王子は幸せだったのか?
この物語は、オスカー・ワイルド著「幸福な王子」を原案とした二次創作作品となります。二次創作作品が苦手な方は閲覧をお控えください。
ある王国の岡の上、人々を見渡すように像が立っていた。
この国が最も幸せだった時に造られたその像は、いつしか「幸せの王子」と呼ばれ大切にされた。
ツバメは旅をしていた。王国の岡の上に差し掛かった時、王子が泣いていることに気づいた。
「王子様、王子様。何故貴方は涙を流しておられるのですか。」
王子はルビーで造られた緋色の瞳から大粒のサファイアをぽろぽろと流していた。
「僕が生まれた頃、この国は豊富な鉱山資源でとても賑やかだった。今は鉱山も閉鎖されて人々は貧困に喘いでいる。
それでも僕を解体しないことに罪悪感を感じているんだ……。」
「ああ、王子様は何という優しいお方だろうか。私、とても感動致しました!」
「それなら、少し手伝ってくれないか?僕の王冠は金で出来ている。それを国の人々に届けてほしいんだ。」
「仰せのままに。」
そう言い、ツバメは王冠を細かく砕いて王国中にばら撒いた。
次の日、ツバメはまた王子が泣いていることに気付く。
「ああツバメさんか。あれだけの金だと人々は満足してくれなかったよ。次はルビーを配ろうと思う。」
「それでは王子様の瞳が…。」
「なに、大丈夫。どうせ解体される運命なんだから少しでも人の役に立つべきだと思うんだ。」
ツバメは涙を流しながら王子のルビーをばら撒いた。
また次の日、ツバメは彼が浮かない顔をしていることに気付く。
「王子様、人々は満足されなかったのですね。」
「その声はツバメさんか。やっぱり駄目みたいだ。これは最期の頼みだけど、僕の身体を解体して配ってくれないか?」
「王子様、貴方は優しい方です。貧しい人々の為に自らの身体を犠牲にするなんて……並大抵の覚悟では出来ません。貴方がそれを望むなら私はやり遂げましょう。」
そう言うツバメの顔は不思議と晴れ晴れとしていた。
幸せの王子は幸せそうに微笑んだ。
「ああ、またこれだよ。」
人々は口々に呟いた。
鉱山資源が豊富なその王国にとって、宝石は道端の小石ほどの価値も無いものだからだ。
バットエンド。




