10・朝
チュンチュン。という雀の鳴き声で私は目を覚ました。リリーが恐かったので、塀と塀の隙間で眠っていた。隙間の外は太陽の光に照らされており明るい。
私は隙間の出口まで歩いていった。太陽の光が私の顔に当たる。
「みー!」
私はあまりにも眩しく目を閉じる。眩しいので薄目で辺りを見回すと、近くに電柱があることに気付く。
トコトコトコ・・・・・。
私は早歩きで電柱に向かい、すぐに電柱の影に隠れる。
(私は日影に生きる猫なのか?いや、そうではない。暗闇からいきなり出たから眩しかっただけだ。)
私はそんなことを思いながら、日に慣れた目を電柱の影で開けた。
今は何時だろうか。もう7時は過ぎただろうか。私はシャム猫の子猫の姿だ。残念だが、今、私がいる場所には時計がない。
「あー!ねこちゃんだー!」
私が電柱のところで時間を気にしていると、水色の服にスカート、黄色い帽子を被った女の子が駆け寄ってきた。私は逃げようとしたのだが、子猫の姿では足が遅く逃げれない。
私は逃げるのを諦め、女の子にされるがままな状態になった。まずは力一杯に撫でられた。
「みー!!」
私は力加減を知らないナデナデ攻撃に『痛いよー!もっと優しく撫でてよー!』と訴えたのだが。
「あはは!このねこ、よしよししたら、よろこんでないた。」
と女の子は笑うのであった。ダメだ!猫の姿では言葉が通じないみたいだ。
次に女の子は左手で私を無理矢理持ち上げるのだ。あまりの高さに私は前足後ろ足をぴーんと伸ばす。
「ね~このおっひげ~。おっひげ~。」
女の子は歌うように言いながら、右手を伸ばしてきた。私は自分のヒゲのピンチと思い、前足の肉球を伸ばし女の子の手のひらの真ん中を押して阻止をする。
「なに?ここ?きもちいい~。」
ヒゲを触ろうとしていた手は私の前足を掴み、そのまま私の肉球を親指で何回も押す。
「そこで何してるの?早く幼稚園に行くわよ?」
少し遠くで自転車を押している女性が私を掴んでいる女の子に向かって叫ぶ。
「わかった~。」
女の子は振り向き大きく返事をする。それと同時に私を掴んでいた手はパーになり、私は地面に落下した。
一瞬びっくりしたが、私は着地は得意だ!綺麗に着地を決める!
「みー!」
私はいきなり手を離したことを怒り、女の子に向かって威嚇した。
「うん!ねこちゃんまたね!」
私の威嚇には気にもせず、女の子は笑顔で私に手を振った。
まったく!酷い目にあったものだ!私は小さな歩幅でトコトコと歩き出した。
『間取浜公園』
少し歩くと見覚えのある公園へと辿り着いた。どうやらリリーから逃げているときにぐるっと回って公園の近くに戻ってきていたらしい。
私が公園に入ると、砂場のところで数人の子供が遊んでいた。少し離れた場所にあるベンチにその子供たちの親だろうか、女性が数人が話に夢中になっていた。
私は素早く自分よりも高い雑草の中に入り息を潜める。また、子供に見つかり酷い目にあいたくないからだ。雑草の隙間から公園を見ていろんな人間を観察する。
無邪気に砂場で遊ぶ小さな子供たち。お手本にしようとする人間としては幼すぎる。
私の人間での歳は確か15歳の女の子だった。私は想像して見た。
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「きゃはは!きゃははは!」
無邪気な笑いと共に走っている人間姿の私。
「きゃはは!お~やま!」
私はしゃがんで砂場でお山を作る。
「そ~れ!ドーン!!」
私は勢いよく作った砂の山を思いっきり崩した。
「きゃはは!きゃはははははは!」
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私はすぐ首を振る。これじゃあ、ただのバカな子だ。子供ではなく、子供の親の方を見てみる。
こちらはうまく言えないが、違う感じがする。私は再び想像して見た。
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「おーっほっほっ!シャテットさん?髪が少し乱れてましてよ?」
私は右手を口のところに当て高笑いをする。
「あ~ら、ウェルなんとかさん?あなた名前が長いザマス。」
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ってこれも違ーーーう!!ってか私の想像は、ウェルさんに失礼じゃん!
「みー。」
私は近くにお手本になりそうな人間がいない事に小さなため息をして、その場を後にした。