お節介とお人好し
お節介とお人好し
千尋の宣言によって開かれた扉、それは異世界への扉という名の柱であった。
「さぁ、夢により結ばれた成約に従い、いざっ!」
慈母から別のキャラにでもクラスチェンジしたのか、勢い良くばさっ!と両手を広げ直す千尋。
しかし皆の反応は今一だった。
「夢ですか?」
「誰かみた?」
「いや、見てない」
「私も知らないわ」
貴彦、小春、弘樹、十六那、それぞれが口にする。
「夢により結ばれた成約と言うことは、誰かが見た夢の中で何かしらの契約が結ばれたのね。
夢は魔術や心霊、勿論神霊もだけれど、何かを伝えたり知ったりする媒体に使われる事が多いから。ほら、夢枕に立つとか予知夢とか良く言うでしょう?」
十六那は解説好きなのか、実は案外お節介焼きなのか、先程同様魔術等に疎い三人に説明し始め、三人はウンウン、そうなのか〜と相槌を打っている。
「中には神仏や亡くなった親族を真似て騙そうとする悪魔や悪霊の類もいるから…まぁ実際の所、神仏は滅多に夢枕に立たないから、基本は亡くなった近親者の霊か悪霊が騙してるかよね。
単なる夢って線が一番多いのでしょうけど。
あぁそうそう、真面目な宗教家や敬虔な信者さんだと、自分の特殊能力がそのイメージに引きずられて発動する事もあるみたいね。
例えば予知能力者が夢で…」
十六那は解説好きと言うより、実は単なるおしゃべり説が有力視され始めた頃、千尋に宿ったモノが痺れを切らしたのか、やや強い口調で割って入った。
「加藤誠治!田中マリ!川岸聡!
一人多いようだが、それは転生組の生き残りか?
その辺はどうとでもする!
貴方達三名が異世界に転移する事は既に契約がなされ決まっている!
早く扉に入りなさい!」
左手を腰に当て、右手でビシッと四人を指差しつつ、千尋は焦れた様に告げた。
「は?」
「えっ?」
「いやいや」
「はぁ」
貴彦、小春はキョトンとし、弘樹は首を左右に振り、十六那はため息をついた。
「何よっ!どーしたのよ!
今更嫌とか言い出しても駄目なんだからね?!
駄々こねても無駄!
神々との契約、なめんなよっ?!」
多分こちらが本性なのだろう。先程からチラチラと見え隠れしていた不自然さがなくなった。
千尋の瞳が紅く輝きを放つ。
「あのー、ちょっといいですか?」
四人の中で一番人が良い貴彦が挙手をした。
「何よ?もうあまり時間がないのよ!言い訳とかいらないからさっさと入りなさいよ!」
千尋に憑いたモノは深紅に輝く瞳で貴彦を睨み付ける。
「いや、言い訳とかじゃなくてですね、先程言った三人、みんな鬼女に殺されてしまったんですが…」
何だか申し訳ない気分になりつつ、貴彦は事実を告げる。
「へっ?」
キョトンとした千尋は、そのままヘナヘナっと力を失い、ゆっくりと地面へ降りてきた。
「エッ…ナニ?ドウイウコト?」
何故か片言になりつつ、涙目で四人を見回した。
「いや、だから残念ながらその三人はもう居ないんです」
本当に申し訳無さそうに、貴彦が頭をちょこんと下げた。
それを見ていた十六那の目は、氷のように冷たい光を宿していた。




