表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウル・リファイン  作者: 弥生丸
第一大陸編
51/96

王家の迷宮

王家の迷宮


弘樹は避難町とラクヨにそれぞれゲートを作って設置した。


避難町からラクヨへの一方通行である事、一週間で機能を停止し消えてしまう事などをその場にいた面々や誘導を担当する者たちに説明する。

その中にはナイジェル及びその部下三十名も加わっていた。


第一印象はあまり良くなかったが、そんなに悪い人ではなかったようで、部下と共に一生懸命働いている姿を見て見方を少し改める事にした。


彼の立場から考えてみれば、王国の姫君や公爵が関わっているのだから、王命とは別に慎重にもなるだろうと思えた。


ダンジョンの影響かやや大きめの鳥居を作ってしまったが、期間限定で一週間もすれば消えてしまう物なので気にするのはやめた。


最低限の安全装置として幾つか制限や遠隔でも感知できる警報などを掛けたりしたが、誘導担当者たちにきっちり説明をしたので多分平気だろうと思う。


先日の神託の影響か、住民たちは弘樹たちに従いいそいそとラクヨへ戻って行く。

ラクヨには現在ヘカテーの眷属たちが護衛している事を住民や説明してあるので、きっと騒ぎにはならないだろう。


一週間と期限を区切っておいたのだが、こちらでの生活は数日のみであり、荷物もそんなに持ち出せなかった事もあって一晩で住民の八割はラクヨへと戻って行った。


「一部の住民はここでの生活が良いと残る可能性もありましたが、希望した者は成人した次男三男や、同じく成人した娘たち十八名のみでしたわ」


領主であるシンシアが部下たちからの報告を受け、弘樹へと伝える。


「どちらにしても作り直す為に街を空する必要があるから、丁度よいかも知れないですね」

あっという間に閑散とした町を見つめ、次に賑わうのはいつになるのだろう?と思いつつシンシアから渡された町の再構築に関する資料と現状を照らし合わせる。


防壁や一部の集合住宅、泉や井戸、畑は残しつつ、建物の大半は戸建てに変える予定だ。


他に役所や病院、神殿、冒険者ギルドに農業ギルドなど幾つか新設する必要もある。


王都から近いとは言え、シンシアの屋敷も必要だろうし、代官を置くならその屋敷も用意した方が良いだろう。


二日後、結局残る事を決めた十八名と王都や領地へ戻るジェラルドたちを残し、冒険者や転移者も皆ラクヨへと戻ってしまった。

なおエアリスは小六月担当神官と任命されたそうで、今後の旅へも同行する事になった。


あれこれ面倒なのでパーティーにも加え、隠世のサブマスターとしても登録してしまったが、霊格3、レベルも100に満たないのでパワーレベリングの必要があるかも知れないと、小春、貴彦と話したりもした。


マップや超感覚を駆使して町が空になったのを確かめた後、弘樹は再び空間使いや夢幻魔法、魔神魔法、創造を組み合わせて発動させる。

レベルや霊格が向上した為か、以前町を作った時よりもすんなりと町を作り変える事が出来た。


「よし、出来た!あとは何か不都合がないか町中を確認するだけだな」

弘樹の声に他の面々が確認へと走る。

感覚的には問題ないはずだが、地球世界の常識に未だ縛られている面が強いため、オーバーテクノロジー的な何かをやらかす可能性を考慮しての確認作業だった。


とは言え家屋数もかなり多く、大まかな確認作業でもそこそこ時間が必要となった。


ナイジェルやその部下たちは弘樹の創造を見て、尊敬と畏怖の眼差しを向けつつ確認作業を手伝ってくれた。


ジェラルドとシンシアは合間合間に王都へと戻り、弘樹たちとのお茶会と言う名の謁見を調整していた。


なおシンシアの領地内に限らずジェラルドの領地の民も避難町ならぬヤマノの町…知らぬ間に決められていた、へと移住を募る事になっており、ほぼ壊滅状態となったラキ村の数少ない生存者たちもこの町へと移住する事が決まった。


「神殿と冒険者ギルドはほぼ人選も終わったとのことです。大半は王都からの人選なので、こちらの準備が整い次第向うとの事でした」

「今は人が殆ど居なくてかなり寂れて見えるけど、きっとすぐに活気づくんだろうな」


エアリスからそんな報告を受けつつ、弘樹は閑散とした町を見つめる。

人の手が入らなくなった家が死んだように見えるのにも似て、真新しいはずの町が長年放置されたゴーストタウンのようにも思えてくるから不思議だ。


「開拓も建設の必要なく、これだけの受け皿がある町ですもの。

すぐに人は集まりますよ。

それに土や水が良いのか、畑もかなり育ちが良いそうですし」

もしかしから隠世を素体イメージにした創造の副産物かも知れないが、緑の手などの異能がある世界なので大した問題にはならないらしく、残った数少ない住民たちはすでにある畑の手入れや新しい畑作りにせいを出していた。

