非常口
みなさん、明日は休みですか?なんとなく、ストックからもう1話あげちゃいます
ちなみに鳥目の作者はこの場所が嫌いです。
(最悪だ。なんでジャンケンで負けた俺が、先頭なんだよ)
古びた遊園地の片隅。
「呪われた屋敷」と銘打たれた、見るからに安っぽいお化け屋敷。
友人たちに無理やり背中を押され、俺は軋む扉を押し開けた。
中はカビ臭く、スピーカーから流れるわざとらしい「ヒュ~ドロドロ」という音が響いている。
「うわっ!」 最初の角を曲がった途端、真横から白装束のマネキンが飛び出してきた。
わかってる。
わかってるよ、こういうのは。
後ろで友人たちがキャーキャー騒いでいる。
「暗くてなんも見えねえ」 俺は愚痴りながら、壁に手をついて進んだ。
順路を示す矢印も、ぼんやりとしたフットライトもない。
ただ、通路の奥に、ぼんやりと赤い光が灯っているだけだ。
(非常口の誘導灯か……安っぽいな)
その赤い光だけを頼りに、俺は進む。
壁に触れている指先の感覚がおかしい。
ベニヤ板のようなツルツルした感触じゃない。
なんだか、ザラザラしていて、妙に湿っぽい。
「おい、なんかこの壁、変じゃな…」 俺が振り返ろうとした、その時だった。
ドン!!!
真後ろで、重い鉄の扉が閉まるような、けたたましい音が響いた。
友人たちの悲鳴が、壁の向こう側で、一瞬だけくぐもって聞こえた。
「おい! 待てよ! 開けろよ!」
俺は壁(だと思っていた場所)を叩くが、硬い感触しかない。
(はぐれた? いや、仕掛けか? このお化け屋敷、グループを分断するタイプかよ)
仕方がなく、俺は再び一人で、あの赤い光に向かって歩き出した。
スピーカーからのBGMが、いつの間にか止まっている。
聞こえるのは、自分の荒い息遣いと、足音だけ。
「コツ……コツ……」
いや、違う。
俺は立ち止まった。
「コツ……コツ……コツ……」
足音が、止まらない。
俺が止まっているのに、誰かの足音が、俺の後ろ、数メートル先から、ゆっくりと、俺と同じペースでついてきている。
俺は恐怖で走り出した。
後ろの足音も、
「タッタッタッ!」
とペースを上げる!
(作り物だ、役者だ、役者が脅かしに来てるんだ!)
そう自分に言い聞かせるが、本能が警鐘を鳴らしている。
あの足音は、スニーカーや革靴の音じゃない。
「コツコツ」
という、まるで硬い木材か何かを、床に打ち付けているような、乾いた音だ。
赤い光が近づいてきた。
やはり、非常口の誘導灯だ。
その下には、外に続くと思われる扉がある。
(助かった!)
俺は最後の力を振り絞り、その扉のノブに手をかけた。
冷たい。
金属の冷たさじゃない。
まるで、氷を握っているかのような、異常な低温だ。
そして、ノブは回らない。
鍵がかかっている。
「クソッ! クソッ!」
俺が扉をガチャガチャと揺さぶっていると、 後ろで、ピタッ、と足音が止んだ。
静寂。
俺は、息を殺して、ゆっくりと振り返った。
そこには、誰もいなかった。
俺が走ってきた、暗い通路が続いているだけだ。
(……気の、せいか?)
安堵した瞬間、俺は気づいてしまった。
「匂い」がする。
さっきまでのカビ臭さじゃない。
線香の匂いだ。
それも、今まさに、すぐ近くで焚かれているような、濃密な香り。
俺は、
恐る恐る、
真上を見上げた。
そこには、非常口の誘導灯はなかった。
天井からぶら下がっていたのは、
一つの、
大きな、
古い提灯だった。
そして、その提灯の、ぼんやりとした赤い光に照らし出されて、
「それ」は、天井に張り付いていた。
白装束。
ボサボサの長い髪。
そして、両足が、膝から先が、ない。
その代わりに、両足には、血に濡れた、
先端の尖った木の杭が突き刺さっていた。
「それ」は、俺が気づくのを待っていたかのように、
天井から、
ゆっくりと、
俺の顔の真上に、
あの「コツコツ」と音を立てていた、木の杭を、
下ろしてきた。
お化け屋敷で寒いや視線感じたことあります?
あれって本当にいるんです
そして、相性が合うと、そのまま、ついてきます




