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ソウル・リファイン  作者: 弥生丸
第一大陸編
41/96

変態王子?!

変態王子?!


「変態王子?!」

その姿を最初に見た小春が悲鳴にも似た声を上げ、その後目撃した人々は皆が口を揃えて「本当だ」と呟いた。


杉本の遺体の横に立つ男、それはまさになんと言うか王子様だった。


頭には明らかに玩具と分かる小さな冠を斜めに乗せ、明るい金色のサラサラ長髪、顔は白いスマイルマスク。

しかしその隙間から見える瞳は永久氷壁のような冷たい青。


腰にはお飾りです!と言わんばかりの安っぽい金ピカな長剣を下げ、所々に金銀宝石の偽物で飾った赤いシャツ、金色のカボチャパンツに赤と緑のタイツを履いている。

そしてその背後には、明らかに翼のある白馬がちまっと控えていた。


「いやぁ、そんなに褒めないで下さいね〜」

男は朗らかに笑いつつサラサラの髪を手で梳いた。


その姿を見た桔梗はビクリと震え十六那の背後に隠れようとするが、彼の冷え切った瞳に見詰められると、夢遊病かなにかのようにフラフラと彼へ歩き出した。


「させません!」

小春が刀を抜き、弘樹はドラゴンスケイルを展開させて王子様と馬を囲む。


「ふむふむ。

今の貴方たちはまだこの程度なのですか?」

まるで彼等を知っているかのようなその言葉に、唐突に弘樹の脳裏に迸るビジョンがあった。


気配も存在感も全く異なるのに、何故か老執事が嘲笑う姿が王子様に重なって見えたのだ。


「お前、アイツの関係者か」

それは質問ではなく確認であり、相手もアイツが誰を指しているのか理解した様だった。


「えぇ、あの御方が私の主です。

執事の部下が王子様って何だか卑猥な感じがしませんか?」

クフフと声だけ笑って見せた後、それは腰に挿した玩具の剣を抜き放って一閃させた。

彼等を取り囲んでいた20のドラゴンスケイルが全て砕け散る。


「あぁっ?!」

情けない声を上げたのは弘樹ではなく貴彦だった。


砕けた断片は王子様の周りをキラキラと漂い続け、それを見て走り出そうとした小春へと殺到する。


「小春ちゃん!」

咄嗟に複数の障壁を展開し小春を守るが、その大半は欠片たちによって削られ砕かれ、その都度弘樹が障壁を生み出す。


王子様はそんな事はお構いなしに、

「今日の私はコレと」

と手のひらに転がされた外法の塊である黒い小石を見せ、「その女に用があって来ただけですから〜」

とフラフラと歩く桔梗を指さした。


サムが大地の異能を使いその足元に大きな穴を開けると、桔梗はストンとそのまま落ちてしまった。


「おー、少年、中々に見所がありますねぇ」

ヒラヒラと手を振ってサムを何となく褒める王子様。


「そう、お前が外法を彼らに与えるか教えるかしたのね」

「ええそうですよ?」

十六那は出番を奪われたのが悔しいのか、流れをぶった切って彼を強く睨みつけ、彼は平然とそれを認めた。


魔物たちは十六那の剣幕に恐れを抱き、平伏したままプルプルと震えていた。


「彼等はこの世界の神々に召喚され、転移者として使命を全うしました。

ですが、ほんの些細な行き違いから彼等はギフトを奪われてしまったのです!」


ヨヨヨと泣いた真似すらしつつ、王子様は三文芝居さながらに大げさな抑揚を付けて話し始める。


「彼等は既にこの世界のシステムに慣れ切ってしまいましてね?

ステータスウィンドウを用いた強化が当たり前になっていたんですよ。

転移者や冒険者と流界者以外は、この世界でも行いが反映されて自動で上がるステータス、研鑽して得るスキルのレベルアップ、新たな行いによって生える新スキルや自ら磨くべきタレント、それが普通であるのに、それらの行いが馬鹿馬鹿しく感じていたのでしょうねぇ?

