魔女の考察
魔女の考察
「なるほど、そういうことだったの」
弘樹は十六那たち三人に、面から伝えられた事の顛末を語った。
十六那はスマホを取り出し検索すると、三枚の画像を見せてきた。
「これが生成、こっちが般若、そしてこれが真蛇」
そこには鬼女と思われる面が三つ並んでいた。
小さな角と牙を持つ生成。
鋭く尖った角と牙を持つ般若。
耳まで裂けた口に牙、大きな二本の角を持つ真蛇。
真蛇の面は彼らが倒した蛇体の鬼女の面と良く似ていた。
「元々これらの鬼女は嫉妬や怨念によって鬼へと変わる段階を示してるの。生成から般若、般若から真蛇へと負の感情によって変化して行くの」
十六那は三人を見回しつつ語り続けた。
「山野さんの話だと、女神の面は女性から生成になっていた。つまり穢や怒り、そんないろんなものが、女神を鬼神へと変えたのね。日本における荒ぶる神の怒りの相、荒御魂になったということよ」
小春は十六那の声に頷きつつ、
「心霊スポットとか少女の幽霊話なんかは関係ないのかな?」
と訪ねた。
「関係あると思うわ。自殺から約一年の間、死んだ女性を弔う気持ちの欠片もない、好奇心や遊び半分の人々が噂になるくらいの数訪れた。すでに荒御魂になりかかっていた女神の怒りも、短期間で貯まると思わない?」
十六那の言葉に「あぁ、そういう事か」とやや自嘲気味な笑みを浮かべ、貴彦が呟く。
彼と小春、そしてその友人たちはまさに祠を心霊スポットとして探索に来たのだった。
ただしそれは表面上の目的で、実の所幽霊が本物ならどうにかしようと、そう皆で決めて来たのだが。
そのうちの三人が異界で死に、一人が行方不明になったままだった。
弘樹が意識を失った数時間の間、二人は三人の遺体と千尋と言う少女を探していたが、何れも発見することは出来なかった。
友人が殺され、行方不明になっているにも関わらず、貴彦と小春は妙に落ち着きを見せているのだが、それは二人に限ったことではなかった。
魔女たる十六那は勿論の事、弘樹自身、あの戦いから何かが切り替わってしまった様だった。
かなり特殊な経験によるショックから一時的に麻痺したのかと思っていたが、時間の経過と共にどうやら違うのではないかと感じていた。
常時ではなかった妙に淡々とした部分が生まれており、それはほんの数十分の間に生死観や倫理観、そんなものが大きく変わってしまったような、漠然とした感覚だった。
「それはそれとして、何故荒御魂がそこそこ簡単に倒せたのか、その理由も分かったわ」
ふぁっ?!
簡単じゃねーし?!
十六那を除く三人が共通の思いで見返すが、彼女は気にした風もなく、2つに割れた面を指さした。
「この面は荒御魂の核だった。そしてこの面はその昔、雷に打たれて折れ、炎に焼かれた御神木から作られている。つまり呪的な意味で最初から雷と火と言う大きな弱点を持った物だったのよ。最後の方だけチラッと見ていたのだけれど、風に地、火に冷気、それから雷の力すら使っていたわよね?勿論最後の攻撃が止めを刺したのは事実だけど、火と雷の攻撃がかなりのダメージを与えでいたのだと思う」
見てたんですか。
そうですか。
ちょっと助言なり手助けをして欲しかったです。
でも言われてみれば、彼女があそこへ入れなければ、俺たちを連れ出す事も出来なかった訳だし。
追ってきてくれただけ良かったのかも知れない。
そんな事を考えつつも、あの場で起きたこと、そしてずっと頭の隅に引っ掛かり気になっていた事を思い出した。
そう、あの岩場で貴彦と小春の二人は、常人とは思えない動きで移動し、武器を持って戦っていた。
考えてみれば二人のあの動きは、十六那ほど洗練されたものではなかったが、しかし同種のものでは無かったか?
十六那的に言えば同類というやつでは?
「ところでさ、もしや君たち」
話の流れも途切れて居たので丁度よい。
弘樹は貴彦と小春に疑問をぶつける事にした。




