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ソウル・リファイン  作者: 弥生丸
チート炸裂編
74/96

説明回が続きます(^_^;)


「…いや、そんなはず…」

弘樹がうまく返せず押し黙った時、セラフィーナが口を挟んだ。


「待ってくれ!

言っている意味が分からないのだが?!

それにそれがミルラ達とどんな関わりがあると言うのだ?!」


仲間を助けたい一心のセラフィーナは、見ず知らずの魔神を名乗る少女のトンデモな推論に流石に我慢出来なくなったのだ。


セラフィーナは亜神や神託による声を聞いた事はあっても、神々そのものに出会った事はない。

弘樹個人で言えばヘカテーを始めアルテミス、エリーニュスたち、マブ、アマテラス、サラスヴァティなど八柱界における上位の神々と遭遇し会話すらしている。


しかし本来ならアルテミスが十六那に会いにラクヨの神殿へ訪れた際、神官であるエアリスが喜び浮かれた様に、神職にある者すら滅多な事では神々と出会い言葉を交わす事などないのだから、セラフィーナの理解が及ばないとしても、それは仕方のない事なのかも知れない。


面倒になったのか十六那はそれまで抑えていた神気を開放し、それに圧倒されるセラフィーナの瞳を見つめながら、

「それを今から話すのよ?」

とニコリともせずに伝えると、いつもの口調に戻って再び話し始めた。


「多分全ての最高神が望んでいる訳ではないわ。

例えば私も望んで居ない様に、現状を良としている者も数多く居るのは確認済みよ。

でも神々の一部は浄化、復権を望んでいる。 

しかし真の創造神が欠如した八柱界ではそれは不可能と判断した。

そして復権に関して手を貸している堕天使たちが居る。 

貴方だけではなく、他の可能性も探っては居たのでしょうけれど、現在の最有力候補が貴方である事に変わりはないわね。

さて、ここまでの推論がある程度正しいのだとすれば、固まってしまった彼らの事もある程度分かってくるわ」


十六那はセラフィーナへと視線を向けたまま、静かに語り続けた。


「八柱界は仮初の世界。

全てが神々が作り出した仮初の経験値、恵那で構成された世界。

ならばそこに住む人間はどうかしら?

その魂は本物なのかしら?」


十六那の言葉にセラフィーナはうぐっと胸元を抑える。

まるで禁忌を聞いてしまったかのようなその反応に十六那はゆっくり頷くと、

「それが本来八柱界、つまりセラフィーナ・ポムグラネイトさん、貴女の生まれ育った世界の人間の正しい反応よ。

手をご覧なさい?」

と命じた。


十六那に気圧され胸の痛みに耐えつつも、セラフィーナは己の両手を見て目を見開いた。

指先から手首にかけて、固まっていた人々と同じく氷のような水晶のような何かが薄っすらと覆っていたのだ。


「貴女の魂はほぼ本物なの。

だからその程度で済んでいるわ。

〈八柱界の人間〉でありながら、浄化の祝福を持つ事が出来た理由、それが〈転生者〉なのだから」


十六那の言葉に貴彦と小春がハッとした顔を向けた。


「それって…ボク達が裏切られたアレっ?!」

「もしや、セラフィーナさんは千尋ちゃんなのですかっ?!」


それぞれの問いに、

「そう、それ。

そっちは別ね」

と十六那はサラッと二人に答えた。


「転生による実験は一部の神々、多分あれこれ企んでいる連中が裏で行っていたようね。

成功例は彼女だけのようだけど。

ちなみにエアリスさんとシンシアさんが水乙女となったのも、そのままの〈八柱界の人間〉と言う器では浄化の力を与えられなかったのでしょうね」


と、あちこちから得た情報や推論を交えて十六那は説明を続けつつ、何かに覆われたセラフィーナの両手に触れると何事も無かったかのように結晶は消え去り息苦しさも失せた。


「よし、成功っと。

でね、こちらに来てあれこれ疑問が湧かなかったかしら?

いくら信心深くてもこれはおかしいと思える事とか。

戦争も起きず、別の宗教が興る様子もなく、神々の言うがままな人間たちに。

多少反発を覚える事はあっても、大多数がそれは仕方のない事だと当たり前と考えてしまう。

神々のなさる事だから、我々には考えもつかぬ大いなる視野でなさる事だからと。

それはつまりそうなる様に最初から作られているからよ。

そして今回彼等が固まった理由、それはまさにその仕組みそのものよ。

仮初の体に仮初の魂。

そこに最初からプログラミングされた防衛機能のようなもの。

それが山野弘樹と言う存在に対する〈あの人だから仕方ない〉〈そんなものだ〉と言うフィルターを目の前で破壊されたからこそ起きた現象ね。

私達も転移時に恵那で肉体を再構成された影響を受けてはいるけど、魂は本物な分抵抗が可能だったのでしょうね」


小春や貴彦、セラフィーナにはよく分かる話だった。

つい先程それに強く抵抗し、内なる〈誰か〉の助力を得て光を放ちその身と魂を守ったのだから。


「弘樹さん、あなた自身も自覚はないみたいね?

