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2・夫の番

 

 案内されるがままに通された謁見の間には、すでにたくさんの人が集まっていた。


 まっすぐに伸びたワインレッドのカーペット。

 その両脇には、鎧で武装した獣人騎士達がずらりと並び、前方にも国の重鎮であろう人物達が顔をそろえている。


 これだけの人がいるにもかかわらず、ひどく静かだった。

 なんというか…‥静まり返っている、というより、何かを“見極めようとしている”ような、緊張感を感じる。


 その中心に立つ男。

 長い銀の髪とピンと尖った狼のような耳。鋭い金の瞳。

 ただ立っているだけなのに、威圧感がすごい。


 ウルバリス王国の国王、ルシアン・ロウド・ウルバリス。

 私より7歳年上の、御年25歳の若き国王。

 前王妃であるお母上はルシアン様が子どもの頃に病気で亡くなり、お父上である前国王陛下も8年前に病で亡くしたルシアン様は、17歳という若さで国王になり、この獣人の国を治め続けている。


 ……なるほど、確かに“王”ね。

 威圧感だけなら、これまで会った誰よりも上だ。

 けれど────。


「……クリスティ・アルシェイル・マルボロか」

 その声は、ただただひどく凍り付いていた。


「はい。此度は──」

「形式的な挨拶は不要だ」


 そうぴしゃりと言葉を遮られる。

 思ってもみなかった露骨な拒絶に思わずぱちぱちと瞬きする。


 これはまた、随分と……想像以上に分かりやすいわね。

 町の人達以上に、はっきりとした拒絶。

 むしろここまで来ると清々しいくらいだわ。


 そしてそれ以上に気になるのが────。


「────ルシアン様」

 突然入り込んできた柔らかな声が、その張りつめたような空気を変えた。

「リリィ……」

 夫となるルシアン様の隣に立つ、一人の女性。


 淡い金色の髪から生えた同じ色の小さな垂れ耳。ぱっちりとした瞳の愛らしい顔立ち。

 だけど見た目に反してこの娘──かなり、強い。

 ”何が”という明確には言葉にできないけれど、直感がそう告げている。


「そのような言い方では、クリスティ様が驚かれてしまいますよ?」

「構わない。愛しいリリィとの今後の為なんだからな」

 迷いなく”愛しいリリィ”言い切ったそれに、嫌な予感が広がる。


 あぁ、まさか……この人は……。


 そしてルシアン様は、冷たい瞳で私を見下ろした。


「お前には最初に理解してもらう必要がある」

 抑揚のない声。

 その瞳はまるで、虫けらでも見ているかのよう。

 とてもじゃないけれど。自分の妻に向けるような目ではない。


「俺には番がいる」


 そうか、やっぱり……。そういうこと、か。

 すとん、と、一瞬で腑に落ちた。


 隣にいるあの可愛らしい女性。

 あれが────。


「彼女が私の……」


 ルシアン様の────。


「リリィだ」



 ──────────番。



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