そこで、です!」


王子様はクルリと回ってドラゴンスケイルの欠片たちを謎の力で回収すると、手にした黒い石ころと錬成し、ビーチボールほどの大きさの暗い緑色の球体を作り上げた。


「私が教えて差し上げたのですよ。

一般人や冒険者、転移者たちを自分の望む物に変える方法をね?

簡単なんですよ?

自らに呪法を打ち込みましてね?

筋力が高い者を殺して恵那を奪えば筋力が、剣術を高めた者を殺せば剣術が少しですけど確実に上がるのですから〜

なんなら質の低い者を先に殺し、それによって場を穢してから質の高い者を殺せばなお上がりやすいのですが、それでアレコレ試していたみたいですねぇ〜」


ボールを新体操のようにポージングしながら弄り、演技風にするのも飽きたのか片手間に説明する。


「つまり、遺体を魔物に喰わせたり、首を杭に刺していたのも、そして村人たちや冒険者は殺され、転移者が捕まっていたのもそのせいだって事かっ?!」


弘樹の声に含まれた怒気など気にもせず、「えぇ、そりゃそーでしょーねー?」とボール片手に仰け反りながら王子様はあっさりと認めた。


「やったのは私ではなく、そこの桔梗と、この杉本って男ですけどねぇ。

せ〜いっ!」

爪先で杉本の遺体をツンツンと突きながら、王子様は謎の姿勢のまま手にしたボールをその遺体に叩きつける。


ボールは閃光を放って爆発し、杉本の遺体と地面の一部を綺麗さっぱり消滅させてしまった。


「マジかっ?!」

思わず弘樹が叫ぶ。


「もう面倒になりました〜。

説明は終わりましたし、どーでもいいので桔梗もそちらに差し上げます。

まだ名乗っておりませんでしたね。

私、ファル・グリンと申します。

あぁ勿論偽名ですが」


サラリと適当な事だけ口にして、王子様、ファル・グリンは白いペガサスに跨った。

「それでは、アデュー!」

右手の人差し指と中指をスチャッと立ててポーズを取ると、馬ごと何処かへ転移してしまった。


「…走らせたり空飛ばせたりはしないんだ?」

小春の呟きは、その場にいる皆の意見そのものだった。


桔梗を穴から引っ張り出した一行は、念の為再びマップで確認すると桔梗や魔物たちも黄色い光点に変わっていた。

仕組みが全く分からないが敵対者ではないらしい。


「そう言えば魔物たちは浄化対象なんじゃないの?」


ごもっともなリンウッドの質問に、

「従魔は浄化しないでしょう?

それに神使の類もそうよね?

この世界の神から祝福を受けた存在は、魔物と言うより聖獣や神獣扱いになるからなのよ。

なのでその辺を抜かりなくする為の上位神の迎えを呼んでいるから安心してっと、やっと来るみたいよ?」


何かの気配を感じたのか、十六那が背後を振り返る。

何もないはずの空間に小さな光の渦が生まれ、瞬く間に広がってゆく。


その場にいる面子は何事かと慌てる者、剣に手をやる者、ポカンとする者、魔法を詠唱する者まで居た。


「ちょっ?迎えだって言ってるでしょ?!

てか武器とかしまって!

敵じゃないから!

