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ソウル・リファイン  作者: 弥生丸
第一大陸編
19/96

ヒズルク王国 西部第五都市ラクヨ

ヒズルク王国 西部第五都市ラクヨ



「二人共離れて」

十六那は光の膜に覆われた聖典を掲げ持ち、貴彦と小春に声を掛ける。

魔法の大技でも使うのだろうか?

貴彦と小春が前線を一時離脱するタイミングを見計らってバイコーンから距離を取った瞬間、十六那が聖典を縦に構えて跳躍した。


体力のみならず知覚も大幅に上がった三人の目がギリギリ捉える事が出来る、そんな尋常ならざる速さで十六那はバイコーンに迫る。

バイコーンもあまりの速さに対応出来ずにいると、

「グリモワ・スカルクラッシュ!」

十六那は角と角の間へと、振り上げていた聖典の角を叩き下ろす。


ごぶぉっ!

馬とは思えない悲鳴が上がり、バイコーンの体が浮かび上がった。

その頭は地面にめり込みんでひしゃげて小規模なクレーターを作り出し、首があらぬ方向を向いている。


頭蓋骨どころか顔ごといっちゃってませんか?

てか魔法は?

俺らの期待は一体どこへ?!


そんな思いも気にすることなく、十六那は「開放」と呟きつつブンと剣の血を払う仕草で聖典を振るう。

聖典を覆っていた光の膜が消え去ると、鞄を開けて中に放り込んだ。


首が曲がり頭の真ん中が陥没、顔面は潰されつつ地面にめり込んだバイコーンは、流石に死んだようだった。

と、バイコーンの体がふわりと光り、辺りへと拡散して行く。

その一部は細かな光の粒となって四人、中でも十六那の身体に多く吸い込まれ、残りは空気に溶け込むように消え去った。


残ったのは小さなクレーターと、地面に落ちた捻れた二本の角、そして五センチほどの大きさの青黒い玉だった。


「ドロップ品とかそんな感じでしょうか?」

微妙な空気から小春が最初に普通したようだ。角と玉の近くにしゃがみこみ、その辺で拾った枝で突いていた。

「下手に触って呪われるとか嫌なんだけど、多分そうでしょうね」

十六那は答え、チラッチラッと男性二人の顔を見る。


貴彦は余り気にした様子もなく玉を拾い上げ、弘樹は二本の角を拾った。


「これがある程度の値段で売れるなら、宿や食事も出来そうですけど…」

貴彦の困惑気味な表情に弘樹は頷き、

「ゲームだと初期の街付近で拾えるのは売値が安いのが定番だしな。バイコーンがそんなに低レベルの敵とも思えないけど」

と意見を述べる。

「ゲームでもあれこれ違いますもんね。やはり街へ行って確認するしかありませんね!」

小春の言葉に皆が頷き、とりあえず貴彦のリュックに角二本と玉をしまい、再び防壁へと歩きはじめた。



バイコーンとの戦闘以降は特に何事もなく防壁まであと数百mの距離までやってきた。

目を凝らせば防壁の中心部辺りに幅5m程の門が見えた。

そのまま足早に進むと、門の左右には槍を持った兵士と思しき人が一人ずつ、門の内側にも数名の兵士たちや白い衣をまとった人達が見える。


流石に魔物が出る場所なだけはあり、ある程度の人員で防衛しないと不味いんだろうな。


弘樹を先頭に、四人は門へと向った。

門番と思われる門の左右の兵士たちは四人に顔を向けるも、特に槍を構えるなどということはなかった。


果たして言葉は通じるのか?犯罪者と間違われて地下牢へでも放り込まれたらやだなー。

弘樹は少しビクつきつつも、左側の門番に日本語で声をかける。

「すいません、ちょっとお尋ねしたいのですが」

弘樹の声に門番の一人はうなずくと、

「ようこそ旅の方々、どうかしましたか?」と日本語で答えてくれた。


門番は黒髪、瞳も黒い30代位の男性で、肌の色や顔の作りも日本人そのものだった。

身長は170cm程で身体に革鎧をまとっている。


言葉が通じた!

