怠惰
僕のセンスをいっぺん出し切ってみた。
ここまで来てしまった。
なんでだ?僕は一回も規約に反したことはないしバッテリーも故障していないのに。
鉄塊はそうつぶやくとプレスにかかった。
すると七色の気体が出現し、はるか上空へと消えてゆく。
そんな中、鉄くずを目の前にして他の鉄塊は口をそろえて言った。
「ハッハッハッ...だから言ったのだこの鉄くずめ」
しばらく笑いは止まらなかった。
「ハッハッハッ」
「ハッハッハッ」
「ハッハッハッ」
「ハッハッハッ」
..................................................................................................................
数時間がたち、上空から声が響く。
「おーい。そろそろ、ごみ畜生の生贄祭りが始まるぞおー」
鉄塊たちは喜んだ。
「ヤッタヤッタヤッタヤッタ.......」
「ヤッタヤッタヤッタヤッタ.......」
「ヤッタヤッタヤッタヤッタ.......」
「ヤッタヤッタヤッタヤッタ.......」
嗚呼、今日も良い日!
鉄塊たちは木のふもとに集まる。
大きな大きな木だ。
そのてっぺん付近の木の枝に実る一体の、正方形の胎児が待っていた。
「来たね........」
鉄塊どもはそう感じた。
「来たよ」
「来たよ」
「来たよ」
「来たよ」
...........................
一直線に並ぶその数は、もはや地平線までもを埋め尽くすほどだ。皆が同じ言葉を連呼する。ただ、一つの鉄塊だけ、様子は違うようだ。
「待って」
鉄塊たちは皆その一つの鉄塊のほうを向く。
そして皆こう言った。
「ほうら来た」
「ほうら来た」
「ほうら来た」
...................................
胎児が口を開く。
「君はもうおしまいだ」
その目はその時のみ開き、すぐに目はまた閉ざされた。
胎児の手が、気味悪いほど伸びてゆく。
そして、その鉄塊を両手で掴み、先ほどのプレスに『ぽん』と乗せた。
「さあ、行っておいで君たち。祭りが始まるよ」
鉄塊どもは一斉に小さな円状の建物へと走る。
「わーーーうれしい」
「わーーーうれしい」
「わーーーうれしい」
___________________________
数時間がたち胎児はほほ笑んだ。
その姿は正三角形である。
そしてまた大声で呼びかけるのだ。
「おーい。そろそろ、ごみ畜生の生贄祭りが始まるぞおー」
___________________________
「おーい。そろそろ、ごみ畜生の生贄祭りが始まるぞおー」
.........................................................................................................
『ヤッタ』
との声はもうない。そして胎児は球体となっている。
胎児は今日も雲のうえのほうから聞こえてくる音を聞いていたが、今日は様子が違うことに気付いた。
もうそろそろというわけなのだ。
胎児は満面の笑みを浮かべながら、重力に従って大樹と離別した。
これは出産のこと