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ソウル・リファイン  作者: 弥生丸
チート炸裂編
61/96

全長500m

全長500m


弘樹たちの目の前には、全長500m強、全幅約70m、収容可能客数6000人以上(従業員等スタッフは除く)の規模のビルのような巨大豪華客船が海に浮いていた。


すでに地球世界の豪華客船よりも大きなその船は、精霊の管理によりクルーの住居スペースも必要とせず、付与された亜空間収納によって大量の物資や貨物類を保存するスペースすら必要がない為、客室はそれぞれがとても広く作られている。


水上バイクやクルーザー、モーターボートなども船に付与された亜空間内に収納されていた。


動力系統などは全て付与や魔石など魔法的な力によって解決されており、見た目は現代地球世界の技術の結晶のようでありつつ、実は高度な魔法や奇跡によって形作られているのだった。


ソフィアが弘樹たちの意見を聞き、記憶にあるネットやニュース、体験動画などで見た情報を頼りに一部修正を加え、オリハルコンやヒヒイロカネ、ミスリル、アダマンタイトに神銀、各種竜銀など、希少金属を惜しげもなく作られた船体。


特別な技術もないままイメージ主体で作られた希少かつ特殊な金属の塊は、魔法の付与により水に沈む事はなく、船内も地球世界屈指の豪華さに溢れていた。


多数の植物が植えられた公園やプール、弘樹や小春の為の訓練施設まで作られており、レストランやジム、医療施設にコンビニからドラッグストア、服や宝飾まで様々な店舗が入っている。


勿論商品の数々は記憶や情報から再現されたものであり、スタッフなしでも在庫管理や調理、棚への陳列までも行われ、金銭を支払う必要もなく全ては小六月の面々のために機能していた。


そもそもが【新世界】そのものが弘樹個人の物であり、そこに生えた豪華客船やその内部の品々など、ソフィアに言わせれば「マスターの脛毛一本にも満たない存在」なのだそうだが。


