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風の祈り  作者: 銭屋龍一
光の橋
11/17

4

 三日ほとんど寝ずに書き綴ったことが、すべてどうにもならないがらくだったなんてのはよくある話だ。

 そんなことはちっとも苦にならない。

 あるとき、本当に飛びっきりな奇跡が重なったようなとき、ふっ、と言葉が降りてきて、そいつが僕の心をたっぷりと暖めてくれるからだ。

 もっとも書いたことが直接的に心温まる話とかではない。


 あるときは殺人者が追い込まれ、罪もない人々に次々と襲い掛かっているようなシーンを書いていたって、そいつはやってくることがある。

 長年不思議に思っていて、考えても、考えても、答えが出てこなくて、苦しくてしょうがなかったものが、十数年とか数ヶ月とか、長短様々な機会に、ぽろ、っと石が空中から現れたように降ってきて、コツンと僕の心にぶつかる。

 そんな感じだ。


 もう話したけれど、僕は僕のことしか興味がないのか、ずっと僕のことばかりお話にしている。

 もっともその僕は、あるときは、大型トラックを転がすあんちゃんであり、またあるときは、彼氏を待ち続けるOLだったり女子高生だったりする。

 僕は99%の嘘の中に、1%の本当を隠す。


 だから僕は基本嘘っぱちを書いているわけだけど、そのせいでこれまでに何度も痛い目に合ってきた。

 読者から、登場人物のひとりが自分ではないかと詰め寄られ、あるときは、喫茶店内で大泣きをされ、駆けて表に飛び出されたり、あるときは、そこまで本気で、と思うほどぶん殴られたり、まぁ、そんなようなことだ。

 もうそれだけで僕は書くことを止めていてもおかしくなかった。


 それでも、そいつが訪れるときの快感が忘れられず、僕はいまだに何かを書いている。

 そいつは、なかなか落とせなかった女の子とやっと寝た夜と比べても、それほど遜色はない。


 そこまでの快感。

 止められるわけはない。

 そう、思わないか?

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