番外『エイプリルフールネタ』
「そーま。今なんで私たちここにいるの?」
時刻はもう深夜に差し掛かろうとしている。締め切られたカーテンのその向こうに光は無く、ただ広い闇がそこに口を開けていた。
今俺と利理はこの暗い部屋の中で二人、じっとしていた。
何も会話をすることなく、二人でずっとじっとしていた。ほんとになにもせずに。
お互いの呼吸音と動く際の僅かな物音、時計の針が動く小さな音さえも反響するほどの静けさの中、ふと利理がその静寂を裂いた。
「ねーそーま、どこ?暗くて見えないよ。電気付けていい?」
「だめだ。じっとしてろ。」
「えー。」
俺の指示に口を尖らせる利理。俺はとっくに暗闇に目を慣れさせていたのでうろうろする利理の姿が見えている。
右往左往して・・・結局ベットに倒れこんだ。
ここは俺の部屋である。静かに電気を消して深呼吸を繰り返し、意識を整える。
(・・・そろそろ頃合いか。)
暗闇に慣れた目で時計を見ると丁度日付が変わった時間帯へと変わっている。
「俺さ。お前のこと・・・好きなんだ。俺と付き合ってくれ。利理。」
「え、えと・・・?って!エイプリルフールだからって私にそんな嘘ついちゃだめでしょ!・・・一瞬本気にしちゃったじゃん。」
暗闇でも残念そうに肩を落とすのが目にとれる。残念そうにってなんだよオイ。
だが今回は嘘を吐いているわけじゃない。こんな嘘ついても面白くないからな。
「これ見てみろよ。」
そう言って俺は暗い部屋で利理に向かってスマホのロック画面を表示させる。
その場だけがスマホから発せられる光によって明るく照らされる。
「4月・・・2日。午前0時3分。」
「どういうことか分かるか?」
パチン、と電気のスイッチを押して部屋を明るくする。
電気に照らされて浮かび上がった利理はすごく顔を赤くさせていて。
「本気・・・なの?」
「―――こうすれば分かる?」
そっと忍び寄るとわずかに後ろに下がる利理。
その手を少し強引にではあるが掴み、壁に押し付ける。
「そー・・・ま・・・?んっ!?」
次の瞬間、俺は驚きで極限まで目を見開いた利理の唇を奪った。
「んっ…ひゃっ・・・そーま!?」
「いやだった?」
「いや…じゃないけど…やられっぱなしは性に合わないよ!そーま!」
壁に押し付けられていた状態から、一瞬で俺をベッドに押し倒す利理。先ほどのキスで何か変なスイッチが入ってしまったのだろうか。
にしてもすごい力だ。おかしいだろ男の俺が一瞬でこの体制に持ってくるなんてどういう力してんだ。
そんな俺の思考をよそにうるんだ瞳で恍惚とした笑みを浮かべながら俺の上にのっかる利理。
「お、おい・・・?利理?」
「ねぇ。一緒に、なろ?」
その瞬間、利理によって空気の供給が絶たれる。
利理の唇の間からねっとりとした舌が俺の唇を割って中に入ってくる。
俺の口の中をかきまわすように舌が蠢いていて、俺の唾液を吸い取ると同時に、向こうから別の液体が送られてくる。
「ぷ・・・はぁ。」
空気を求めて一瞬唇を話すと唾液が銀色の糸を引いて垂れて落ちる。
その光景はあまりに煽情的で。
夜はまだまだ終わりそうにない。