第六話 魔法の原理
人は大抵のことは出来るらしい。
でも、出来ないことも存在する。
ならば、普通なら出来ないことをやってのけた場合、人間はどう反応すればいいのか。
ルナに連れられて外に出た。
街はレンガで造られたものが多い。
一部は木材のようだ。
薄いクリーム色のような建物の中を歩いていく。
宿屋や武器屋や道具屋……まるでRPGだ。
すれ違う人は大体、剣を持っていて鎧をつけている。
つけてないのは商人だ。
「ちょっと道具屋を見てもいいか?」
「今はお金を持ってきていないので一度帰ってからにしましょう」
「はい」
道具屋をチラッと見ると明らかに怪しそうなピンク色をした液体がビンに入れられていた。ポーションだ。
(本当にRPGじゃねえか!異世界ってこんなんなのか!RPGの製作者は異世界行った事あるんじゃねえの?!)
なんて思いながら歩いていると町の外に出た。
ゲームで見たような平原。
草と岩が続いている。
(日本みたいに、道は繋がってないのね。なんか違和感あるわ)
平原を少し進んだところでルナの足が止まった。
結構歩いたな4kmくらい
しかし腹が減った。
昼飯はまだなのか……
こっちの世界に来てから腹が減る速度が早いような気がする。
異世界に来てから混乱しているせいだろうか。
頭で考えすぎか。
まあ、どうだっていい。
飯はうまい。
「ご主人様!お弁当持ってきました!」
リムが後ろから走ってきた。
とんでもない速度で。
「リ、リム……驚かせるなよ」
「すみません。これをどうぞ!」
中には卵サンドイッチとサラダ。
この辺りは農業が盛んらしい。
「美味しそうだ。ありがたくもらうよ」
「ではまだ仕事がありますのでそれでは!」
バビューンとか効果音が似合いそうな速度で帰っていった。
「リムってあんなに足早いのか」
「あれは魔石です。速度を上げる代わりに使用者の体力を大量に奪う。私は使用できません」
(マジか…申し訳ない
リムってルナより体力多いのな……
リムはメイドだから体力いるし…
もしかしてこれからも仕事なの?
とんでもなく悪いことしたんじゃ……)
帰ったらリムにお礼をちゃんと言おう。
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弁当は現世と変わらない美味しさだ。
いや、むしろ美味しい。
ルナもお腹が空いていたのがサンドイッチをモキュモキュ食べていた。
(よっぽどお腹空いてるのか)
俺の分もあげようとしたのだが、
「ご主人様は魔力を使いっぱなしなのでちゃんと食べないと空腹で死んでしまいます」
とか怖いこと言うので自分で食べた。
(俺魔力垂れ流しなの?制御できてないとかってこと?だからお腹減るの?)
深く考えるのはやめよう。
とりあえず魔法習えばなんとかなるだろ。
「ご主人様、それでは魔法を教えます」
急にキリッとした。
さっきのモキュモキュはどこいったのよさ。
「まずは一般的な火と水、風から教えます。」
おお、本格的。
俺もゲームとかで見たことあるよ。
メ○ゾーマとマヒ○ドとバ○クロスだろ。
俺はドラ○エ派だ!
「魔法は魔力があればだれでも使えます。
全てはイメージです。
火ならば熱いものをイメージすれば自然とできます。
あとはそれらを制御するだけです。」
イメージ…イメージか…
火は危ないからとりあえずマヒャ○にしよう。
目をつぶりイメージする。
冷たいもの…全てを凍りつくす氷河…白銀の世界…
「ふんっ!」
手の上にはちっさな氷が一つ。
冷たかったので地面に捨てた。
地面に落ちた時にカシャンと音を立てて生えていた草が折れた。
草が。
「え?」
「ご、ご主人様…」
ルナが真っ青な顔をしている。
ふと視線をあげると周囲が真っ白に凍っていた。
「うわっ!」
(寒っ!なんなんだよ急に)
「火球!」
ルナが手を挙げて叫ぶと手から眩しい丸いものが上に飛んで暖かくなった。
「ご主人様はバカなんですか!魔力が多いのにそんなに力を込めてはダメです!世界中を凍らせる気ですか!」
「お、おお…すまん……」
(結構マジに怒られた…ごめんよ)
「まあいいです。
火じゃなかっただけマシです」
プンスカって感じで怒ってる。
かわいい。
(真面目に聞かないとダメだな)
「魔法が制御できるまで、火は厳禁です!」
「はい……」
次からは気をつけよう。
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それからはすんなりと理解できた。
イメージをもって一回使うとそれからは何度でも使える。
ただやはり魔力には限界があるそうだ。
MPも枯渇するのだ。
俺は相当多い方らしい。
その辺にバカスカと魔法を撃ちまくってたらルナが驚いていた。
大抵の人は10回程度使えば魔力が枯渇し、魔法が出なくなる。
とはいえ、ルナも魔力は多い方だ。
俺が失敗するたびに魔法で元の状態に戻してくれた。
その頃には苦手意識は消えていた。
なんというか仲のいい近所の友達みたいだ。
その日の講座はそれまでとなった。
このままこの世界に留まってもいいが、俺はやはり戻りたかった。
あの世界、現世に。
またここに戻ってくるとしても、友達や家族に話がしたい。
色々置いてきてしまったのだ。
(あいつらに何て言おう)
思い浮かぶのは学校での友達との日々。
何もかもが唐突すぎた。
(とりあえず戻ればなんとかなるか
でも……あの世界で友達とワイワイして、楽しかったっけ?)
変な考えが頭をよぎった。
ブンブンと首を振って、さっきの考えを消す。
あの世界で退屈していた事は事実なのに。
ルナと町を歩いて帰りながらそう思った。