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「このまま四人でマンガ家をやりたい」

「…………おまえ、ほんとに高校生か?」

「ひっどいなー。お金とか税金とかまったくわかりませーん、って女の子の方が無垢でかわいいのはわかってますけどね」


無垢といえば聞こえはいいが、ハタチになろうかという男の場合は、無知だと言われても仕方がない。

紫苑は反省した。


「いや、俺が悪かった。五十万だ百万だって金を動かしてるんだもんな。それでルールに無関心な方がおそろしい。おまえがいて、チーたちは救われてるとおもう」


と、杏が照れ笑いとも苦笑いともつかない表情を浮かべた。

紫苑に寝返りをうつよう指示してから、今度は左の内腿をほぐしにかかる。


「ほんとはね、夢を語りつつ、趣味で楽しくやってるだけでいい年頃なのかなともおもうの。でも、あと一年したら、千夜ちんたちも進路を考えなくちゃでしょ。そのとき、プロの道が開けてるか先が見えないで不安になってるかで、選択も変わってきますよね。どうしても、私はこのまま四人でマンガ家をやりたい。誰にもあきらめて欲しくない。だから──安心できるだけの実績を作りたいんです」

「そのためには売れなきゃ、か──」


こっくりと杏がうなずき返す。


「将来的には、自分たちで好きに描ける場所や需要を生みだすことも考えてます。今は、出版だけの時代じゃないから。でもそのためにも、まずは私たちの作品を読んでくれるファンをひとりでも多く獲得しないと」

「なるほどな」


おもっていたほどやみくもに利益を追及しているわけではないこと、めざすところはあくまで四人でマンガを描きつづけるという形態の維持にあるのだということがわかって、紫苑は何だかほっとした。

同時に、ひとりであれこれ思案している杏を、いじらしくもおもう。


「俺のまわりに、おまえみたいに現実的だったり才覚のあるやつはめずらしいから、正直おどろいた。芸術畑の人間って、そのあたりがどうにも抜けてるんだよな」

「そうだね。現実とか利益を考えてちゃ、彫刻家になろうとはなかなかおもわないよねー」


ぐっ、と紫苑はことばに詰まった。

石工が必要とされていた中世のヨーロッパじゃあるまいし、そんなものになったとして生活していけるのだろうかとは、いちおう紫苑も不安にはおもっている。

親友は、顔を見るたびにおまえはマンガ家になった方がいいと言うし、紫苑自身、その方がましな生活ができるだろうと頭の隅ではずっと考えていた。



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