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短編連作 ほら~www  作者: あさき夢みがち


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12/28

地元では「13カーブ」と呼ばれている。


深夜、峠を越えるための、緩やかだが陰湿なS字カーブ。そこで何人が死んだのか、誰も正確には知らない。


知っているのは、そこで事故に遭った車は、なぜか必ず「対向車線を大きく逸脱している」ことだけ。


俺は仕事の都合で、その日、どうしても深夜にそのカーブを通らなければならなかった。


「……気持ち悪いな」


カーブに差し掛かる直前、空気が変わった。


さっきまで鳴っていたラジオが、「ザー…」というノイズだけになった。



そして、ひどい悪寒が背筋を走った。


暖房は最大にしている。


なのに、まるで開け放たれた冷凍庫のドアの前にいるように、冷気が肌を刺す。



(気温のせいじゃない)



俺は、サイドミラーに目をやった。


そこに、「それ」はいた。


俺の車の、後部座席の真ん中に、ずぶ濡れの女が、座っていた。




女は、顔をうつむけている。



長い黒髪が、水滴を滴らせながら、シートを濡らしている。



「ヒッ…!」



俺は悲鳴を上げ、ルームミラーに目を移した。


ルームミラーには、誰も映っていない。


空っぽの後部座席が映っているだけだ。


(気のせいだ、疲れてるんだ!)


俺が自分に言い聞かせ、再びサイドミラーを見た、その瞬間。


女は、サイドミラー越しに、ゆっくりと顔を上げた。


その顔の左半分は、アスファルトに擦り付けられたかのように、赤黒く、原型を留めていなかった。


女は、割れた唇で、ニタァ…と笑った。



(やめろ、やめろ!)



俺はアクセルを踏み込んだ。カーブを抜け出したい一心で。


だが、車が、異常に重い。


まるで、定員オーバーのバスのように、車が沈み込んでいる。


アクセルを床まで踏み抜いても、時速20キロ以上出ない。



「……オソイ……」



耳元で、女の声がした。


サイドミラーじゃない。すぐ真横。助手席からだ。



恐る恐る、助手席に目を向ける。


そこには、頭が不自然な方向に折れ曲がった、作業着の男が、いつの間にか座っていた。


男は、折れた首でこちらを見ようと、「ゴキ、ゴキ」と音を立てている。



「うわあああああっ!」



俺はパニックになり、ハンドルを握りしめた。




その時、車外に、おびただしい数の「人影」が現れた。


カーブの外側、ガードレールの向こう側。崖の手前。


そこには、数十人の、濡れた人間が立っていた。


体がねじれた者。手足が欠けた者。


車に轢かれたのか、平べったくなった者。




彼らは皆、無表情で、俺の車を、見ている。




そして、


一斉に、


俺の車に向かって、歩き出した。



「来るな!来るな!」



彼らは、車の窓ガラスを、ベタ、ベタ、と無数の手で叩き始めた。



窓の外側が、泥と、血のようなもので汚れていく。


「……イコウ……」


「……コッチヘ……」


「……イッショニ……イコウ……」



車全体が、彼らに掴まれ、激しく揺さぶられる!


車が、重みで「ギシギシ」と悲鳴を上げている。


彼らは、俺を事故らせたいんじゃない。


俺を、「仲間」として、このカーブに「止めたい」んだ!



「やめろおおおお!」



俺がそう叫んだ時、



後部座席にいたはずの「濡れた女」が、いつの間にか、俺の背中にしがみついていた。


「……ミツケタ……」


冷え切った両腕が、俺の首に回される。



そして、あの潰れた顔が、俺の耳元に寄せられ、


「……サア、オリテ……」



と、囁いた。



次の瞬間、俺の目の前のフロントガラスが、


内側から、


無数の、血まみれの手形で、真っ赤に埋め尽くされた。



もう、前は、何も見えない。

創作

知らない誰かが車に乗っているだけで、普通に怖いw

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