弘樹は思わず三人を振り返ると、皆ホッとした表情を浮かべている。


「あまり見かけない格好だが、もしや君たちは転移者かい?」

門番は特に慌てた様子もなく弘樹たちに聞いてきた。

「?!あ、はい、そうです。先程来たばかりで」

貴彦が答えると、うんうんと門番は頷きつつ、「ならば色々と分からないだろう。おーい、倉田!この方たちを神殿まで案内してやってくれ!」と門の中から少年の兵士を一人、案内役につけてくれた。

監視の意味もあるのかも知れないが。


本来なら出入りや町の滞在には身分証の類が必要だが、転移者や越界者がこちらの世界の物を持っているはずもない。


商売で来た場合は税を取られるが、旅人からそれらを取る街はこの第一大陸最大の国ヒズルク王国では殆ないとの事だった。


この街はヒズルク王国 西部第五都市ラクヨで国の西側に位置している。


西部に都市は五つあり、その五番目であるラクヨは実際の所大きな街に毛が生えた程度の街であり、開拓事業が主な仕事で外の草原も森を切り拓いて出来たものらしい。


以上のことを説明されつつ、仮の身分証として白い木で出来た札に「仮」とデカデカと彫られた物を人数分渡されたので各自受け取り街へと入る。


町中は大きな道や商店のある小道は石畳が敷かれていた。

家々は西洋風の木造建築が多く、稀に石や四人にはよく分からない材質の建物もあった。


案内人の新兵、倉田三郎はこちらに紛れてしまった越界者の日本人、倉田の末裔だった。

転移者同様それなりの人数がこちらの世界に来て生活しており、倉田の先祖もその一人だった。


越界者は特に差別されることはなく、どちらかと言えば様々な知識の提供者として国や神殿も保護対象としており、中流から上級階級の扱いになる事も多いのだとか。

実際、倉田の先祖もそこそこの商会を築いて中流市民として生活していたとの事。


転移者と越界者は服装など見た目は大差ないが、いわゆる気配が全く違うそうで、その為先程の門番、第三衛兵隊副隊長の鈴木は弘樹たち一行の事を転移者ではないかと判断したようだ。

鈴木は父方の祖父が越界者、祖母は転移者だったそうだ。


そんな説明を聞きつつ街の中心部まで進むと、そこには白い石を大量に使った荘厳な雰囲気のギリシャ風神殿と、木造三階建ての大きな建物が並んて建っていた。

「こちら、白い建物が八柱神殿、隣が冒険者ギルドになります」

倉田は四人にそう説明すると、神殿の警備兵と思しき人へ声をかける。


警備兵は倉田の話を聞いた警備兵は近くに居た見習い神官と思われる女性へと声をかけつつ、四人を入り口に近い応接室へと案内した。

倉田は役目を終えると門へと戻っていった。


応接室は八畳ほどの広さでテーブルを囲むようにソファが2つに椅子が一つあり、二人ずつソファに座った。

室内は宗教画が一枚飾られているだけの簡素な物だったが綺麗に掃除されており、落ち着くことが出来た。

先程の見習いと思しき女性が湯呑に入った緑茶とお茶請けの煎餅を出してくれた。


神殿はギリシャなどの作りに近い気がするが、飲食関係は日本風なのか。

茶を啜ると元の世界と変わらぬ香りがする。

これなら米や味噌、醤油なんかもありそうだな。あちらからたくさんの人が来ているなら当然か?

異世界知識チート物みたいにあれこれ発明したことにしてひと儲けは無理だろうなーと、弘樹はボケーッとしつつ考えていると、扉がノックされて開き、黒縁メガネをかけ白い神官服を着た女性が入ってきた。

「はじめまして。異世界から招かれた皆様方。私は当神殿の異世界部門担当のエアリスと申します。よろしくお願いいたします」

スッと礼を取ると椅子へと腰をかける。

弘樹たち四人も軽く腰を浮かせて例を返し各自名乗って自己紹介を終えるとエリアスの説明を受けることとなった。

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