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ソウル・リファイン  作者: 弥生丸
第一大陸編
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はい、マスター

はい、マスター



貴彦と小春も神殿へと呼び出し、この世界の精霊であると名乗る少女へ会わせた。

「うわー、またやったんですね?」

「生命創造まで行くのはちょっと…」

小春と貴彦に冷たい目で見つめられつつ、弘樹は結構凹んでいた。


そこへ助け舟として精霊が語りだす。


「生命の創造ではございません。

ご安心下さい。

万物には精霊が宿る。

万物には神宿る。

そんな話を聞いた事はございませんか?

私はこの世界に宿った極自然な存在なのです。

森に木々や草花があるように、私はここにある、ただそれだけなのです」


隠世そのものが不自然と言えば不自然なのだが、確かに聞いた事がある話だった。


八百万の神と言われるほどに神々が溢れる国日本。

その感覚からすると何となく理解可能なものではあった。


「貴彦様の隠世にも、私同様精霊は存在しているのです。

ただ貴彦様はマスターほどの霊格や隠世のレベルに至っていない為、その姿をまだ現してはいないだけです」


「なんだって?!」

貴彦は最近泉に入った際にレベル10まで隠世を上げたようで、大陸規模の異空間を持っている。


しかしまだ人の限界を超えておらず、亜神にも近い存在とはギリギリなり得ていない為に姿を現す事が出来ないらしい。


「そして私が顕現した理由ですが、それはマスターが意思の通じる管理者の存在、それもゴーレムや人工精霊などではない、人の手から生み出された訳ではない存在を求めていらしたからです」


つまり寝る前にぼんやり思いついたら、世界が勝手に反応してこうしちゃったということだったが、案外これはいけるのかもしれないと弘樹は思った。


「私は一時的に可視状態となっておりますが、本来はこの世界そのものであり、そしてその一部でもあります。

ですからSF映画のコンピュータのようにこの世界内なら姿が無くとも会話が出来ますし、この世界の事でしたらあれこれ調整する事も可能です」

弘樹の知識、というよりイメージに引っ張られているのか、こちらにはないはずのコンピュータ等発言があったが気にしない事にする。


「まさに世界の精霊で管理者そのものなんですね。

なんかかっこいいです!」

小春は既に受け入れたようだった。


「僕の、僕の世界にも精霊がっ?!」

なんか違う方向で混乱している貴彦は放置して、弘樹の希望を話してみる事にした。


「実は色々困っているんだ。

例えばちょっと思いついただけで世界が反応してしまったり、地球世界の物が知らぬ間に増えていたり。

街もどんどん作られているけど、人が住んでいる訳でもないし。

あぁ、人間や住む何かを作り出して欲しい訳じゃないんだけど、ちょっとやり過ぎと言うか。

俺の思考を感知して動いているようだけど、人間ってあれこれ不要な事や思い付きで後々やめとこうって事もあるから、何か特別な場合を除けば、ある程度言語化されたりして初めて機能するようにしたかったんだ。

それに色々知りたい事もあるしね」


その言葉に少女姿の精霊は納得してくれたようだった。


「つまり原則対話によって承認を得た場合のみ創世を行い、後は放置しろと?」

「いや、埃が溜まらないとか、俺達が汚さなければ基本的に綺麗なままというのは凄く助かっているんだ。

植えた植物もかなり急激に育ったけど、無理矢理成長させた様子もないし、木の実も実ったまま変化がない。

大根も抜いて保存する必要もなくいつでも採れたてだし。

これは君が俺達の事を思って調整や管理をしてくれているからだろう?

