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短編連作 ほら~www  作者: あさき夢みがち


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距離(きょり)

その夢を見始めたのは、いつからだったか。 もう、思い出せないほど前だ。



夢の舞台はいつも同じ。


灰色の霧が立ち込める、どこまでも続く湿地。


俺はいつも、腐りかけた一本の木の前に、ただ立っている。


動こうとしても、足が泥に吸い付いたように動かない。



そして、必ず「それ」は現れる。



最初、それは霧の向こう、数百メートル先にいた。


ただの黒い人影のように見えた。


だが、それは明らかに「人間」ではなかった。


関節が一つ多いかのように、手足を奇妙な角度に折り曲げながら、一歩、また一歩と、確実にこちらへ向かってくる。



夢から覚めると、いつも体が鉛のように重かった。


初めてそれを見た翌日、俺は財布を落とした。




二度目に夢を見た時、「それ」は距離を詰めていた。


まだ遠いが、前回よりは確実に近い。


霧の中に、その輪郭が少しだけ濃く見える。


夢から覚めた日、飼っていたインコが、カゴの中で冷たくなっていた。




法則に気づいたのは、四度目の夢の後だ。



夢の中で、「それ」は湿地の半分ほどの距離まで近づいてきていた。


もう、人型であることははっきりわかる。


だが、その顔があるべき場所は、のっぺりとした影になっていて、何も見えない。




その日、俺は仕事で回復不能なミスを犯し、会社での信用をすべて失った。


わかってしまったんだ。


あの夢の中で、「それ」が一定の「距離」を詰めるたび、俺の現実世界から、大切なものが一つずつ奪われていく。




俺は眠るのが怖くなった。


睡眠薬を捨て、カフェインを浴びるように飲んだ。


だが、人間の体は限界を迎える。


三日後、俺は意識を失うように眠りに落ち、あの湿地に立っていた。




目の前に、「それ」はいた。


もう、距離は10メートルもなかった。


霧の中、その異様な姿がはっきりと見えた。


濡れた泥にまみれ、ありえないほど長く伸びた手足。


そして、影になっていたはずの顔。


そこには、無数の小さな穴が、蜂の巣のように開いていた。



「それ」は、俺を認識し、「キィ」と、金属を擦るような音を発した。


夢から覚めた時、俺は病院のベッドにいた。


居眠り運転のトラックが、俺のアパートに突っ込んだのだという。




俺は奇跡的に助かったが、同棲していた彼女は……。



不幸は、もう、すぐそこまで来ている。



そして、今夜。


医者から処方された、抗うことのできない強い睡眠薬を飲まなければならない時間が来た。


前回の夢を、俺は鮮明に覚えている。


「それ」は、俺の目の前、あと一歩のところまで来ていた。


湿地の泥が跳ねるほどの至近距離。


「それ」が、ゆっくりと、あの長い腕を持ち上げた。


その指先が、俺の額に触れようとした瞬間、夢は終わった。


あと、数センチ。


今夜、俺はまた眠る。 そして、あの湿地に立つだろう。


もう、逃げ場はない。


俺は、「それ」が指先で俺の額に触れる瞬間を、ただ待つしかない。


次に目が覚めた時、俺に「不幸」が起きるのか? それとも、今度こそ、俺自身が、あの湿地から、


「それ」に、連れて行かれるのだろうか?

いつも同じ場所で、同じものに追い掛け回される夢は何度も見たことがあります。


その夢の舞台は、もう建て壊しとなってしまいましたが


戦後に建てられた米兵用の医療施設だったとか


それが払い下げられて、民間の人が住むようになり、そのうちの1人に親戚がおり


子供の時、遊びに行くの嫌でしたね。


帰ってからも、追いかけられる夢は見るし


ただ、取り壊しになってから追い掛け回される夢は見なくなりました。


あれはいったい?

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