6・猫の会議内容と聞く態度
「っということで。最近、カラスの活動が活発でありんす。みな、気をつけなはれ」
「そういや、昼間。僕の上空を数匹のカラスが飛んでいやがったな」
「カラス・・・問題ない・・・。私、家の中・・・」
「そりゃそうだろうよ。しかし、野良はどうする?」
「野良は仕方ないのです。神の運命に任せましょう」
「そうだな。自分の身は自分で守ろう。そして、もし目の前で仲間がカラスや犬に襲われていたら助けよう」
とても真剣な話をしており私の入る幕はない。しかし、それは会話だけである。
話の内容は真剣なのにみんなの態度はというと、何枚か用意された青い大きな四角いつるつるした敷物の上に寝転がっていたり、会議に参加せずダベっている人がいる。
「グゴー!グゴー!」
アゴヒゲおじさんの『ゴンゴドラス』なんかイビキをかいて寝ている。カキ姉さんは公園の端にあるピラミッドみたいに3つに積まれた石でできた大きな筒の様なものに腰を掛けている。
やる気のないような態度で皆あーだ!こーだ!と言っている。
「んあ?もう話し合いは終わったか?」
目が覚めて寝ぼけたように言うゴンゴドラス。ほ、本当にこの猫の集会はなんだろうか。
「あの・・・・」
私は猫の集会について詳しく知りたいと思い、質問をしようとしたときであった。
「お前たち!何をしてる!」
そういう声とともに懐中電灯の光を当てられる。私は眩しくて目を閉じたが、ゆっくり目を開けるとそこには青い制服と帽子を着て、ベルトの所にはいろいろと何かを付けている男性が、右手には小さな何か光るものを左手には細い車の様なものを押して近付いてきた。
「えっ?なんなの?」
私は沈黙したみんなに聞いたが、みんなは何も答えなかった。
「これは、これは。お巡りさん!お勤めご苦労様です」
最初に喋ったのはゴンゴドラスだ。知り合いなのかとても久しく話しかける。そっか。たぶん、この『お巡りさん』っていう人も猫なのか。
「君たち。ここで何をしているんだ?もしかして、何か悪いことでも考えているのか?」
次は怒鳴らずに優しく言う。
「いえいえ、これはですねぇ。オンラインゲームプレイヤーのオフ会です」
ゴンゴドラスは笑顔で右手で頭をかきながら言った。
「「オンラインゲームプレイヤーのオフ会?」」
私とお巡りさんは同時に疑問文で言った。
「そう。オフ会!!」
着ぐるみパジャマの霊幽が答える。
「そうそう。私、ゲームにどっぷりハマってさぁ。ギルドのオフ会をやりたい!っと、思っていたんだよねぇ」
OLっぽい霧子が楽しそうに喋りながらお巡りさんに言う。
「本当にオフ会か?そこにいるパーカーのお嬢ちゃんも知らないみたいだったぞ?」
お巡りさんは私を指差し言った。私は意味が分からずに答えることは出来ない。しかし、ここで何も答えないことは怪しまれる。私は遅くなったが、『お巡りさん』という存在は猫ではなく、人間なんだと場の雰囲気でなんとなく分かる。
私を睨むお巡りさん。
(駄目だ!私のせいでバレてしまう)
私は罪悪感ととっさの反応が出来ない自分が憎くなり目を閉じる。
「あっ!この子はね~。私の連れなの~。オンラインゲームに興味があると言ったから連れてきたの。ねぇ、花。こうやって集まるのがオフ会だよ」
金髪ウェーブの『シャテット』は私の左肘のところを抱きしめて言う。
「えっ?う、うん・・・」
私はちょっと戸惑いながらもコクコクと頷く。
「ほんとかぁ?『花』とは本名か?」
お巡りさんは目を細めて私を見る。
「お巡りさん。僕ちん達はオンラインの住人だよ?ここでは本名はアウトなのさ」
ぽっちゃりのウェルが手を腰に当て、どや顔で言う。
「た、確かに。私も最近、その『オフ会』というのが増えているらしいから、指導とかあるからネットで調べたらそう書いてあったな・・・」
お巡りさんは思い出したかのように左手をパー、右手をグーにしてポンと叩く。どうやらお巡りさんには猫だとバレないで済んだようだ。
「では!良いオフ会を!っと言いたいところだが、見たところ小さな子供もいるからな。ほどほどで帰りなさい」
と注意をしてお巡りさんは細い車の様なものをこいでどこかに行く。
「まぁ、確かに・・・・。このメンバーでのこの時間のオフ会はいかんな」
ゴンゴドラスは頭をかきながら言った。
「では!ここらへんで解散しましょか?お疲れ様でありんす」
カキがそう言うと、みんなそれぞれ「お疲れ様」と言い、四方八方へ散りながらおのおののテリトリーに帰っていった。