ありがとう」

弘樹にお礼を言われて赤面した精霊は、その顔を伏せて「いえ、それが私の役目ですから」と呟く。


「うん、それでもありがとう。

そしてこれからもよろしくお願いします。

それとね、ここは基本的に特別な場合を除いて俺と小春、貴彦と小六、それに今は別行動をしているけれど、十六那さんの家として欲しいと思って取得したんだ。

だからマスターは俺だけじゃないく、彼らの意思もそれなりに反映させて欲しいんだ」


弘樹の言葉を受けて精霊は頷き、「ではサブマスターとして小春様、貴彦様、十六那様を登録致します。

小六殿は小春様の従魔ですのでそれらの権限は付与出来ませんが、客人として扱う事に致します」とテキパキと何かをしつつ答える。


「それで最初のマスター命令なんだけど、いいかな?」

弘樹は何やらはにかみつつ精霊へ問うた。

「はい、マスター。

どうぞご命令下さい」


精霊は深々と頭を下げ、弘樹の命を待つ。


「では最初の命令だ。君に名前を与える。

君の名前はソフィアだ。

英知って意味があるらしい」


弘樹の言葉にはっと顔を上げた精霊、ソフィアは一瞬淡い光に包まれると、「ソフィア、私の名前…」と小さく呟いた。


「ソフィアさん、これからよろしくです!」


「良い名前だね。ソフィアさん、よろしくお願いします」


「わんわん!」


小春と貴彦、それと小六にも名を呼ばれソフィアは幸せそうに微笑むのだった。


「まず町中の建物だけどしばらくは作らなくていいよ。

あの時は避難者が多かったからあるといいなと思っただけだからね。

それと家電や家具の創造は屋敷とホテル、旅館など限定にして、一般家屋なんかには作らなくていい。

タオルや毛布、シーツなども必要最低限でいいかな。

その辺は俺のイメージする量で頼む。

それと山や神殿、ゲート用施設なんかもそうだけど、次からは承認制にして欲しい。

思いつくたび増えると心臓に悪いからね」

弘樹の希望に「畏まりました」とソフィアは礼をする。


「それと質問なんだけど、ソフィアはこの俺の【世界】以外の事も知っているのかい?

ほら、さっき神々に祈っていただろ?」


「そうですね、私はこの【世界】に宿った精霊です。

反面神々が作った世界、【八柱界】の仕組みから生まれた者でもあります。

ですから【八柱界】の意思ある精霊が知る基本的な事は私にも分かります」


弘樹の問いに答えるソフィアだったが、聞き慣れない言葉が出てきた。


「八柱界って、もしかしてこちら側とかこっちの世界って呼んでる神々の創造し続けている世界のこと?」


小春の問いにソフィアは頷く。


「人々はそう認識していないようですが、神々や精霊、神使たちはこの世界をそう呼んでいます。

特に神々は地球世界との行き来や分霊の関係もあって、はっきり区別する名があった方が良いのでそうしたそうです。

反面、確かに最高位の神々は八柱ですが、その他の神々も大きく尽力なさっています。

崇めるべき対象を八柱に限定させやすい名前は呼ばせたくないという意向があり、一応伏せられてはいます。

話したり何処かで聞いて知っても特に問題はないそうですが、神の口から出てしまうと固定されかねないので極力避けていらっしゃるようです」


変な宗派が生まれたりする事を避けたかったのだろう。


確か十六那の話によると言い出しっぺの八柱を主としてはいるものの、興味のある他の神々も参加している、サークル活動みたいな形式をとってたはずだし。


「なるほど。それで精霊が知る基本的な事ってなんなんだ?」


「基本的と申しましても精霊たちにとっての、ですが。

例えばこの大陸の一般人や貴族など人々の生活は何となく分かります。

世界の在り方、例えば恵那の泉やスキル、タレントなどを含めた大まかな仕組みも分かります。

ですから恵那の泉を再現する事が出来ましたし、建物を作り出す事も出来ました。

ここは言わば神々の創造の真似事、シュミレーションというのですか?を行える場でもありますので。

また、マスターの意思によって生まれた世界の精霊でもありますから、マスターからの知識や表層意識などが一部リンクしております。

それと、マスターが霊格を上げた際に関わった夢幻神様及び魔神様とも極わずかですが縁が存在しております」

弘樹の問いに延々と答えるソフィア。


「ですので魔法の仕組みも一応は理解しております。

マスターご希望の書籍類もそちらの部屋へ準備いたしました」

ソフィアはそう言うと、すっと右手を上げて通路に面したドアノブ一つを指さした。


「そうか、ありがとう!」

弘樹はにっこり笑うが、「知っているなら直接教えてもらったほうが良いんじゃないですか?」と言う貴彦の言葉に一同は黙り込んだのだった。


結局生えてきていない魔法の才能の有無は試してみないと分からない、神威ゆえに神様にお願いしてみると効果的というアバウトな答えをソフィアから貰った一同は、戻ったらエアリスに神様関係教えて貰おうと言うことにして食事を取り、ダンジョンに戻った。