「水も豊富ですから田んぼも作れそうですね」

エアリスのさり気ない言葉にスキル農業知識も取得していた事を思い出し、あれこれ精査してみると、創造でそれなりの物が作れることが判明した。

「米の田んぼと小麦大麦の畑も作っておこうか」

空いている草原に意識を向け、人間やその他の動物などが居ないかを確かめる。


魔物はともかくとして、植物や昆虫、数種の鳥やトカゲやネズミ、そして微生物は存在するようなので、勢いでゲートを開き自分の隠世の屋敷があるのとは別の、気候がこの地に近い大陸を選択して送り込む事にした。


ソフィアにはテレパシーと空間使いを併用してその旨を伝え、大繁殖は避けたいが植物だけなのも味気ないので少しずつ生命体を増やして行くつもりだと説明する。


「かしこまりました。

ゲストではなくあくまでも自然の一環に取り込む初期段階の一つと言うことで対応させていただきます。

仮称実験大陸Aと名付け、鳥や卵や種子、胞子やウイルス、細菌などの微生物も外部には出ないよう結界を敷かせていただきました。

どうぞ送りこんで下さい」

ソフィアに導かれて辺りの生物を土内の微生物やミミズなど一部を残して根こそぎ隠世へ転移させ、空いた空間に米の田んぼと小麦大麦の畑を防御壁ごと創造する。


穀物の大半はすでにこちらの世界でも品種改良が進んでいる為、こちらの世界でも美味しいと評判の物を選択して創造したのだが、かなり広範囲に作ってしまった。


隠世にも作ってみるかな?と内心思いつつも、事後承諾ながらシンシア姫に田畑を新たに作った事を伝え、お付の人々と共に確認へと向かわせた。


「弘樹様、ただでさえ未だ人口が少ない町ですのにこれだけの田畑は…あぁいえ、でもきっと大丈夫ですわね。

王都へ出稼ぎに来る民はそれなりにおりますが、親族や知人に保証人のコネがないと二束三文で使い捨て扱いになる事もありますの。

ですがそのような状態の者たちを季節限定などであっても正規の形で雇い入れれば、そこかしこで起きている問題もある程度解決しそうですわよね?

資金面でもこれだけの高品質な米や麦類、野菜に果物、それに薬草の数々もありますからちゃんと収穫さえ出来れば高値で売却可能ですし。

あぁ、雇った者たちの中から町への移住希望者を募っても良いのですし、素敵すぎますわね?!

弘樹様、グッジョブでしてよ?!」


弘樹たちが亜神であり下級神扱いと神託があってから、シンシアやジェラルドは上位者として小六月の面々を扱う様になっていた。


そしてなんだがテンションがやたら高かった。


お付の者たちにあれこれと仕事を割り振り各方面へと向かわせ、メイドと護衛の女騎士、そしてシンシア姫の三人だけが弘樹の元へ残った。


「そう言えば弘樹様、エアリス殿をパーティーに加えてパワーレベリングなるものをなさるとか?」


目をキラキラさせながら訪ねてくる姫に少し引きながらも、

「その予定なんだけど、良い候補地が中々見つからなくてね」

と言外にいつになるか分からないよー?予定は未定だよー?とアピールするが、どうやらそれは逆効果だったようだ。


「それでしたらお勧めのダンジョンがありますの!

王家の血筋の者が同行しないと起動しないレアダンジョンですけれど、恵那も豊富に得られるそうなのですわ!」

神々はなんでそんなもん作ってんだよ?!と八柱界に来てから何度目になるか分からない突っ込みを心の中で入れつつ、「なんかそれは凄そうだね」と答えると、

「えぇ、兄たちや姉はすでに何度か挑戦したのですが、私未だ立ち入った事もございませんの。

そこでですわっ!是非弘樹様たち小六月の皆様と共に攻略したいと思いましたの!」

挑戦じゃなく攻略なのかい?!

