表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/24

11・過保護になった護衛騎士


 あれから私は、なるべく市井に顔を出しながら、獣人族の実態についてを調査し始めた。


 人間であり人間の国で育ってきた私は所詮他種族。

 まだまだそのリアルな実態について知らないことが多い。

 変えていきたいのならば、まずは相手を知ることから──。そう考えたのだ。


 その日、私はカイルを連れてウルバリスの城下町に来ていた。

 予想以上に騒がしく賑わった町に、馬車から降りた瞬間、あっけにとられてしまったのは内緒。


 石畳の道を行き交う人々。

 多くの獣人とほんの少しの人間が混ざり合いながらどこか緊張を孕んだ空気は、番などという永遠なる絶対的な愛なんてものではなく、支配する者とされる者という関係性みたい。

 市場では肉の匂いと香辛料の香りが入り混じり、活気があるはずなのに、時折ふと、ぐわん、とねじれたような違和感が走る。


「……濃い、わね」

 私はハンカチーフを口元に宛て、小さく呟いた。


 この国に満ちているもの。

 それは理性ではない。秩序でもない。

 ――“番”への渇望だ。


 特に今は獣人たちの発情期の時期。

 普段よりよっぽど理性が消えている時期、というわけだ。


「大丈夫ですか、クリスティ様」

 隣を歩くカイルがさりげなく周囲を警戒しながら訪ねる。

「ん? ええ大丈夫。むしろ面白いわ」


 いや、面白い、というのもあれなんだけれど、人間にはないその衝動が興味深いのは確か。

 狂気じみているというのに、同時に、あまりにも純粋なんだもの。

 番を求める、その強い衝動が。


「ここまで“本能”に支配された社会は初めて見るもの」

「……誇れることではありませんが」

 カイルが呆れたように言うけれど、しっかりと私から離れまいと距離を詰める。

 最近カイルは私に対してかなり気を許してくれているように思うけれど、どうにも少し過保護になった気がしてならない。


「ねぇカイル、近い」

「このくらいでちょうどいいんです」

「いやすっごい近いから。ぶつかるわよ?」

「避けるので大丈夫です」


 避けるんかい。

 にしても、本当に近いし、すごく過保護。

 最近は本当にどこにいくにもついてくるし、食事だって必ず自分が毒味をするようになった。

 曰く、屋敷の人間は信用できないから、と。

 それでカイルに何かあったらどうするのかと前に聞いたけれど、騎士団長の息子として毒耐性は出来ている、とかなんとかものすごく物騒な発言をしてから、私が何か言うのは諦めた。

 私だって王女として毒の耐性はある程度付けているというのに。


「彼らが、本能に従うこと自体は悪いことじゃないわ。ただ──」

 私はふと、視線を遠くに向ける。


「制御できないのは、欠陥よね」


 そうつぶやいた、その瞬間だった。


 ──ドォォォオンッ!!


 突然、通りの奥で大きな衝突音が響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