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俺は、自分の性格をなおすにはどうしたらいいんだろうと一瞬考えたけれど、そんなことできっこないと、たちまちその方面の努力をやめた。
「でさ、今度はエンタメでいくって、言ってたよね」
明が淡々とした口調で訊いてくる。
「うん。言った言った。今度はエンタメや」
「確か、そろそろその最初の新人賞への締め切りだと記憶しているけど、書けたの?」
「書けない。まったく書けない。気持ちいいほど、一字も書けへん」
「仕事、忙しいのか?」
「忙しいっちゃ忙しいが、暇っちゃ暇」
「あいかわらずか」
明は、妙に納得した顔でうなずいた。俺はそんな明の表情にうれしくなって、ガキみたいに変顔をしてやった。
「よっしゃん。ときに募金とかした?」
明は、俺の変顔のことは無視すると決めたようで、話を変えた。
「ん? 募金。AKBのやつとパチンコホールのやつで少しやな」
「会社とかは?」
その言葉で、俺は明が、震災後すぐさま、代理店資格を受けている親会社にかけあって、すべての会社から募金を引き出したことを思い出した。
「いくらかは送ったみたいやな。せやけど、うちはそんな大手やないし。しれてるけど」
「しれてるけど、何?」
「いちいち怒らんといてえな。なんかずっと叱られてるようで辛いわ」
「叱ってるわけじゃないけど、なんで何もしないのかなぁ、ってさ。いや、それが悪いとかって言ってるわけじゃなくて」
そこで明は口をつぐみ、考えるしぐさを見せた。やがて、
「よっしゃん、ずっと小説を書いてるだろ。それって、何のため? よっしゃんの小説が書けたとして、それは誰のための、何になるの?」
と続けた。
「そんな小難しいこと考えたことあらへん」
「だったら、今、考えろよ」
ちょっとびくりとするとほど強い口調で明が言った。