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33・カラスその3

話は花とブラッディが出会う数時間前に逆戻る。


いつもの神社裏の、木が多く植えられている場所に例の3人はいた。


今回もリリーが、ブラッディとゴメスに花の話をしていた。


「私はどうしても、花を捕まえたいの!」


ゴメスに『諦めろ!』と言われ、珍しくリリーは声をあらげていた。


「しかしだな、カラスの子リリーよ。その花とやらを一度も捕まえることは出来てないではないか!」


「けど、私は諦められない。絶対に捕まえるわ!」


「あのね、二人とも落ち着いてよぉ・・・」


リリーとゴメスは、お互い顔を数センチのところまで近付け睨んでいる。それをブラッディが押さえている感じだ。


「ああ!もう、ゴメス、ムカつく!!」


バシッ!


リリーは八つ当たりでブラッディが持っているぬいぐるみを叩いた。


「ミミーちゃん・・・」


ブラッディは涙目で、ぬいぐるみの名前を叫び、頭を撫でる。


「あっははは・・・。相変わらず馬鹿な連中ね」


ふと、暗闇から女性の声が聞こえた。3人はびっくりしてその声がした方を向く。


振り向いた先にはいつの間にか二人の女性がいた。


一人は紫の髪を耳の上でツインにしており、グレーのつり上がってる瞳はその3人を馬鹿にするように見下していた。暗い青のゴスロリは膝上数センチで微かに風に揺れており、肩から袖と胸元は白いワイシャツみたいになっている。足首までの黒いブーツに、暗い青と赤の縞模様のニーソを履いている足は肩幅まで開いていた。


もう一人は、金髪の腰まで伸びた髪が体からはみ出すくらいに広がっており、その先端が女性の体を包み込むように内巻きに巻いている。うまく説明出来ないが、クレープの生地を具が見えるように包んでいると言えば分かりやすいだろうか?そのような髪型の女性は、両方の手首のところが広がっている深い緑のゴスロリを着ている。太ももまでの長さで爪先を露出させた茶色のブーツを履いて、紫のツインの隣に申し訳なさそうに立っていた。


