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仮初めの王妃~3つの契約を課したのは、あなたですよね?~  作者: 景華


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21/31

21・Sideリリィ

 


「……どうして」


 鏡の前で、私は自分の両手を見つめる。

 細く白い指先に愛らしく整えられた外見。

 前と何も変わらない。

 それなのに……。


「……薄れてる?」

 私の、ルシアン様の番の気配が。

 あれほど強く、誰もが跪いた“絶対の証”が、わずかに……揺らいでいる。


「そんなはずない……」

 私は顔をゆがめ、唇を噛む。


 あり得ない。

 あってはならない。

 だってこれは、私が、私の完璧な力を以って完璧に“奪ったもの”なのだから。


 可愛いリリィ。

 皆に愛されるリリィ。

 それなのに市井で生まれ、孤児として育った私は、ずっと、自分の居場所はここではないと信じ続けてきた。


 だけど神様は私を愛していたのよね。

 私には幸運にも生まれつき魔力があった。


 ──擬態魔法。

 最初にそれに気づいたのは、孤児院の院長先生に擬態して孤児院の子どもを騙した時。

 この力、使える、って思った。


 だからたくさん練習して、完璧に擬態した。

 ルシアン様の番の匂いを。

 私にはルシアン様の番の匂いなんて実際はわからないけれど、強く念じればたとえわからなくても擬態ができるくらいに、私の訓練し尽くした力は完璧になっていた。


 それを誰にも見破られないように、強い匂いに変えて、王家の馬車が通るのを見計らって飛び出した。

 そして案の定、ルシアン様を騙すことができた。

 ルシアン様はもう私の言う事しか聞かない。

 私が王妃になるのももうすぐ。

 そう、思っていたのに──。


「……あの女」


 脳裏に浮かぶのは、あの人間の……”偽物”王妃の顔。

 何があっても凛として構えて、何もかもを見透かしているような目。


「ただの人間のくせに……っ!!」


 あの女が来てから、何かがおかしい。

 何かが狂い始めた。

 自分でもわかるもの。

 自分の番の匂いが、薄れ始めていること。

 ルシアン様も、私に強烈な情熱を傾けなくなってきたこと。


「……なら」

 ぎゅっと拳を握る。


「もっと強くすればいいだけよ」


 そう。

 足りないなら、増やせばいい。

 もっと濃く。もっと強く。もっと支配的に。

 誰も疑えないほどに────“完璧な本物らしく”。


「そうすれば、ぜぇんぶ、元通り……」


 私はそう自分に言い聞かせるように呟いて、宙を仰いだ。




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