1・シャム猫
こんにちは。
主人公の登場です。
私はシャム猫だ。
産まれて数ヶ月の野良猫だけど、今日の夜はいつもと違う感じがする。
とても体に違和感がある。
私は私のこの体は知っている。それは私の苦手な人間そのものだ。今日は何もない小さな空き地で寝ていた。そして、気がついたらこの様な姿になっていた。
「えっ?私って人間になったの?」
私は戸惑い、両手を広げ右手と左手を交互に見る。今、気付いたが言葉も喋れるようだ。そう、本当に人間になったようだ。
猫の時は裸なのだが、何故か服一式揃っている。私は恐る恐るしゃがみこんで私の足を触ってみる。
これは人間が履いている靴というものだ。私は茶色の革靴を履いている。そして、膝まである黒いくつ下、確かニーソとかいうものだと思う。上はパーカーを着ている。髪の毛は茶色で背中まであり、先っぽが癖っ毛である。ミニスカートを履いている。このスカートというのは不思議だ。
(人間はこんなものを履いて生活しているのか・・・)
私はスカートの下を両手で持ち、思いっきりバサバサと上下に動かした。
スカートを動かすと、スカートの中に風が入りひんやりとする。
「あっ!涼しい!そして、楽しい!」
スカートの下をバサバサするのが楽しくて私はずっとしていた。
「あっはははは!!」
しばらく経ち、私が何も考えずバサバサとしていたら、とても大きな女性の笑い声が聴こえてきた。声の方を振り向くと私と同じ背の高さの女性が数メートル先で笑っていた。服装は赤と黒のゴスロリでストッキングを履いている。黒い髪は肩までで左側の髪を結んでいる。
「あんた面白いね!こんな面白い仲間を初めて見たよ!」
そう言いながら、私の方に歩み寄ってきた。
「私の名前はリリー。貴方と同じ猫だよ。よろしく!」
そう言って右手を差し出してきた。
「よろしくね、リリー。私は・・・・・」
そう言ったときであった。私には名前がないことに気付く。
突然いなくなった親猫から何か呼ばれていたような気がしたが、自分の名前を呼ばれるところだけがザァーザァーとなって思い出せない。
しばらく沈黙して考えた。
「ねぇ、どうしたの?」
リリーも私がいきなり沈黙するから首をかしげながら訪ねる。
私は真剣に考えていたので、そのリリーの言葉も聞こえなかった。
私の名前はどうしよう・・・。そう思ったときであった。私はあることを思い出す。
それは、前に公園を散歩をしていたときだ。赤や青など不思議で綺麗なものを見た。それに、とてもいい香り。私は思わずそれに見とれていた。
(わぁ~。綺麗だな。これって何て言うんだろう?)
そう思って、その不思議なものに見とれていたときであった。
「わぁ!ママー!見て見て!いろんな色がたくさんあるよー!」
「そうだね、綺麗だね。それはね、『花』って言うんだよ」
「はーなー?」
「うん。平仮名では『はな』と書いて、漢字では『花』こう書くんだよ」
「んー。わかんなーい」
「フフフ・・・。まだ早かったわね」
そう言って女の子が走ってきてその『花』っていうのを見ていたのを思い出した。その子のお母さんは地面に木の棒で『花』と書いていた。
「花!」
と、私は思い出したように言葉に出した。
「はな?」
リリーは私が突然出した言葉に、首をかしげて復唱した。
「私の名前は、花!」
と言うことで私の名前はたった今、『花』になった。
「そっか。花って言うんだね?よろしくね、花」
そういって再び私に手を伸ばすリリー。
「うん!」
私もそう言って右手をリリーに出そうとした。
その時であった!
「待ちなんし!」
私の後ろからとても色っぽい女性の声が聞こえてきた。
私が振り向くと、右目の下に泣きぼくろがある見た目歳上の美女がいた。その女性は髪は熟れた柿の色で背中まであり、うなじのところで一つにまとめている。抹茶色の和服を着て山吹色の帯を締めている。裸足に女性用の下駄をカラン、カランと鳴らしながらこちらに歩いてきた。
和服の女性はいったい!?