エピローグ
彼女の葬式は特にトラブルもなく始まった。
目の前には喪服と制服を着た参列者が、顔を俯けていた。
何人かの人が奏でる啜り泣く音が、重なることで大きくなる。
そのうちの一人は、他でもないこの僕のものだ。
彼女がこのような死を遂げることを、一体誰が望んだであろうか。
人の望みを叶える役割の神が、誰も望んでいないことを叶えるとは、何とも役立たずで、残酷なのであろう。
彼女の親族が参列者に挨拶をする。
「本日は、ご多忙の中、娘の葬儀にご会葬くださいまして、誠にありがとうございます。」
彼女の親族は溢れ出す涙を懸命に抑えながら、さらに言葉を続ける。
「娘は小さい頃から、よく私の言動を真似しており、まるで娘と息子の両方を授かったようでした。
私にとっての娘は唯一の血が繋がった家族であり、それは娘にとってもそうでした。」
もう涙で前が見えない。
彼女の親族よりも僕が涙を流すことは許されるのであろうか。
悲しみで身も心もいっぱいになっているうちに、いつの間にかスピーチは終わりを迎えていた。
「本日は誠にありがとうございました。」
そして、そのまま葬式は恙無く終了した。
いつもは全く通ることのないこの道を、ゆっくりと歩く。
後ろからクラクションを鳴らして僕を追い越した車を睨む。
彼女と仲良くなってから彼女が死ぬまでの思い出はすべて鮮明に覚えている。
それくらい彼女との記憶は忘れられない。
しかし、それ以上にその期間はあまりにも短すぎたのだ。
「まだ仲良くなって二ヶ月ちょっとしか経ってないよ…」
そうポツリと呟く。
彼女と二年生も同じクラスになれないかと期待していた時が懐かしい。
彼女はもう、この世にいない。