それともあえてこれはゲームの謎スキルやレアスキルみたいなものだと考えているのかしら?」

 

十六那はセラフィーナから弘樹へと視線を移し、再び瞳を覗き込む様にして語りかける。


「いや、そんな事を言われても…」


弘樹は思わず十六那から目を逸して口籠った。


十六那はヤレヤレとでも言うように話を続ける。


「ソフィアさんをご覧なさいな。

八柱界で言えば霊格10の統括管理女神。

これだけの広大な世界と新たなモンスターにその他の生命体、そして神たるソフィアを創造出来る存在が単なる高位な霊格なだけの人間な訳がないでしょう?

ソフィアさん、あなたも気付いていたわよね?」

静かに語る十六那にソフィアはふわりと笑顔を浮かべ、

「ええ、そうですね」とはっきりと答えた。


「サブマスターである望月十六那様、貴方様の質問に回答します。

マスターは特別、特殊である事を嫌う、もしくは恐れる傾向にあります。

理由はプライバシーに関わる案件ですので話せませんが、多分ご存知だと思われます。

その為幼少期から力を大幅にセーブし、力の行使が必要な場合には記憶を失わない程度に自分ではないと思える様な、仮想人格に近い別の性格を一時的に形成する傾向があります」


ソフィアの言葉に思い当たる所だらけの弘樹は冷や汗をかいていた。

子供の頃からそんな現象は何度も経験していたのだ。


そして十六那の話にしても、時折疑問に感じてはいたのだ。


この力は特殊過ぎ、強大に過ぎると。


だからこそ直視しないように、まるで〈誰か〉に対して自分は気付いていないアピールでもするかのように、何かにつけて別の事に意識を向け誤魔化していたのだ。


そこに追い打ちを掛けるようにソフィアが話し続けた。


まるで主の自覚を促すように。

まるで発言を禁じられる前に全てを語り終えようとしているかのように。


「〈新世界〉と八柱界はすでに別の世界です。

きっかけとして八柱界のタレントシステムが介在していますが、これは元々マスターの素質を開花させやすくした要因に過ぎません。

同列者や上位者、もしくは本人が特殊な封印や制約等を行わない限り、どちらかの世界でのみ霊格10を超えるなど有り得ません。

つまりマスターは本来どちらの世界においても八柱界の最高神である八柱の女神たちより格上の存在、〈真の創造神〉たるお方なのです」


そんな馬鹿なと言う思いもあったが、反面しっくりと来ている自分を弘樹は感じていた。


二柱の話を聞くうちに弘樹の中で何かが崩れて行くような、それでいて己の内側から何かが活性化されてゆくような、そんな不可思議な感覚を味わっていた。


「弘樹さん、自覚して頂戴。

私の推論が概ね正しいのなら、奴等の狙いは貴方自身。

その貴方が自らを縛っている限り、対抗手段がないわ。

貴方は八柱界のルールとは無縁に近い、スキルもレベルも関係ない、そんな存在のはずなのに〈たまたま色々あって下級神や亜神になってしまった人間〉であり続けるならば、その認識が奴等の力を容易く受け入れてしまう土台になってしまう。

創造神として、いいえ、山野弘樹としてではなく操り利用出来る駒として、縛られ使い潰されかねないのよ」


十六那の言っている意味を頭では理解出来ていた。

言われるまでもなく、頭の隅で感じ考えていた部分もある程度はあったのだから。


しかし42年の歳月の内その大半を自分を誤魔化し、問題を先延ばし、他者と距離を作る事で逃げ生きてきた彼にとっては、それらこそが当然であって抗う事はその有り様と異なっている。


