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風の祈り  作者: 銭屋龍一
光の橋
10/17

3

 十代の終わりくらいから、明日もしかしたら俺は死んでいるかもしれない、と思いながら生きることにした。

 そう思うと、きょうをなかなか終わらせられなかった。

 それだけ生きることに執着があったということなのかもしれない。

 徹夜して本を読み、徹夜して物語を書き、徹夜して酒を飲み、徹夜して人を愛した。

 なにもかにも一生懸命だった。

 そのあげく、過労やストレス性障害で倒れたりもした。

 それこそ、そっちの方が本当に死んじまうよ、という生活だった。

 けれども今思い出せば、本当にまっすぐだった時期だったな、と、うれしくなる。


 始発電車に揺られ、恋した女の子のアパートに向かうときのドキドキ感は、すごく僕を高まらせたけれど、今では本当のそのときの感じは思い出せない。


 物語を残しておけばよかったのかもしれない。

 僕はその時代時代で書き記した物語を、その時代が過ぎたと感じた時点で捨ててきた。

 僕が僕である限り、どの物語も僕から消えていかないと信じていた。

 それはある年齢までは、そのとおりだった。

 だが、今は、それが違っていたことがわかる。

 それだけ実際の死に近づいたということなのかもしれない。


 あっけなく死ぬ前に、何かを残そうか、と、ときどき思う。

 この文章を書いている僕は、そちらの気持ちの僕だ。

 けれども、すぐに別の僕が顔を出す。

 何物にもなっていない物語を、そのまま晒すことは、止めるべきだ、という僕だ。


 今の時点で、そのふたりの僕に対する落としどころは、まず、書いてみるがいい、そして何物にもならないとはっきりしたら、墓場に捨ててやればいい。そんなところだ。


 ただはっきりするよりも前に、僕が死んでしまうことも充分あり得る話で、さじ加減が難しいところだ。

 まぁ、そこら辺りの保険として、今、ここにこうして晒しているってことなのかもしれない。


 まぁ、いいさ。

 少なくとも明日の朝日は、まだ見れそうだ。

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