32・追跡者
私は走った!仔猫の時より、今は人間の姿の方が早く走れるから、人間の姿で走っていた。
「うわぁ~ん!待って~!待ってよぉ・・・」
後ろから、ブラッディの泣き声が聞こえ、私は走りながら振り向く。
ブラッディは走るのが苦手なのか、若干よろけながらも涙目で必死に私を追いかけてきていた。
私はブラッディと距離があったから走る足を止めた。すると、ブラッディの表情は、涙目からふぁ~っ!という効果音が似合うかのように明るくなった。
そして、ブラッディと私の距離が近くなった時に私は逃げる。後ろを振り返ると、ブラッディの表情が再び泣きそうな顔になって、必死に追いかけてきていた。
「お、お願い・・・だから・・・・ま、待ってよぉ・・・」
ブラッディは息を切らしており、私にかける言葉も途切れ途切れになっている。
「わかった。待つよ」
私は走るのをやめ、ブラッディの方を振り返る。
「だから、そこで止まって!」
私は右手をパーにしてブラッディに向けて前に出す。ブラッディは、その条件反射でその場で止まり、止まったときに今までの疲労が一気に来たからか「はぁ・・・はぁ・・・」と大袈裟っぽく呼吸をしている。
「なんで、私を追いかけるの?リリーに頼まれたから?」
私はブラッディの呼吸が整えるのを待ち、質問した。
「ち、違うよ。ボクの独断だよ~」
「独断?」
意外な言葉であった。てっきり、あのわがままリリーのことだから、仲間全員に私を捕まえるように言っているのかと思った。
「そうだよ。だから、大人しく捕まってよぉ」
涙ながらにブラッディは、ゆっくりと私のところに寄ってくる。私は、観念したかのように目を閉じブラッディに身を委ねようとした。
ブラッディは、それが分かったのか表情が徐々に明るくなり、私の所へとるんるん気分で迫ってきた。
「花ちゃん、捕まえた!」
前から私の腰辺りをハグするかのように、ブラッディはぎゅっと私を掴んだ。
私は、腰の所をハグしているブラッディを見てみると、私に甘えてくる小動物みたいなオーラを出していた。
しかし、この娘は敵である。このあと何をされるか分からない。
「今だ!」
私はそう叫ぶと、ブラッディの頭に思いっきりチョップをした。
「うわーん、うわーん!痛いよぉ!!」
ブラッディは、ぬいぐるみごと頭を抑え、その場にしゃがみこんでしまった。
そのあと、私は商店街まで休むことなく走った。間取浜商店街の看板が見えたとき、後ろを振り返りブラッディが追ってきてないか確認した。
振り返った先は、暗闇が広がっており、生き物の気配などはなかった。
普段は不気味な光景だけど、今の私はそれに安心した。どうやら、無事にブラッディから逃げられたようだ。
「ふぅー。ある意味手強い相手だった」
私は安堵のため息をつき猫の姿に戻ると、ダンボールの中へ入っていき深い眠りについた。