それは「なんで俺だけ」と子供じみた反発すら覚えてしまう事だった。


聞きたくない話を続ける十六那に、彼女が正しいのだと理解しつつも耳を塞ぎたくなる。


でも、それじゃ駄目だ。


心の内で声が聞こえた気がした。

このままでは、その場しのぎで誰かを助ける事は出来ても、それは先送りに過ぎない。


他界した両親の、そして疎遠になって久しい兄と姉の顔が脳裏を過る。

亡くなってしまえば、直接謝り感謝の言葉を伝える事は出来ない。 

例え相手が生きていても、二度と会えなくなる事など異世界転移をしなくとも起こり得る事だった。


逃げるだけ逃げておいて、あの時ああすれば良かった、こうすれば良かったと悔いだけが残る。


地球ではそんな人生に近い日々を送っていたが、ここではきっと違う、変われるのだと、十六那や小春、貴彦と出会い語り合い触れ合って強くそう思っていたはずだった。


それだけではない。

冒険者ギルドで知り合い、色々と気付かせてくれた新米冒険のクリストフ、リンウッド、サム、そしてタニア。

その出会いのきっかけとなり、依頼を受けて亡くなった冒険者のノーマン。

王族や貴族、村の人々、ギルドの職員たちなど、決して深い付き合いではないが短期間のうちに知り合った人々。

旅の仲間や弟子として加わったエアリスやシンシア。

そして出会って間もないセラフィーナとその仲間達。


弘樹には偽物の魂がどの様な物なのか分からない。


しかし今回の結晶化を見てはっきりした事があった。


これはあってはならない事だと。


遊戯を楽しむ神々も、何かを企む神々も、そして信仰心を求める神々も、何れもが人を人として見ていないと言う事実がはっきりと理解出来た気がした。


元々最初から気になっていた事は多かったのだ。


例えば転移者の召喚。


どの様な理由があっても、望んで来た者以外の召喚などすべきではないし、やっている事は誘拐そのものだ。


また小春たちが関わった件も同様で、勝手な規定を自分たちで作り上げて契約させたり、パーティの一部と契約を交わす事でパーティ全体の人生すら縛り付けるなど詐欺そのものだと感じてはいた。


その上転生を、つまりは他者の死を転移の条件とした契約すらあるのだから、最初から神々を疑うべきだったのだ。


転移そのものも含めてあれこれ起こり過ぎ、なんちゃってRPGの様な設定や仕様、一部の神々の暴走や悪魔など様々な要因が絡み合い勘違いをしていたが、この思考をあやふやにする事すらも転移の際の恵那からの変換時に刷り込まれた可能性もあるのでは?と疑わしく思えてくる。


冷静に考えればおかしな事だらけだった。


八柱界の人々の扱い…例えばラクヨなどあのままの状況であれば壊滅し数千数万の人々が亡くなった可能性すらあったはずだ。


また杉本や桔梗の起こした事件すら、神々ならばもっと良いやりようはあったはずだが、結局は村人や冒険者など多数の死者が出ている。


PK禁止フィールドすら作れると千尋の中の人は言っていたが、それが事実なら何故神々はそれをしなかったのか?


「ここはギリシャ神話も真っ青な突っ込みどころ満載な世界なのよ」

自嘲気味な笑みすら浮かべた十六那は、

「気付いていたかしら?

恵那の泉で夢幻が貴方に飲ませようとした蜂蜜酒を。

あれは本来彼女の権能を分け与える物なのだけれど、逆に言えばあれを飲んでいたら貴方は今頃彼女の眷属になっていた所だったのよ?」

と何かを含んだ様な目で弘樹を見つめた。


十六那の視線を正面から受け止めた弘樹の脳裏に、恵那の泉で出会った女神マブの姿が過ぎった。


少し興味を抱いたから、そう言ってあの場に現れた夢幻を司る女神。

彼女もまた、〈新世界〉のきっかけになってはいなかったか?

マブは去り際、「妾は役目を終えた故」と語っては居なかったか?


つまりは役目を与える存在ないし団体が存在していると言う事だろう。


そして十六那の言葉が事実ならば、あわよくば役目を全うしつつその上前をピンハネしようとしていたと言う事だ。


「本当にろくでもない所だな…

あの時は助けてくれてありがとう」

十六那に礼を言いつつも、弘樹は乾いた笑いを浮かべて静かに皆の顔を見回した。


転生と言う形で八柱界の人間となったセラフィーナ。

神々の企みにより、結果的に召喚された小春と貴彦。

色々と謎な女神の化身十六那。

自分が生み出した女神ソフィア。


十六那とソフィアに関しては色々と分からない事だらけだが、他の面々は自分も含めて神々の被害者とも言えた。


本当に何故、俺はそんな簡単な事に気付かなかったのだろう? 


精神誘導のような物もあったのかも知れないが、多分それはいつもの逃げ癖をほんの少しだけ強くした程度の、そんな稚拙かつ狡猾なものだったのではないかと弘樹は感じていた。 


弘樹がそんな事を一人であれこれ考えていると、

「あの、十六那さんは、いいえ、ヘカテー様はこちらの神々とは別と考えて良いんですよね?」


と小春が何やら遠慮がちに訪ねていた。


「十六那でいいわ。

今の私はヘカテーを内包した存在として、望月十六那としてここにいるから。

で神々関係だけどそもそもこっちに来る気すらなかったのよ?

弘樹さんと、いいえ違うわね。

彼の母親の四季さんと叔母の春夏さんが知り合いでね、その関係でちょっとだけ力を貸そうと思ったら巻き込まれただけだしね。

だからぶっちゃけ帰りたい気もするけれど、どうせなら最後まで貴方たちの味方であろうと思うわ。

多分彼女たちもそうするだろうし」

その言葉に小春のみならず貴彦やセラフィーナすら安堵の表情を浮かべていた。


「えっ?!」

ただ一人、弘樹だけ十六那が母と叔母の知り合いであると聞かされ、呆然とする。


弘樹が考えていた十六那の謎は簡単に解けたのだった。

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