表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の祈り  作者: 銭屋龍一
柿木の家
4/17

3

 俺は、自分の性格をなおすにはどうしたらいいんだろうと一瞬考えたけれど、そんなことできっこないと、たちまちその方面の努力をやめた。

「でさ、今度はエンタメでいくって、言ってたよね」

 明が淡々とした口調で訊いてくる。

「うん。言った言った。今度はエンタメや」

「確か、そろそろその最初の新人賞への締め切りだと記憶しているけど、書けたの?」

「書けない。まったく書けない。気持ちいいほど、一字も書けへん」

「仕事、忙しいのか?」

「忙しいっちゃ忙しいが、暇っちゃ暇」

「あいかわらずか」

 明は、妙に納得した顔でうなずいた。俺はそんな明の表情にうれしくなって、ガキみたいに変顔をしてやった。

「よっしゃん。ときに募金とかした?」

 明は、俺の変顔のことは無視すると決めたようで、話を変えた。

「ん? 募金。AKBのやつとパチンコホールのやつで少しやな」

「会社とかは?」

 その言葉で、俺は明が、震災後すぐさま、代理店資格を受けている親会社にかけあって、すべての会社から募金を引き出したことを思い出した。

「いくらかは送ったみたいやな。せやけど、うちはそんな大手やないし。しれてるけど」

「しれてるけど、何?」

「いちいち怒らんといてえな。なんかずっと叱られてるようで辛いわ」

「叱ってるわけじゃないけど、なんで何もしないのかなぁ、ってさ。いや、それが悪いとかって言ってるわけじゃなくて」

 そこで明は口をつぐみ、考えるしぐさを見せた。やがて、

「よっしゃん、ずっと小説を書いてるだろ。それって、何のため? よっしゃんの小説が書けたとして、それは誰のための、何になるの?」

 と続けた。

「そんな小難しいこと考えたことあらへん」

「だったら、今、考えろよ」

 ちょっとびくりとするとほど強い口調で明が言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