹たちに感じている仲間意識とは区別していた。


そしてそのシンシアを含む人々の結晶化や貴彦自身にも行われた意識の誘導を受け、その後十六那の話を聞いて、その点に関してはやはりと思うだけだった。


小六月としては神々と対立関係になったとしても、祝福の剥奪程度ならどうとでもなる。


弘樹と言う存在により空間転移や専用の恵那の泉など、タレントや〈新世界〉の恩恵により資源も食料も問題ない上に、何なら貴彦自身工房や鉱物の山々を中心とした大陸規模の隠世を持っている。


そして先程作ったアイテムボックスにより貴彦の優先事項としてはもっとも高い問題も解決した。


現在結晶化している人達やセラフィーナにとっては神々の加護を失うことは心理的、物理的、社会的にかなりの痛手ではあろうけれど、貴彦個人に出来る事などたかが知れている。


多分弘樹や小春、十六那たちは率先して事態の解決をすべく動くだろう。

貴彦は率先して助けようとは思っていないだけであり、仲間である小六月の面々がそう望むなら精一杯頑張ろうと思いつつ皆との会話に参加するのだった。



「お話中申し訳ありません。

一つよろしいでしょうか?」

と十六那に答えて以降黙って話を聞いていたソフィアが小さく挙手をした。

「ん?どうかしたか?」


と弘樹が問うと、


「皆様方のお話と現状に齟齬がございましたのでお伝えします。

結晶化は神域の屋敷へと運び込んだ人々だけではなくホテルへ宿泊している方々にも及んでおります。

貴彦様、小春様、セラフィーナ様による抵抗の光は辺りを照らし、ある種の波動を放ちましたので近隣に居た八柱界の方々も同じく結晶化しました。

なお転移者の方々も霊格が足らず結晶化した模様です」


ととても冷静な口調で告げた。


それを聞いた面々は一部を除きかなり塩っぱいものを食べたような顔になったのだった。

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