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34・カラスその4

「むっきー!こらー!降りてこーい!」


「・・・・。あ、あのね、リリーちゃん。もう行っちゃったよ・・・」


リリーの出した大声は、虚しくその森一体に響いただけで終わった。


「ああ!もう!ムカつく!!」


「ああああっ!やめてっ!」


リリーはブラッディが持っている猫のぬいぐるみミミーちゃんを、奪い取りどこか適当な場所へと投げ捨てた。


「ブーのバカ!バカバカバカバカ!バカーーー!何で喋るのよ!」


「いーたーい!いたいよぉ・・・」


ぬいぐるみを取るためにその場まで走ってしゃがんだブラッディに追い討ちを食らわせるかのように、リリーは追い掛けて後ろからブラッディの両方の頬を引っ張った。


「そこまでだ!カラスの子、リリーよ!それ以上はブラッディが可哀想だ」


「うるさい!うるさーい!!」


リリーは後ろから両手を押さえてきたゴメスに対して、暴れて振り払おうとしたのだが女性と男性では力の差があり、しばらく暴れたあとリリーは諦めて力を抜いてゴメスの支えに体を預けた。


「重いぞ!カラスの子リリーよ!」


「私は重くないわよ!!」


「ひえぇっ!!」


怒ったリリーは、そのままゴメスを背負い投げをして倒した。それを見たブラッディは恐怖のあまり怯えて小さな悲鳴をあげた。


「ああ!もう!!こうなったら作戦会議よ!二人共、いつものカフェに行くわよ!」


リリーはブラッディとゴメスを交互に指差して若干怒鳴りぎみに言った。


(フフフ・・・。適当に作戦会議をして、邪魔なゴメスを帰らせてブーと二人っきりになるんだから!)


リリーは心の中ではそのような事を考えていた。


「クックックッ・・・。我みたいな高貴な魔王、ルシファーにはそのようなものは必要ないのだが・・・。いいだろう!」


ゴメスは相変わらずの中二発言でリリーの会議に賛成した。それを聞いたリリーは自分とブラッディのラブラブ作戦を決行できると勝利の笑みを浮かべていた。


(クックックッ・・・。邪魔なリリーを適当に理由をつけて帰らせて、高貴な我はブラッディとラブラブな展開にっ!)


ゴメスは心の中ではそのようなことを考えたいた。


「あ、あのね!ボクね、その話し合いには参加できないんだ・・・」


「えっ?」


「んんっ!?」


リリーとゴメスはブラッディと仲良くなる作戦を考えていただけに、ブラッディの意外な発言に耳を疑った。


「ええっ!?ブー!今なんて言ったの?」


「カラスの女神、ブラッディよ!参加しないと申したのか?」


「あ、あのね・・・。ボクは男だよぉ・・・。ご、ごめんね、ボクはちょっと用事があるんだよ・・・。だから、参加できない・・・」


ブラッディは申し訳なさそうに丸くなって答えた。


(ボクのせいでリリーちゃんが気に入っている花ちゃんを取られてしまう。ボクが花ちゃんを捕まえないと・・・)


ブラッディは心の中でそう決心していたのだ。


「やっぱり今日の作戦会議は━━━」


「二人で作戦を考えて、今度教えてほしいな・・・」


「うっ・・・」


ブラッディが来ないということで、リリーはすぐに作戦会議を中止しようと思ったのだが、すぐにブラッディに阻止されてしまった。


「じゃあ、ボクは少し用事があるからまたね!」


(ボクがサプライズで花ちゃんを捕まえてきたら、リリーちゃんは喜ぶかな?エヘヘ・・・)


