主人公が消えた
「おい、聞いたか?あいつ逃げたらしいぞ。」
「聞いた聞いた!どうするつもりなんだろうね?」
「あいつがいなかったら成り立たないよな、この世界。」
3日前、突然主人公が姿を消した。
モブキャラ達は焦った。
この世界は未完のまま世に出ず終わるのか?
それとも、モブの誰かが主人公になれるのか?
この事実を受け入れて、日々暮らしていくしか無いのか?
そんな焦りなんてつゆ知らず、主人公は戻ってこなかった。
焦っているモブキャラがいる一方で、安堵しているモブキャラもいた。
それは、主人公によってボコボコにされる運命のモブキャラである。
「ひょえー、安心したぜ。」
「このまま戻って来ないことを願っているよ。」
「脚本見たけど、あんなもん絶対痛いもんな。」
物語の中では、幸せになる者もいれば、不幸になるものもいる。
そうやって強弱がないと、見ているお客様達が退屈してしまうからだ。
主人公が消えてからちょうど一年後のことだった。
夜明けと共に、世界は白紙に戻った。
そして新たな物語がスタートした。
もう、モブキャラなんていなかった。
それぞれのキャラクターが主人公としてイキイキと生きていた。
-あとがき-
いやー、それにしても大変でした。
まず物語の世界から現実世界に行くのがほんとに大変でした。
多分、急に僕がいなくなってあっちの世界はこんがらがってたんじゃないかな?
そこからは、作家になって、僕がいた物語のデータを全て消して、一から作り直しましたよ。
ひとりひとりを主人公にするのって、手間でしかなかったですが、なんとか成功しました。
モブキャラって言ってもひとりひとり人生があるじゃないですか。
モブキャラ無しの物語、それが僕にとっての夢の世界なんです。
さて、次は物語にどう戻るかが問題です。
そこはまあ、なんとかなると思っています。
僕、主人公なので。