ダンジョンでは数度戦闘を繰り返しつつ突き進み、森のマップよりも広範囲を移動した頃変化があった。


洞窟内の気温がやや上昇し、有毒ガスと言うよりは瘴気と呼ぶに相応しいものが漂い始めたのだ。


出てくる魔物も各種ドラゴンのアンデッドが大半となり、日輪魔法や月光魔法が大変役立った。


なお、ヒール系魔法や回復薬で攻撃してみた所、それなりに効果はあったが悪霊死霊屍鬼などに有効な浄化系の方が威力が大きいので、普通に戦うこととなった。


森のマップ同様、行き止まりやオーブチェストで拾いものもしつつマップをどんどん埋めていくと、薄暗い洞窟の遥か先に光が見えてきた。


ここで慌てて罠にでも嵌まると危険なので、あえてゆっくり罠発見を使いつつ進むと、罠らしい罠は見当たらず普通に外へと出ることになった。


辺りには鬱蒼とした草木が繁り、洞窟から続くように10メートル以上の幅がある一本道が森の中へと続いている。


見上げれば遥か上に天井と思しき物はあったが、天井そのものが発光しているのか洞窟よりもかなり明るかった。


森の中も瘴気が混ざった霧が薄っすらと立ち込めており、まるで彼らが初めて知り合った保護樹林の様にも似ており、マップは通常モードに切り替わり、森だけでも直径数キロはある事もわかった。


そしてその森の先に、かなり大きな赤い光点を一つだけ示していた。


「この先に居るのがボスなのかも知れない。気を抜かずに行こう」

弘樹は障壁を多重展開しつつ進み、小春と貴彦がその後に続く。

小六は瘴気が臭くて嫌らしく、石の中へと逃げ込んでいた。


しばらく歩くと唐突に森は開け、沼地となった。


沼の水は濁りきり、ゴボゴボと瘴気を撒き散らしている。

あちこちにドラゴンやグリフォンと思われる物の骨や残骸が散らばり、沼の上に浮いていた。


「来るぞ!」

大きな光点が迫ってくるのがマップ上でも、そして弘樹の感覚にも伝わってきた。


それは沼の水を跳ね上げて頭を突き出し、小六月の面々を睥睨する。


ヒドラにも似た、しかし確実に格の差を感じさせる八つの頭を持つ蛇、竜たちの王の一体。

八岐大蛇ヤマタノオロチそのものだった。


頭の一つ一つが軽自動車並の大きさを持ち、首はそれぞれ10メートル前後の長さがあった。

その胴体はビルを横に倒したかのような太さがあり、鱗の一枚一枚が盾のように大きかった。


八岐大蛇は無言で八つの大きな口を開くと、赤黒い炎を吐き出した。


「させねぇ!」

弘樹は障壁を全方位に多重展開し、数枚を失いつつも耐えきった。


「天照大御神!!」

貴彦は詠唱短縮を10レベルまで上げた最高位の日輪魔法を発動させる。

それは天から太陽が一本の柱となって降りてきたと錯覚するような、とてつもない光量と熱量を持って八岐大蛇を直撃した。

グルァァァッ!!


大蛇は八つの首をブンブン振り回し、苦痛に顔を歪めつつ雄叫びを上げ、沼の水は大量の水蒸気を上げる。


「危ないんですけどっ?!」

弘樹が張った全方位障壁のいくつかも余波で吹き飛ぶも、どうにか火傷は負わずに済んだ。


水蒸気が晴れる前にマップを頼りとして弘樹は複数の空間の断裂を見舞い、白い水蒸気のそこかしこに赤い血飛沫が混ざった。

「あっ、ごめんなさい!」

貴彦は謝りつつも次の魔法を使うべく祈りにも似た詠唱を始めた。


「私も行きます!

足場の悪さは風でどうにかしますから気にしないで下さいね!」

小春も疾風迅雷を抜き放ち、強風を纏い水蒸気を蹴散らしながら白く輝く刃で斬撃を繰り出す。


八岐大蛇は巨体の割に頭や首は素早い反応を示すも、敏捷顕現値のみでも480ある小春の動きについて行けるはずもなく、金属のように硬いはずの鱗が軽々と切り裂かれ、その中の肉が雷光によって焼かれて行く。


「魔力の源たる月よ!

三日月の太刀となり我が敵を滅したまえ!クレッセント・エクスプロージョン!!」

弘樹が勢いで月光魔法を放つと、巨大な三日月が天より落ち、八岐大蛇の胴体に叩きつけられ炸裂する。


砕けた三日月の欠片は数多の小さな三日月型の刃となり、無数の傷を与え首が二つ切り飛ばされた。


「なんかずるいです!

