想い出

「ただいま」

小学校の授業が終わり家に帰ってきた。

僕には五歳の弟がいる

うちは母子家庭で、家にはあまりお金がなく、毎日きりきりの生活を続けていた。

母は優しく

僕らをとても可愛いがってくれている

ある時三人でスーパーに行った

すると、弟と僕はオモチャを見つける

欲しい

弟はすぐさま口にした

「ママ欲しい欲しい」

僕も欲しかったが、家の事情を知ってる僕は母の反応を見て素直に口にすることは出来なかった。

母は困っていた

お金がないことを僕は知っている

優しい母が本当は誰よりもこのオモチャを買ってあげたいと思っていたことは幼い僕でも分かっていた。

僕は気づかれない様に母の表情をちらりと見る。

あの困った母の表情を表現する言葉は僕には思い浮かばない

そんな母の姿を見て胸が痛くなった。

母は「ごめんね、今度絶対買ってあげるからね」

弟は周りの人や、母の気持ちなど何も知らず、構わず泣いた

「うわーんやだやだ欲しい」

母は弟をなだめ僕等は家に帰った。

その間、弟は泣きやむことはなかった。

本当は僕も欲しかった、でもそんな事は口にできない

きっと母は、そんな僕の気持ちも分かっていたのだろう。

母はこの時どんな気持ちだったのだろう？

僕はなんだか少し胸が痛かった

転んだ時は身体が痛い

なにも転んでもいない僕の胸は、どうしてだか転んだ時よりも痛かった。

それから数日くらいたった時

母がとても嬉しそうな表情を浮かべ

「スーパーに行こう」

そう僕らは、あのオモチャを買ってもらった。

とても

嬉しかった

ぼくも欲しかったもの

弟も欲しかったもの

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