ブラッディには珍しく一方的に自分の意見を言うと、スタスタと何処かへ行ってしまった。

もうリリーとゴメスは、作戦会議を『やっぱりやめる』と言えなくなっていた。


「あの子、あんなに勇気ある子だったかしら・・・」


「俺もあんなブラッディは初めて見たぜ・・・」


リリーとゴメスはただポカーンとして、ブラッディがいなくなった場所をいつまでも見ていた。

ゴメスにしては、中ニではなく素に戻っていた。


このあと数時間後にブラッディは花と出会うのであった。




ー(幕間)ー




「いらっしゃいませ!『可愛いメイドを見て癒されるカフェ、夜のワンポイント!』へようこそ!」


犬耳のおもちゃを付けた、茶髪のショートヘアーのメイドが元気にぴょんぴょんと飛び、ゴメスとリリーを出迎えた。


「お二人様ですね!では、ごあんな~い!!」


メイドは二人を置いて行くのではないかと思うほどに早足で歩き、リリーとゴメスを向い合わせのテーブル席に案内した。


「あの・・・」


「はい、何でしょうか?」


「私はこいつと向かい合わせに座らないといけないの?」


リリーは半切れ状態でゴメスを指差してからメイドに聞いていた。ゴメスもリリーと同じ意見なのか腕を組んでうんうんと頷いていた。


それもそのはず、3馬鹿トリオ・・・・・もとい、リリー、ゴメス、ブラッディはここの常連なのだが、いつも3人で来るため、席はリリーの向い合わせはブラッディで、その隣にゴメスが座るという席順が打ち合わせしたわけでもなく定着していた。


今回はブラッディがいないことにより、ゴメスの向い合わせは嫌だと文句を言っていたのだ。


「ああっ!申し訳ございません!お気付きにならなかったです。お二人はいわゆる『ラブラブなカップル』なのですね?では、隣同士にしましょう!」


「「はぁっ!?」」


そのメイドの言葉に、リリーとゴメスは変な大声をあげた。


「な、なんでこいつと私が隣同士に座らないといけないのよ!」


「我は高貴な悪魔である!こんな小娘と隣同士に座る事はない!」


リリーとゴメスはムキになり自分の言い分をメイドに言い聞かせていた。もちろん、同時に話しているからメイドのははなっから聞いていなかった。

しかし、隣同士は嫌だということが分かる。


「分かりました。では、向い合わせですね?」


メイドはまるで『もうこれ以上の我が儘は許さないぞ!』と言わんばかりにリリー達の返事を待つよりも先にお冷やを向かい合うように置き、一礼をして去っていった。


二人はその場で固まったままであったが、周りのお客や店員の目に気付き、大人しく向かい合うように座った。




ー(幕間)ー




「はぁ~・・・」


先程、リリーとゴメスを案内したメイドさんは、厨房に引っ込むなり深くため息を付いた。


「あら?そんなため息をついてどうかしたの?」


「あっ!店長・・・」


落ち込んでいるように見えたメイドが気になって、丸いメガネを掛けた青髪ロングの美女メイドが寄ってきた。


「聞いてくださいよぉ~!ほら、あそこに座っている二人組・・・。あっ!いつもは三人で来るんですけど、いつもお冷やだけでなにも頼まないんですよぉ・・・。追い出しますか?」


「どれどれ?」


メイドの告げ口に気になった店長は、物陰からその二人の様子を見た。


視線の先にいるリリーとゴメスは向き合うように座っており、お互い頬を膨らませてそっぽを向いていた。


「ぶふっ!!」


その光景を見た店長は思わず吹き出してしまった。


「ど、どうしたんですか!?店長!!」


その店長の吹き出しに、メイドは驚いて背中を擦った。


「いやぁ、すまん、すまん。まぁ、いいんじゃないか?この店を荒らしているわけではないのだから・・・」


「は、はぁ・・・。店長がそういうなら・・・」


メイドはそう言いながらも納得がいかないらしく、何度も首をかしげていた。


「同じ境遇の動物には親切にしないと、ね!」


店長は小さな声でその言葉をメイドに言うと、再びリリーとゴメスを横目で見て、奥へと消えていった。


「??何か言いましたか?」


しかし、店長の言葉はメイドには届いていなかった。

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