12・土管
土管の中から出てきた猫は、一匹は白猫で、もう一匹は茶色に黒の縞模様の猫である。どうやら私を睨み付けているようだ。
「きさま!どこの誰か知らんが、カキの姉御の場所に立つとはいい度胸しているじゃねぇか!」
茶色の猫がすごく大きな声をあげている。白い猫の方はただ私を睨み付けているだけで、何も言ってこない。
「もしや、カキの姉御の座を狙う奴だな?そんなやつはこの『ゴンゴドラス』が許さんぞ!!」
茶色の猫は今にも私に飛びかかろうとしている。
「ゴンゴドラス?えっ?今、ゴンゴドラスって言った?」
「おう!俺はゴンゴドラスだが、それがどうしたよ?」
「ゴンゴドラス。私だよ!花だよ!」
「花って、昨日カキ様が連れてきた、あの花かい?」
私は自分の名前を名乗り、私だと知るとゴンゴドラスは警戒を解く。それに睨み付けていた白猫も驚き私に聞いてきた。
「そうだよ!昨日会った花だよ。」
私はゴンゴドラスと白猫に言う。どうやら白猫も私の事を知っているようだ。
「ねぇ、ゴンゴドラス。そちらの白猫さんは誰なの?」
「えっ?ああ!僕だよ!エディバーだよ!」
白猫は私に寄ってきた。そっか、あの新聞配達をしているというエディバーだったのか。
「ところで、花は土管の上で何をしてたんだ?」
ゴンゴドラスは私が花だと知ったときは笑顔だったが、真面目な顔になり聞いてきた。
「ごめんなさい。実は15歳の女性がどんな感じに生活をしているか知りたくて、うろうろしていたらここに辿り着いて、昨日の集会を思い出して登ってみたくなっちゃって・・・。」
「がっはっはっは!そっかぁ。お前は面白いなぁ。し、しかも、土管の上で立派に雄叫びまであげて!」
事情を知ったゴンゴドラスは私が土管の上での行動を思い出し、笑いながら2、3回転がっていた。
「は、ははは。ご、ゴンゴドラスさん。そ、そんなに笑ったら駄目ですよ。」
そういうエディバーも笑っているようだ。
「もう!そんなことはいいじゃん!笑わないでよぉ。は、恥ずかしいよ。」
私は顔が赤くなりモジモジする。もう、ここにいたらずっと笑われ続ける。私は笑い転げている2人をそのままにしてその場を後にしようとした。
「おーい。どこに行くんだい?」
笑いが治まったのか、エディバーが私の背中に叫んできた。
「ここでまったりは出来ないの!私は15歳くらいの人を探さないといけないんだから!」
私は振り向かずに歩きながらエディバーの質問に答えた。
「あー!そうそう!いい忘れていたけど、今の時間は15歳くらいの少年少女はいないぞー!」
再び私の後ろからエディバーの声がする。私はピタリと止まってしまった。
この時間に少年少女が居ないとはどういうことなんだ?
私はもっと人間の事を知る必要があるようだ。