「アザゼン・・・ベヒーモ・・・」


リリーは、バカにしたような目で見ている人物を睨み付け、二人の名前を呟くように出す。


「アザゼン?リリー!あんた何時(いつ)から私様を呼び捨てできるようになったの!?アザゼン先輩でしょ?せ・ん・ぱ・い」


紫ツインのアザゼンは、小悪魔のような笑みを浮かべてリリーに寄ってきた。


「あわ・・・・。あわわわ・・・。あーちゃん。こ、後輩いじめはダメだよ・・・」


金髪のベヒーモは、おどおどしながらアザゼンの腕にしがみつく。


「はぁ!?あんたが先輩!?たった1日早く人間になれたからって、先輩面しないでくれる?」


リリーもムキになり、アザゼンに寄ってきて睨み付ける。


「あ、あのね、り、リリーちゃん。喧嘩はよくないよぉ・・・」


ブラッディはリリーの腕にしがみつき、今にも喧嘩しそうなリリーを止めていた。


「なんだか鏡を見ているようだな・・・」


ゴメスは呑気に腕を組んで、リリー、ブラッディ組と、アザゼン、ベヒーモ組を見比べて笑っていた。


「だいたい、あんた達は何しにここに来たのよ!!」


「・・・・・わあっ!!」


リリーは、腕にしがみついているブラッディを振りほどき、腕を組んでアザゼンを見下すように言葉を吐き捨てる。

ブラッディは振りほどかれた拍子に、地面へとド派手に転んでしまった。


「決まってるじゃない!あんた達を笑いに来たのよ?噂では、子猫一匹もろくに捕まえることができないみたいじゃない?・・・・あっははは!ばっっっかじゃないの?」


「・・・・・きゃっ!」


アザゼンは、腕にしがみついているベヒーモを振りほどき、お腹を抱えて笑っていた。

そして、ベヒーモもブラッディと同様にド派手に転ぶ。


「うるさいわねぇ!いい?花はね、とても手強いのよ!!」


「はぁ?花ぁ?その子猫があんた達が苦戦している相手なの?」


「・・・・・」


アザゼンとベヒーモは、いつもリリー達の獲物を横取りする悪質なカラスであった(っといってもベヒーモは強制的にアザゼンの手伝いをさせられている)。

リリーは、つい狙っている子猫の名前を出してしまい、しまった!という感じでアザゼンの質問を黙秘した。


「ねぇ、そこのゴメス!花とかいう子猫をターゲットにしてるの?」


「・・・・・」


ゴメスも俯き、なにも答えない。


「ふっふっふっ・・・。我は偉大なるルシファー様の側近、パティン!さぁ、ルシファー様!我に生け贄の名を叫ぶのです!」


アザゼンはゴメスに手を差し伸べ、中二っぽい台詞をハキハキと言った。


「はっ!我は堕天使ルシファー!くっくっくっ・・・。我らが生け贄に選んだ、子猫は━━━━━━」


「うっさい!ゴメス!!」


「ぐはっ!」


リリーはすかさずゴメスにアッパーをお見舞いした。ゴメスは数メートル飛んでいき、地面へと頭から倒れる。


「チッ!もう少しだったのに・・・」


アザゼンは、舌打ちしながら指をパチン!と鳴らした。そして、ブラッディを睨むかのように見つめる。


「ひっ!!」


ブラッディは、あまりにも恐さに数歩後退りをした。


「ねぇ、ブラッディちゃーん!花ってどんな子猫かなぁ?」


アザゼンはぎこちない笑顔をブラッディに見せる。その笑顔はとても不気味で、小さな子供がいたら間違えなく大声をあげて泣き出すだろう。


ぷるぷるぷる・・・。


ブラッディは、恐怖のあまり激しく左右に頭を振り、知らないアピールをする。


「そんなに怯えないで・・・。お・ね・が・い!」


とても恐ろしい笑顔のまま、じりじりと距離を縮めるアザゼン。


「し、知らない!ボクは知らないよぉ・・。あ、あの、あのね・・・。シャムの子猫で、人間の姿だとフードを被っているってボクは知らないよぉ・・・」


「「・・・・・・・」」


ブラッディが意外と丁寧に喋ってくれたことに、リリーは開いた口が閉じず、アザゼンは『良い情報を得た』と言わんばかりにニヤリと笑っていた。


「あっはははは!花ちゃんの情報をゲットーン♪もうここには用はないわ!じゃあねーん♪3馬鹿トリオ~☆」


アザゼンは、散々三人を馬鹿にしたように台詞を吐いたあと、カラスの姿になり、住宅がある方へ飛んでいった。


「あっ!待ってよ~!あーちゃーん・・・」


ベヒーモもアザゼンの後を追って飛んでいく。


「「「・・・・・・・」」」


取り残された3人は沈黙が続き、まるで嵐が去ったような静けさのようになっていた。


「あっ!」

「えっ?」

「おっ?」


沈黙していた3人は、ふとアザゼンの台詞を思い出し我に返る。


「3馬鹿トリオですってぇ!?」

「3馬鹿トリオだとぉ!?」

「3馬鹿トリオなの!?」


リリー、ゴメス、ブラッディは、まるで息が合ったように大声で叫んだ。


(なんで3馬鹿トリオなのよ!私とブーは違う・・・。ゴメスが変な台詞を言うから私達まで馬鹿扱いされたじゃない!)


リリーはそう思い、ゴメスを睨み付けた。


(さ、3馬鹿トリオだと!?この堕天使ルシファーの我が・・・。我とブラッディは違うぞ!リリーが馬鹿だから我等も馬鹿扱いではないか!)


ゴメスはそう思い、リリーを睨み付ける。


(3馬鹿トリオ?ボクも、リリーちゃんも、ゴメスくんも違うのに、なんで3馬鹿トリオなんだろう?)


ブラッディはそう思い、一人首を傾げていた。

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