31・逃走
猫のぬいぐるみを撫でている、女の子の姿をした男の子は、とても可愛かった。
「そ、そんな・・・。とても可愛いのに・・・」
私は、何故か負けたような気がして数歩後退りをしていた。
「あなたは・・・誰なの?」
とても不思議な男の子。人間ではなさそうな気がした。猫のぬいぐるみを持っているから猫かと思ったが、猫の集会にいたらすぐに分かりそうだ。っということは、最近人間の姿になれた猫かもしれない。
私はそう思い、可愛い男の子に近付いていった。
「あのね!ボクの名前はブラッディっていうんだよ。それに、ボクよりも、花ちゃんの方が可愛いよ」
「えっ!?」
私はその言葉を聞いて、足を止めた。私はブラッディに一度も名前を名乗ってなかったのに、名前を呼ばれて驚いた。
考えられることはある。集会に来ている猫の知り合い。リリーの仲間。夜のワンダホー関係者。
この中でどれだろう。リリーの仲間以外は、恨みを買わない限り、私の味方のはず・・・。
「ねぇ。なんで私の名前を知っているの?」
私は、そう聞いた後すぐに後悔した。リリーの仲間なら、本当の事を言うはずがないからだ。それに、嘘で、夜のワンダホー!関係者か、猫の仲間と言ったときに私は嘘を見破れるか分からない。
しかし、自分が言ったことは撤回はできない。ブラッディが口を開くのを待った。
少しの間の時間がとても永く感じる。
まるで全てがスローモーションで、ブラッディが口を開こうとしているのもわかった。
「えっ?あのね、リリーちゃんがね、『花!花!』言うから覚えちゃった!」
ブラッディは、八の字の眉のまま笑顔で言う。とても可愛い。・・・って、そうでなく、リリーの名前がご丁寧に出たところで、私が取る行動は一つ。
私は180度体の向きを変え、全速力で走った。