と言うか何故王家の人間が魔物と戦うのが前提なダンジョンに?と思うが、その辺は女騎士が説明してくれた。


「地球世界ではあり得ないそうですが、こちらでは上に立つお方ほど、男女の区別なく戦う能力がある事を求められます。

一般市民ならばいざ知らず、王家や貴族社会では霊格の向上やレベルは評価に大きな影響を与えるのです。

体の弱い方が無理をなさる事は流石にありませんが、原則として武器や魔法を使えなければ一人前とは認められません。

ジェラルド様と奥方様であらせられるシャーナ様も、同じパーティーとして王家の迷宮へと挑まれ結ばれたと聞き及んでおります。

皇太子様や第二王子、第一王女様もそれぞれパーティーを組まれ、何度も挑戦しておいでです」


ヒズルク王国は戦闘民族だったようだ。


確かに戦争らしい戦争は無くとも、魔物が跋扈し神々の都合で突然魔物の出没エリアすらガラッと変わる事があるのだ。

自らの身を守り、民を守る事が出来なければならないと考えるのは当然の成り行きなのかも知れないが。


特にこの世界はタレントや魔法、異能や単純に霊格、レベルによっても、性差がひっくり返る勢いで戦闘能力が変化するのだから仕方がない。


「いや、しかし、急に姫様をダンジョンへなどとは…」しどろもどろになる弘樹だったが、そこへ小春が現れた。


「風に運ばれてきた声で何となく内容は分かりました!

王家の迷宮、面白そうです!行きましょう!」

ビシッ!と弘樹に指を突きつけ、それを聞いたシンシア姫は「きゃ〜!嬉しいですわ!」と喜びの雄叫びを上げる。


いや、断るつもりだったんですけど?

そう思うが時既に遅く、「早速手配いたしますわ!」と姫はメイドと女騎士を連れて何処かへ去ってしまった。


「いや、まぁいいんだけどさ?」

弘樹は呆れたように小春を見る。

彼女はニッコリ微笑むと、

「シンシアさんは多分弘樹さんとダンジョンに行きたいのですよ。

それに普通の人たちだけでは入れないのですよ?

見ず知らずの王家の血筋の人と組むより遥かに良いと思うのです」


どうやら王家の迷宮に行くのが最大の理由であり、シンシアは知らないよりマシという扱いらしい。

「それに、彼女に剣術を教えこむ事で私は弘樹さんのみならず、お姫様の師匠にもなれるのです!

ウフフ」

別の目的もちゃんとあったようで、どうやら師匠熱は冷めていないようだった。


それから数日を町で過ごし、人の出入りもありつつある程度落ち着いた頃、弘樹たち小六月の面々は、ジェラルドとシンシアに連れられて、王城へと向かうことになった。

なお王都神殿も彼らの再びの来訪を求めているとエアリスに言われたが、面倒そうなので断った。

泉を使う必要もなくなった今となっては、神々関係で何かを押し付けられそうで足を向けたくなかったからだ。


王都まではテレポートで向かい、その後門の外で待機していたシンシアの馬車に一行は乗って城へと向かう。


後続にはジェラルドの馬車もあり、護衛の騎馬なども入れるとそれなりに物々しい行列となってしまった気がした。


城はイメージ通りそれなりに豪華ではあるものの、嫌味な程にお金を掛けた感はなく、高級だけど敷居はそれほど高くない、そんな印象を受ける作りになっていた。


応接室に隣接されたバルコニーへと招かれ、小六月の面々とシンシア、そしてジェラルドは案内された席に座る。


この手の事に耐性のない小六月の面々はかなり緊張しており、カチカチになっていたが、

「下級神と同列となられた皆様方は王以上の存在ですわ。

緊張するのは王である父の方でしてよ?」

とシンシアにとんでもない事を言われ、余計に緊張する面々だった。


ほぼ待たされる事もなくジェラルドとどことなく似た50前後の白人男性と、シンシア何となく似ている40歳前後の白人女性、そしてもう一名、何処かで見たことのあるような気がする30代半ばの白人女性がテーブルを囲み、お茶会がスタートした。


「初めてお目にかかります。私がこの国、ヒズルク王国の国王アレクシス・ヒズルクと申します」

まずは国王が席を立って名乗り、深々と頭を下げた。

ついで40前後の女性が

「王の第一王妃ステラと申します。以後お見知りおきくださいませ」

と席を立って優雅に礼をする。

その後見覚えがある女性がスッと立ち上がり、

「第二王妃のクリスティアーナと申します。どうぞよしなにお付き合い頂けると幸いです」

とやや優雅さには欠けるが、ピンと背筋の伸びた礼をする。


クリスティアーナ?あれ?

何処かで見覚えがあったのは彼女ではなかった。

そう、あれは15〜6歳の少年だったはず。


「あぁっ?!!!そうか、クリストフ?!」

弘樹は思わず立ち上がり、クリスティアーナを指さして叫んでいた。


小春と貴彦がお茶を吹き出しそうになり、エアリスが顔面蒼白になる。

この国でも最も位の高い女性を指差して叫ぶなどあり得ない事だったからだ。


しかし国王と第一王妃は朗らかに笑い、ジェラルドとシンシアはしてやったりといった顔をする。

指を指された第二王妃もにっこりと微笑むと、

「息子のクリストファーがお世話になっております」

と再び深々と頭を下げたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