景色を楽しめる巨大な浴場などもあり、至れり尽くせりとはこの事かと思える物だった。


それに加えて弘樹の創造による手が加えられ、重力魔力による浮遊や飛行機能、結界や障壁、その他諸々の魔改造がいたるところに施されていた。


そもそもがクルーザークラスの船移動であっても、都度【新世界】へ入れば済むことなのでは?と皆何となく気付いてはいたが、そこは目を瞑って楽しむ事にしたのだった。


「マスター、皆様方、船の精霊が覚醒しました。どうぞ船内へおいで下さい」

ソフィアに導かれ一同は操船室、とはいえ地球の一般的なそれとはかなり異なる、SF映画やアニメで見掛ける大型宇宙船のような作りとなっている部屋へ案内された。


部屋の真ん中には精霊用の物と思われる円形のテーブルにも似た装置が置かれ、それを囲むようにあちこちにパネルやらモニター類と席が配置されている。


そもそも操船の類は精霊が行うので、誰かしらがモニター席に居ないといけない状況などありはしないのだが。


その真ん中のテーブルの上に、ふわふわと浮かぶ青年の姿があった。

青い髪に青い瞳の青年は、いつぞや見掛けた王子様の模倣品とは似ても似つかぬ正統派王子様にも見える、そんなイケメン青年だった。


「彼がこの船に宿った精霊です。誕生したばかりではありますが、私の記憶や知識を一部コピーしてありますので、会話や制御に関しては何ら問題ないかと思われます」

サラッと何か凄い事をしたようだったが、【新世界】の筆頭女神ならば余裕で出来る事なのだろうと皆納得する事にした。


「名前は船同様ありません。どうなさいますか?」


ソフィアの問に弘樹は、「日本の船は何とか丸って着くのが多いイメージがあるんだよな。

漁船がメインなのかもしれんけど。

海も天空も陸もいけちゃうから、三界丸でいっか」

とかなり適当な感じで命名した。


ソフィアを除く面々はかなり渋い顔をしたが名付けられた精霊は瞳をキラキラとさせ、

「三界丸、素晴らしい名をありがとうございます」

礼を述べつつ恭しく頭を下げ、一瞬強い光を放った。

名前が登録されたのだろう。

創造神たる弘樹に名を与えられた事により、格も増したように感じられた。


「誠心誠意お役目を務めさせていただきますので、よろしくお願い致します」


「え?船だけの名前じゃなかったの?!」

どうやら個別に付けるつもりだったらしい弘樹が驚くが時既に遅く、精霊の名も三界丸となっていたのだった。


「第三か第四大陸に行きたい訳だけど、どちらが近いのかわからんよね?」

現地人のシンシアとエアリスに問うと、二人共に第四大陸が近いはずですという答えが帰ってきた。


何でも第三大陸は色々理不尽な大陸らしく、近かったり遠かったりするらしい。


「それじゃ第一目標第四大陸って事で出発しようか?!」

「「「「はい!」」」」


弘樹たちは一旦ニチボの港付近へ移動し、そこから魔石を動力としたモーターボートを亜空間から取り出し海上へと出た。

ある程度深度のあるエリアまで海を進み、念動力でモーターボートを十メートルほど浮かばせ、【新世界】から三界丸を召喚した。


多少の波が立ったものの、予想よりも柔らかに海上へと現れた三界丸へ一行は乗り移り、モーターボートを亜空間へ再び収納した。

道標の水晶球を取り出し第四大陸をイメージすると、第一大陸から見て北西に淡い水色の炎が矢印となって表示された。


「三界丸、北西だ。

この水晶球の中にある炎を頼りに進んでくれ」

「かしこまりました」


弘樹の指示に美青年は恭しく頷き、船を操り始める。


ソナーや透視、遠隔感知などの術式も船体には組み込まれており、深度や他の船の航路なども感知しつつ移動を開始した。


船というともっと揺れるイメージがあったが、あれこれ特殊な能力を付与した影響か、それとも元々豪華客船その物が安定しているからなのか、海の上であることを忘れそうな程の快適な状態だった。


