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三日ほとんど寝ずに書き綴ったことが、すべてどうにもならないがらくだったなんてのはよくある話だ。
そんなことはちっとも苦にならない。
あるとき、本当に飛びっきりな奇跡が重なったようなとき、ふっ、と言葉が降りてきて、そいつが僕の心をたっぷりと暖めてくれるからだ。
もっとも書いたことが直接的に心温まる話とかではない。
あるときは殺人者が追い込まれ、罪もない人々に次々と襲い掛かっているようなシーンを書いていたって、そいつはやってくることがある。
長年不思議に思っていて、考えても、考えても、答えが出てこなくて、苦しくてしょうがなかったものが、十数年とか数ヶ月とか、長短様々な機会に、ぽろ、っと石が空中から現れたように降ってきて、コツンと僕の心にぶつかる。
そんな感じだ。
もう話したけれど、僕は僕のことしか興味がないのか、ずっと僕のことばかりお話にしている。
もっともその僕は、あるときは、大型トラックを転がすあんちゃんであり、またあるときは、彼氏を待ち続けるOLだったり女子高生だったりする。
僕は99%の嘘の中に、1%の本当を隠す。
だから僕は基本嘘っぱちを書いているわけだけど、そのせいでこれまでに何度も痛い目に合ってきた。
読者から、登場人物のひとりが自分ではないかと詰め寄られ、あるときは、喫茶店内で大泣きをされ、駆けて表に飛び出されたり、あるときは、そこまで本気で、と思うほどぶん殴られたり、まぁ、そんなようなことだ。
もうそれだけで僕は書くことを止めていてもおかしくなかった。
それでも、そいつが訪れるときの快感が忘れられず、僕はいまだに何かを書いている。
そいつは、なかなか落とせなかった女の子とやっと寝た夜と比べても、それほど遜色はない。
そこまでの快感。
止められるわけはない。
そう、思わないか?