神様関係だから!」


十六那が珍しく慌ててその場にいる面子へと声を掛ける。

光は人一人が通れるほどの大きさになると、四つの光の玉が飛び出した。

三つはバレーボールほどの大きさで、一つはピンポン玉程だった。


それぞれがフワリと十六那の周りを一周すると、十六那の正面に舞い降りて人の姿を取り、跪いて深々と頭をたれる。


「ご機嫌麗しゅうございます。

我ら慈しみの三柱エリーニュスのアレクトー、ティーシポネー、メガイラの三名及び侍女頭のガランティス、主様の命により御前に馳せ参じましてございます」


大きな光が転じた者の一人が頭を下げたまま、恭しく十六那へと伝える。

皆それぞれにギリシャ神話に出て来そうな衣を纏う美女だった。


三人は三つ子なのか波打つ艷やかな黒髪を持ち、濃い緑の瞳を持つ凄味のある美女だった。


小さな光が転じた者は、三人よりやや後ろに控えるようにして跪き、より深く頭を垂れており、髪は濃い茶色かった。


彼女たちの纏う存在感はとてつもなく強く大きく、老執事が三人現れたかのような壮絶なそれが場を支配する。


サムやクリストフをはじめ、現地の者たちや十六那の後ろに控える魔物たちは皆ブルブルと震えつつ土下座でもするかのように平伏し、何人かはその姿勢のまま気絶しているかもしれなかった。


「人の身に転じたのは褒めてあげるけど、現地の人間を殺す気?

その気配を抑えなさいな。

そもそも神使を出せばよいでしょうに何で全員で来るのよ?

お前たちからギフトを贈られていたからこちらに協力してるの分かって呼んだ訳だけど、アルテミスといい貴女たちといい、こちらの神はそんなにホイホイ直接あちこちに現れるものなのかしら?」


目の前に現れた上位の三女神に主と呼ばれる少女。


先程の存在感や他者の魔物たちを自らの配下として統べるその有り様は一体何なのか?


いつしか意識を取り戻していた桔梗も顔面を蒼白にしながら平伏していた。


そこに一人、後ろに控えた女性が顔を上げ、冷え冷えとした笑顔を主へと向ける。


「お言葉ですけど主様、部下たちを放置してホイホイあちこちへ何十年も出歩いて、何かしら騒ぎを起こして去ってゆく女神様もいらっしゃるんですもの。

この位、仕方ないと思いません事?」

十六那はビクッと肩を震わせる。

何なら軽くきょどっている。


「これ、ガランティス。

いくら主様のお気に入りとはいえ言い過ぎと言うものだぞ」


沈黙を貫いていた三柱の一人が顔を上げ、苦笑を浮かべつつ叱咤する。


「もう、ティーシポネー様は主様に甘すぎますわ。

必要な時には苦言を呈するのも部下の役目なのでしてよ?」


ガランティスはそう言いつつも再び頭を下げて跪く。


「まぁ、取り敢えず頭を上げなさいな。今回貴女たちを呼んだのは、この子達を祝福して私の新チームに加える為よ」


顔を上げた部下たちに十六那は自慢するように多数の魔物たちを見せ、胸を張った。


「そこの女以外、主様の配下になると言うのなら祝福するのは構いませんが、こちらにワイルドハントのチームを作るという事ですか?

主様は直接的にはこちらの神として認証されておりませんから、英霊や魔女などの枠に入れられてしまいますが」


ティーシポネーが代表して話す様で、桔梗を一瞬凍り付かせる程の視線で見つめた後、問題点を十六那に伝えた。


なおワイルドハントとは、オーディンやケルヌンノス、アーサー王など神や偉人の霊、魔女などが率いる数多の精霊や妖精、ドラゴンや魔女、亡者の霊たちや数多の魔物などが参加する悪天候すら引き連れる事のある狩猟団であり、西洋の百鬼夜行のようなものだった。