一時間ほど海上をスイスイと進み、あっという間に第一大陸が小さくなって行った。


謎機能を付与し過ぎて、地球世界の豪華客船よりはるかに早いのかも?と気付いた時には既に大陸が見えなくなっていた。


なお、三界丸は弘樹お得意の空間使いも活用し、亜空間潜航も可能となっていた。


やり過ぎである。


昔見たアニメには一時期この手の機能が付いた宇宙船が多かったそうで、どうしても取り入れたかったのだった。


と、唐突に三界丸は速度を落とし、船内に警告音を響かせた。


「魔物の襲撃です。その数10体」

青年の声が船内に響き、弘樹たちは船首付近の甲板に飛び出した。


とは言え一番低い甲板まで海面から20メートルほどあり、その他ブールや公園のあるエリアに至っては海面から50メートル前後ある。

低い位置にある船室の窓やバルコニーに取り着かれる可能性もあるが、見えざる障壁がそれを阻んでいた。


「そう言えば戦闘の事忘れてたな。

甲板の高さや結界、障壁で魔物が上がって来れないじゃんね?」


今更気付く弘樹だった。


仕方なく最近取得した水神たちの加護を利用する事にした。

マップを頼りに対象を絞り、自分たちと魔物に力を開放する。


霊格の向上した小六月の面々は数十メートルの高さを物ともせず、ふわりと海面に降り立った。


水神たちの加護により、地面同様に水面を歩行する事も、水に潜む存在を水上に引きずり出す事も可能となっていたのだ。


抵抗しきれず飛び出してきた十体の魔物は、全て上半身は裸体の少女や女性であったが、下半身は多数の犬であったり、タコの足であったりと、その姿は様々だった。


「スキュラだな。

伝承では下半身が六つの犬になってるけど、後世のゲームやアニメの何かでは、タコやら他の動物やら、色んな形態に変わってしまったらしい」


弘樹がそう解説しつつ、敏捷顕現値3500と言う速度を活かし、次々と犬やら乙女の頭や体を神宝の銅剣疾風怒濤で切り裂いてゆく。


小春も負けじと水上を駆け、疾風迅雷を振るった。


エアリスは魔法を放ち、シンシアは高まったレベルと霊格により過去有り得ぬ程の速度で矢を射った。


貴彦は元々あった水使いに水神たちの加護が上乗せされた影響か、氷や冷気の魔法を用いてスキュラの下半身を凍らせたり、氷の槍を射掛けていた。


あっという間に十体居たスキュラたちは全滅し、魔石が海の上にコロリと転がった。

水神たちの加護様々であった。


魔石やドロップ品を回収した一行は、再び船の上にいた。

船が巨大すぎて戦い難いと言う、何ともアホな展開に全員で頭を突き合わせ、あれこれ意見が出る。


「もう面倒だし、俺の念動力かテレポートの応用でアポーツ辺り使って魔物を甲板に上げちゃおうか?

巨体の魔物はさっき同様海上で戦う方が良いかも知れんけど」


これが一番まともな作戦であり、他はロープで三界丸に括り付けた筏に何人か交代で乗る、船を一部改造してバトルフィールドを作るなどあれこれ微妙な意見が出た程度だった。

なお皆三界丸以外での移動は全く考えていないらしかった。


「そうですね。

野外訓練場として広いスペースも造ってありますし、ヘリもないのにヘリポートはありますから、そこも使えると思いますよ」

貴彦の言葉に皆一応の納得を見せ、解散となった。

なお霊格が向上し人でありつつ水乙女ともなった二人に貴彦があれこれ新装備を与えたりもしていた。


「そう言えば私達は亜神になって得られるタレントやスキルが増えましたけど、お二人は半分水乙女になったことですし、何か取得可能な物が増えたりしていないのですか?」

小春の問に二人は小首を傾げてステータスウィンドウを開き、あれこれ調べ出した。


「癒やしや補助、水や冷気に関する魔法や異能は増えています。

あ、あと天女の羽衣と言うタレントもあります。

羽衣状のオーラを纏って飛べるらしいです」

エアリスの言葉にシンシアがウンウンと頷いた。


「水使いと氷使いは取得した方が良さそうですわね。

加護と重なる部分もありますけど、水に関わる力はかなり優遇されるようですの。

あぁ、氷の弓矢や氷の剣とか格好良さそう」

そう言いつつ二人はいくつかのタレントやスキルを上げていった。

氷使いと水使い、それに天女の羽衣などは特性故に恵那の泉を使用せずとも10まで上げることが可能だったらしい。

「あら?!

天女の羽衣を10レベルまで上げてみたのですが、飛行速度の上昇に加えてそれに耐えうる風などへの耐性も上がった上に攻撃にも使えるようになりましたよ?!」


時々中華系ファンタジーで見掛ける羽衣を巻き付けたり、殴ったりと言う特殊戦闘も可能となったらしい。


「オーラの羽衣なんですよね?

それなら操気や闘気戦闘辺りを覚えると使い勝手が良いかも知れないですね」

シンシアは師である貴彦の助言に早速低レベルだがそれらを取得していた。


そんなこんなで時間を潰していると、再び船内放送で警告が発せられた。


勿論小六月の面々もマップを表示したままにしており、チラチラと見てはいるのだが、何か別のことに集中していると、敵の存在に気付きにくい事も多かった。


また三界丸に付与された索敵能力の範囲もかなりの物である為、されも影響しているのかもしれなかった。


「今回の魔物は巨大です。

その数5体。

前方甲板にて確認して下さい」

三界丸の声に反応して小六月の面々は海面から高さ20メートル前後の甲板へと向かった。


「あー、クラーケンだね?

ほら、伝承通り巨大なタコに巨大なイカ、クラゲもか。

小島に見えるのは大きな蟹かな?

それと映画なんかで良く出てくる海竜タイプのもいるね」


弘樹は魔物知識を満遍なく発揮していた。


船の半分ほどのサイズのタコやイカ、クラゲに、船と同サイズの海竜、そして数倍の大きさの蟹、その全てがクラーケンであるらしかった。


「というか、海の魔物って同種でパーティを組んで襲撃してくるもんなのか?」


弘樹の単純な疑問に、誰も答えを持ち合わせては居なかったのだった。

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