縛鎖の円環
縛鎖の円環
「ちょっと待ちなさいな?」
丁寧に説明を始めようとした貴彦に十六那が待ったを掛け、二人の間に割って入った。
十六那の左手にはいつの間にか革製の本が収まり、千尋を冷気すら感じる氷の瞳で睨み付けた。
「あなた、さっき三人は転移、一人は転生組の生き残りか?って言ったわよね?その辺はどうとでもする、とも言ったわよね?」
十六那の後ろでは、あー、言ってたね!そうでしたっけ?などと弘樹と小春が話している。
ピクッと十六那の眉が動くが、二人は気付かずワイワイと話していた。
「ひっ?!グリモア?!あー、いや。それはほら、あの〜」
千尋は本と十六那を交互に見つつ、あやふやな言葉を吐き後退る。
十六那は本のページをパラっと捲りながら千尋を睨み付け、
「聖典略式起動・我が目に映るは縛鎖の円環!18回の試行を許可す!」
怜悧な声音で呪を紡いだ。
千尋は飛んで逃げようとするが、その姿を囲むように鉄錆色の真円が18個現れ、それぞれが三本ずつ太い鎖を吐き出した。
「あひゃっ!」
千尋は奇声を発しつつ身をよじる。
その身に触れた鎖の大半は弾かれ、円と共に光の塵となって消えたが、6つの円とそれの放った計18本の鎖がその身を捕え締め付け逃走を防ぐ。
「略式とは言え12も抵抗するとは、やはりそれなりに高位の存在だったようね」
十六那は聖典と呼んだ本のページをめくりつつ、視線は千尋を離さない。
「ななな何をするつもりよっ?!こんなコトして許されるとでも思ってんの?!」
鎖で締め付けられ、窮屈そうにもがきつつも千尋に宿った深紅の瞳が睨み付ける。
弘樹と小春はかっけー!凄い!私にも出来ないかな?!とはしゃぎ始め、貴彦は突然の展開にフリーズしていた。
「許されないのはそちらだと思うわ。神の謀とかその辺は無慈悲そのものだと言うけれど、巻き込まれた方はたまったものじゃないのよ?」
十六那の言に千尋はハァっとため息をついた。
「そーね。これは神謀の一種ね。
あぁ、もーいいや。
私の知っている事で話して問題ない事なら話すよ」
千尋はそう言うと、鎖に縛られたまま地べたへ胡座をかいた。
「そうしてもらえると有り難いわ。ではまず、転生組と転移、これも組でいいのかしら?その2つは何なのか教えて」
十六那の時に千尋は大きく頷くと、やや面倒臭そうに説明をはじめた。
「あー、もう先に基本的なことも説明しておくね。じゃないと転移だの転生だの言っても訳分かんなくなるだろーし」
千尋の言葉に十六那は頷き、他の三人も千尋の次の言葉を待った。
「こちらの世界には沢山の神話があるの知ってるよね?そのうちの八柱の女神様たちが中心となって、他の神々の力も借りつつ一つの世界を作ったの。ってか作り続けてるの。そこは剣と魔法、魔物もありな世界ね」
ここまではいい?とばかりに四人の顔を見回す千尋。
そこに「はい!」と挙手して貴彦が質問を投げ掛ける。
「作り続けてるってどう言う事ですか?」
「良い質問ね!例えばオンラインRPGってやったことある?あれで新マップ更新!とか、新規エリア開放!とかあるじゃない?あんな感じよ」
見た目こそ人間の千尋だが、人ならざる者がオンラインRPGだのと言い出すのは貴彦としても違和感があったが、何となく理解は出来た。
「あ、そうなると開放されていないマップって景色として見えているのに、見えない壁があって進めないみたいな事ですか?」
貴彦の質問にウンウンと頷く千尋。
「凄く住みにくそう」
小春の呟きにそーでもないんだなーと返す千尋。
「街や村なんかは大きく変化する事は滅多にないし、そもそも魔物がいるからねー、この世界みたいに誰でもあちこち行ける訳じゃないしさ。
それにね、地形や地理が変わることも多々あるから戦争も起きにくいの。
軍隊が国境沿いに野営して朝起きたら、国境の間に大河が出来てたとかね。
それに神々が居てルール作ってるからねー。ほれPK禁止的フィールドな?
そんな措置も取れちゃうからさ」
ゲームに影響受けすぎな気もするそんな世界に思わず、
「神様達なんでもありだな、おい!」
そう突っ込んでしまう弘樹だった。
なんかもうじき異世界行ける気がする
そんな気がするよね?