中には目撃者をその集団に引き込んでしまうチームもあるという。


ヘカテーもまた、ワイルドハントを率いて闇夜を楽しむ女神の一柱であり、魔犬を中心とした構成の狩猟団を持っていたとされている。


「そこなのよね…」 

十六那もまた、弘樹たち同様地球に帰る事を目標としている。

色々と彼等に話していない事もあるが、そこは変わらない。


しかしほぼ思い付きとは言え、ワイルドハントを結成するのを諦めるつもりもないようだった。


しばし考えた後、「よし、わかったわ」と一人何かを納得し、小六月のパーティーへと声を掛ける。


「ごめんなさい、勝手で皆には申し訳ないけどしばらくの間別行動をさせてもらうわ。

ワイルドハントもそうだけど、少し調べたい事もあるの。

勿論パーティー資金や今回のドロップ品、それと遺体も全部置いていくし、報酬を含む金品は皆で分けてもらって構わないわ。

神殿側にはこの子達から声を掛けさせるから問題はないでしょうし」


言うが早いか次々と今回拾った魔石や素材、遺体に遺品、そしてパーティー資金である現金やパーティー用素材を取り出して弘樹に渡す。


そんな唐突な行動にも慣れているのか、三女神と侍女筆頭は十六那を静かに見詰めていた。


「あっ?えぇ?!」

慌てつつも弘樹は全て受け取って亜空間へ収納し、小春と貴彦も急展開について行けないようだった。


「パーティーは別行動でも機能的には問題はないはずだけど、望むなら一旦小六月を抜けるわ。

所属していることで迷惑を掛ける可能性もゼロじゃないし。

本当に急でごめんなさい。

そして、また会いましょう!」

十六那はペコリと頭を下げてから女神たちに命じ、魔物たちと共に光の渦へと消えていった。


女神たちと侍女は弘樹たちに軽く会釈し、現地の人々にも軽く手を振ってから光の玉となり光の渦へと消えた。


残された面々は桔梗の装備を外させて適当な服を着せ、ロープで拘束した。

彼女は全身に怪我や火傷をしていたが、魔法や魔法薬では効果がないと本人が話し、簡単な処置を貴彦が行った。

その間桔梗はじっと静かに俯いていた。


捕らえられていた二人は無言で桔梗を睨み付けるが、霊格の影響なのか感情の爆発を抑え込んでいた。


その後新米冒険者たちは籠城しているエリアへ向かい、残りの面子は桔梗を連れて館の中などを探索し、危険物を探し、亡くなった冒険者たちの遺品を回収した。


桔梗いわく危険物は特にないそうだったが、実際何も見付からなかった。


「伝えて来たよ〜」

しばらくしてリンウッドたちが見知らぬ人々を数名を引き連れ戻ってきた。


「私はハクヨの代官をしております、伊藤と申します。

この度は町を救って頂きありがとうございました」


その中の中年男性が深々と頭を下げ、その後に続く者達も礼を述べた。

被害者は予想外に少なく、死者数名だったそうだ。

小六月のテレポートによる移動のお陰で初動が早かったのもあるが、たまたま居た転移者や冒険者達の存在も大きかったと言う。


もしかしたらその転移者や冒険者狙いでこの町を襲ったのかも知れないが、それは後々分かる事だろう。


弘樹は代官に書類へサインをしてもらい、大まかに事情を説明すると急ぎラクヨの町へ戻る事を伝えた。


是非宴にと誘われたが、やるべき事が多数あり、また今回の依頼で、特に杉本との戦闘で見直せばならない事もあるため、丁重に断り桔梗と捕虜だった二人を連れてテレポートで戻る事になった。


十六那のかけた神秘の拒絶は本人の有利に働くものを基本的に消してしまう様だが、弘樹のテレポートを弾くことはなく、ラクヨの町の門近くの草原へと移動出来た。



門を通る際それぞれ身分証明書を提示する。

「ふぁっ?!」

次々と町へ入る中、タニアが提示の為に取り出した冒険者カードを何となく見て叫びにも似た声を上げた。


「なんだよ?急に立ち止まるなよ」

「実は怪我でもしてたの?」

タニアの後に並んでいたリンウッドとサムが声を掛ける。


「なんだも何もないよ!

アンタ達も自分のカード確認してみなっ!」


「ひゃっほー!」

「うわぁ」

「あぁ、そうか。

確かに有り得る事だった」


タニアに言われてリンウッドとサム、そしてクリストフも冒険者カードを見、それぞれに呟いたり喜びの声を上げていた。


新米冒険者のはずの彼らだったが、それぞれレベルが倍以上に、そして滅多に上がらないと言われている霊格が2に上がっていたのだった。

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