神威・神速剣奥義風!八百万の太刀!」

小春の適当な技が炸裂し、神威を纏った刃が三日月以上の傷を与え、三本の首を切り落とす。


「負けませんよっ?!

太陽よ!ここにあれ!

ソーラーフレアボールっ!&幸運神の応援クリティカル!」


「ちょっ?!」

「馬鹿ですかっ?!」


貴彦の魔法に弘樹はテレポートで、小春は神速を持ってその場を大きく離れて合流し、出せる限りの障壁をボール状にして展開した。


数千万度まで高まると言われる太陽フレアを模したそれは、極小規模な、それこそテニスボールほどの大きさでありながら、大規模な爆発を起こし瞬時に森を焦土と化した。


本来最低でも水爆10万発分、多ければ一億発分と言われている太陽フレアの威力までは模しきれず、ただの劣化品でしかなかったが、それでも自動でクリティカルしてしまったその威力はとてつもないものだったのだ。


八岐大蛇は瞬く間に焼き消され、ダンジョンすらもが悲鳴を上げているかのような振動に襲われる。


恵那の光が三人へと流れ込むが、それどころではなかった。


爆発が収まったあとも障壁は継続して展開し、マップを使って貴彦を探すと霊格と耐性によるものなのか、高熱で焼け焦げながらもギリギリ生きている彼を発見した。


慌てて障壁を広げ貴彦を取り込むと、小春が竜緑薬を少年に振り掛けた。

魔法薬はその効果を発揮して、虫の息だった少年はどうにか息を吹き返した。


「場所と威力と規模を考えろよ!

この馬鹿っ!」

そう言いつつももう一本竜緑薬を取り出し、瓶を口に突っ込んで無理矢理飲ませる。

ゴフゴフとむせ返っていたがそれは無視する事にした。

火傷もほぼ治り、生死の境は乗り越えたようなので月光魔法の治癒を夢幻魔法、魔神魔法の組み合わせでブーストさせて使用する。


ついで空間使いで場を支配下に置き、夢幻魔法、魔神魔法に創造を組み合わせて焦土と化した地を本来あった空間へと作り変えて行く。


修正の終わった大地に降り立ち障壁を解除すると、地面に落ちた巨大な魔石や何故か無事な肉、骨、複数の牙に皮、数多の鱗、瓶に入った血液多数。

そして一振りの剣が落ちていた。


「あ、これって、草薙剣じゃ…」


貴彦を放置して思わず剣を見つめる二人だった。


地面に貴彦を寝かせたままドロップ品を回収した二人はあれこれと話し合い、剣を弘樹が預かる事になった。


もう勢いで泉に浸けちゃおうぜ〜とハイテンションなノリで弘樹が剣を手にしたその瞬間、強烈な光が空間を包み込む。


真っ白な空間に漂う三人は、気付けば見覚えのある森の中にいた。


「ここはダンジョンの入り口があった所か?」


鳥居はまるで古代遺跡のように苔生し、一部が破損している。


鑑定してみるとすでに機能を停止した遺跡扱いになっており、カッコいい…と弘樹は思わず亜空間に取り込んでしまった。


「それ、もしかして隠世に飾るつもりですか?」

白い目で見る小春に、「なんかロマンを感じるんだよ!」と苦笑しつつ答えた弘樹だった。


マップを展開し赤い光点の反応を調べると、大きな物は複数あるものの増える様子はなく、小さな物が増え始めた。


「ダンジョンそのものは多分クリアしたと思う。後は残った連中を倒せば避難者たちを町に戻せると思うんだ」

そう言いつつステータスウィンドウを開けば、称号を確認する。


▽竜王殺し(中) 

竜王を殺した者。

竜の影響を受けにくくなる。

竜に対する攻撃力防御力修正に+50%。


▽大きな異界の覇者

異界化した巨大なダンジョンを攻略した者。


やはり攻略した事になっていた。

そしてレベルは338まで上がっていた。


多分ボスを倒した以外にもダンジョン攻略分の恵那ボーナスが与えられたのだろうと思う。


そろそろ本気で泉に入らないとまずい気がしはじめていた。


中々起きそうにない貴彦に再び竜緑薬を飲ませると意識が戻り、事のあらましを二人で説明する。


「本当にごめんなさい」


貴彦はかなり落ち込んでおり、確認した称号にも愚者と追記されていたそうだ。


どんより落ち込むが死ぬよりはマシと二人は彼を放置して、マップ上の敵を倒すことにした。

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