複製(リカノグゥリエ)
邪神の侵略の魔の手はすぐそばまで迫っている。
人目に付かぬ木々に囲まれた、近所の公園の植木の中にクトゥルーの基地はあった!
「痛かったのです。もうちょっとで、消化されてしまう所だったのです」
野犬を撃退したクトゥルーは、傷を癒しながら考えていた。
「凶悪な獣なのです。この星で一番強い獣なのです。侵略している間に基地が攻撃されるかもしれないのです」
クトゥルーは、眠らずに考えていた。
決して、寝てる間に野犬に襲われて食われるかもしれないという恐怖に、一睡も出来なかったわけではない。
「仲間を増やせばいいのです」
クトゥルーは、何と恐ろしい事を思いついたのか!
一匹でも人類を根絶やしにするに足る邪神を、さらに増やそうというのか!
まさに悪魔の計略、そう、クトゥルーは、分裂して、自分の分身を作ることが出来るのだ。
「1号なのです」
「2号なのです」
「3号なのです」
何と!
一度に三体もの邪神が増えてしまった!
この恐怖に、打ち勝てる人間などいない。
人類は、恐怖に震えながら、滅亡するしかないのだ!
「侵略に行って来る間、留守番をするのです」
「留守番なのです」
「見張るのです」
「ごろごろするのです」
ついに、侵略を開始した、邪神クトゥルー!
しかし、何を思ったか踏みとどまった。
「やっぱり、みんなで、侵略に行くのです」
さみしかったのか!
「わーい、侵略に行くのですー!」
「ゴミを始末しに行くのですー!」
「ごろごろするのですー!」
人類滅亡へのカウントダウンが始まった……。