表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/124

美少女と巨乳眼鏡

十畳ほどのリビングはそのままダイニング、キッチンへもつながっていて、白壁の広々とした空間には見知った家具が置かれていた。

が──


「みてみて、従兄のしーちゃんでーす!」


リビングのローテーブルとパソコン机からそれぞれ振り返った顔は、祖父母のものなどではなかった。

ひとりはなんでこんなところにとおどろくほどの美貌の持ち主、もうひとりは顔よりもつい胸元に目がいってしまう、いずれも、千夜と同世代の少女にしか見えない。

そのときになって、紫苑はようやく異変を悟り、部屋の中を見回した。

──と、目に入ったものに、内心青くなり、顔だけは盛大に赤くする。


「おい、チー……!! なんだアレ、あんなもん部屋の中に堂々と干すなっ!」


ピンクやら薄ピンクやら赤やら白やら、レースやらフリルやらリボンやら────およそ紫苑には正視し難いフォルムの布製品が、エアコンの風に揺らいでいた。


「だって、ここ二階だよぉ。外に干してたら、下着どろぼうに持ってかれちゃう。あの白いレースのとか、高かったの。お気に入りなんだからね」


そんなの聞いてねえ、と紫苑は心の中で叫んだ。

しかも、千夜のものだけならいざしらず、ひとり分にしては数が多すぎる……ような気がする。

紫苑は、それ以上考えるのはやめにした。


「帰る……!」

「だから、ダメだってばぁ」

「だったら、せめてべつの部屋に干してくれ」


紫苑の懇願に、わかったよぉ、と千夜がふてくされた声を出す。

すみません、すぐに移しますから、と恥ずかしそうに謝ってくれたのは真名だった。


「従兄くんは初でカワイイですなー」


ローテーブルにほおづえをついてにんまりと笑ったのは、胸元にソフトボール大のふくらみがふたつある、セルフレームのメガネをかけた少女だった。


「つーか、男なんか呼ぶからよけいな手間が増えんじゃん! 女の部屋にノコノコくるなんて、ヘテロでしょ? ぜったいヘテロだよね。ヘテロなんてお呼びじゃねーのよ!」


ペンタブレットのペン先を紫苑に向けて、端正な顔の美少女がなぜか敵意にも似たものを投げつけてくる。

紫苑はたじろいだ。


「……おい、チー。ヘテロってなに?」

「うーん。ノンケなひと? つまり、ホモじゃなくて、女が好きな男、じゃないの」


紫苑はあぜんとした。

ごくふつうの健康的な男子である、という理由で差別されたのは生まれてはじめてだった。

同時に、性差別とはかくも理不尽なものなのか、と紫苑はおもい知らされる。

女の子が好きなのも、美少女を見ればとくべつに胸がときめくのも、やめろと言われてやめられるようなものではない。

べつに好色なきもちで相手を見たつもりはなかったが、紫苑は彼女をなるべく見ないようにしよう、とおもった。

できることならこのまままわれ右をして帰りたいが、下着を干したパラソルハンガーを移動させていく真名の手前、それもできない。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